「ひので」は彩層がダイナミックに活動している様子をとらえ、彩層の活動現象がコロナの加熱に重要な役割を果たしているのではないかと考えられるようになりました。そして、コロナの加熱の謎に迫るためには、彩層の磁場を測定することが不可欠であると考えられるようになりました。 また、「ひので」は、光球の精密磁場測定により、ある特定の磁場構造がきっかけとなってフレアが起こることを見出しました。今後、フレアのきっかけとなる磁場構造をより高い信頼性で検出するためには、彩層の磁場情報が不可欠です。
ここで、磁場の測定方法の話をしたいと思います。磁場があると「ゼーマン効果」によりスペクトル線が分裂および偏光します。スペクトル線の偏光を観測すると、弱い磁場まで測定することができます。「ひので」はゼーマン効果で生じる偏光を利用して光球の磁場を測定しています。
しかし、彩層の磁場は光球よりも弱く、ゼーマン効果で生じる偏光が非常に小さくなります。彩層上部では、ゼーマン効果で生じる偏光のみを用いて磁場を測ることは困難になります。そこで、ゼーマン効果に加えて、「量子論的ハンレ効果」により生じる偏光も利用します。ハンレ効果は近年、理論的・観測的研究が進み、彩層磁場の新しい測定手法として注目を集めています。
※偏光と磁場測定について、以下も参照ください。
現在、飛翔体実験グループでは、ゼーマン効果、ハンレ効果により生じる偏光を利用して、飛翔体により精度良く彩層磁場を測定する技術を開発し、観測を行っています。