仕事掲示板
ミラーコロナグラフ開発プロジェクト
本プロジェクトは、コロナグラフを反射タイプにする事である。
反射タイプのメリットは、集光能力を大幅にアップさせることが容易である事であり
次世代のコロナ分光観測等に威力を発揮すると期待されている。
このプロジェクト自体は、その為の技術に重要な先導的役割をはたす。
そもそも、コロナグラフの開発にはいくつかの技術的課題がある。
主な課題は
屈折タイプにしろ、反射タイプにしろ低散乱な光学系が要求される。
どちらの方式においても、太陽光球本体を高精度に隠す(逃がす)必要がある
これらの要求を満たす為に、反射タイプにおいては、低散乱のミラーの開発が必要
である。
その為には、鏡面の表面粗さが極端に小さいもの(=低散乱)が必要となる。
それには、低散乱用のミラーとしての性能があるかを調べる為の装置=散乱測定装置
が必要になる。
また、ミラーであるから、ミラー上に付着するダスト等をクリーニングする方法も
レンズとは違うので、その方法の確立などいくつかの技術的な問題を抱えている。
そこで、
超研磨(スーパーポリッシング)ガラスの研磨状態の検定
ミラー用の蒸着面の検査
ミラーの洗浄方法とその効果の検査
などを評価測定する為の試験装置が必要となる。
これが散乱測定装置である。
ミラーができても、コロナグラフであるから、高精度かつ高速に太陽を追尾し
かつ太陽光球を正確に逃がす(ミラーだから、主鏡で作られた太陽光球を
そのまま通過させて、周りのコロナイメージだけをディテクタの方向へ反射結像
させる2次鏡(逆オッカルティングミラー)への制御が必要になる
(これが次の開発過程である)。
現在は、散乱を評価する為の装置の開発をおこなってる。
主鏡用散乱測定装置開発状況
1.散乱測定装置の概要
鏡面上の散乱自体がなぜおこるかは単純である。入射させた光は反射面の形状が
フラットでない為に、鏡面の(散乱体でないから)180度前方向に対して主に
反射角の正常な反射光とある分布強度を持ってた光(散乱光)
が発生することになる。
従って、照射させる光源からの光をある角度で入射させ、
その反射光と散乱光の強度を
計測すればいい訳で、原理は単純そのものである。
ただし、散乱自体は簡単でも、その分布強度を正確に計測すること自体は
極端に難しくなる。
なぜなら、散乱強度自体が小さい対象(低散乱ミラー)を計測するという事を
メインテーマとしていることであり、かつその散乱させる入射光自体がもつ
ノイズと、センサのノイズなどのシステム全体のノイズを切り分ける事自体の問題
があるからである。
また、鏡面の散乱測定は、まさに鏡面自体を問題にするから、比較的簡単な問題であるが
鏡面になる前の状況を評価しようとする時がさらに問題となるわけである。
ガラス自体の反射率が低くかつ、ガラスの反射面は、照射する入射光がガラスの内部と
照射面の裏面の2次反射の2系統のノイズを加えてしまう事にある。
この場合、表面の微弱な散乱光と、2次反射によって反射させられた光との区別は事実上
不可能なわけで、その切り分けにおいてもなんらかの工夫が必要となってくる。
2.散乱測定装置の実験内容
実験装置の配置
画面上の左下隅にレーザーをおいて、右上に試料(ミラー等)をおき
真中にセンサーをおき、センサーを乗せたレールを回転させることで
反射光(参照光)と散乱光の分布強度を計測していくわけである。
反対から見た写真はここをクリック。
尚、試験装置は、レーザー、試験装置機械部、ターンテーブル制御装置、
センサー・センサー増幅部、センサー用電源、
16BITA/D変換ボード、
Dos/Vパソコンで構成されている。
- 基礎実験の内容
- センサーの特性評価
今回使用したセンサは、浜松ホトニクス(株)のアバランシェフォトダイオードとその
評価基板を使用した。理由は、アバランシェ効果で自己増幅して、感度を上げること
で、微弱光を捕らえる為である。
尚、センサの仕様はここをクリック。
- レーザーの特性
現在あるレーザー(NEC、メレスグリオのHe−Neレーザーと、半導体レーザー
(秋葉原400円のものを改造))を使って、
1時間から9時間の連続測定をおこなった。
いずれも、5秒間隔でデータを取った。尚、He-Neレーザーの場合は
正反射から2度離れた場所(散乱光)のデータであり、半導体レーザーの場合は
出力が弱いので、直接レーザーの反射光を使用した。
尚、データは1回の記録に対して10000回の積算平均値によってノイズの平滑化を
実行してある。
NEC製He-Neレーザー
測定平均値(全平均) 13344.82
平均偏差(絶対偏差の平均) 376.35
最大偏差(データの最大と最小の差) 2975
S/N(%)2.82
メレスグリオ製He-Neレーザー
測定平均値(全平均) 4300.2
平均偏差(絶対偏差の平均) 24.49
最大偏差(データの最大と最小の差) 546
S/N(%)0.57
半導体レーザー
測定1時間(理由は、発火するかもしれないから・・・)
測定平均値(全平均) 1536.94
平均偏差(絶対偏差の平均) 18.28
最大偏差(データの最大と最小の差) 373
S/N(%)1.19
半導体に関しては、温度制御等と電源制御がないので、温度(半導体自体の
自己発熱)による、レーザー発振の変化による出力の低下があったものと考えられる
が、NECに比べればはるかに変動が小さい事がわかる。
この結果から半導体の15mW出力タイプを導入すれば、照射光源として
光量を上げることが可能であると判断している。
半導体レーザー LMA-H50-635-15
測定平均値(全平均) 192.5(今回の方が離角が大きい)
平均偏差(絶対偏差の平均) 8.81
最大偏差(データの最大と最小の差) 49
S/N(%)0.046
エフエムレーザテック(株)製の出力安定性データ。
最大出力が15mWが定格
今回は、直接センサーへ入射して(NDで減光する)NECのHe−Neレーザ
の出力値との比較を試みた。測定距離は約1100mm。
結果は、176.9倍(LMA-H50-635-15/NECのHe−Ne)になった。
出力比が大きい理由はわからないが、データ取得の為のレーザとして
使えるものと判断する。
- センサの安定性
ダークレベルの変動
測定平均値(全平均) 176.91
平均偏差(絶対偏差の平均) 1.73
最大偏差(データの最大と最小の差) 317
S/N(%)0.98
センサーの出力は、負方向に出る(数値が低い方が受光光量が高い)が
ダークレベルは、32768(=0V スケールは±10V/16BIT)
であるから177*0.31mv=54mv程度でおおむね妥当と考える。
いずれの場合でも、スパイク状のノイズが入っている事がわかるが
このノイズの原因が、測定場所の電源ノイズ(または、変動)なのか
このセンサーなのかの切り分けは、別途行う予定。
ただし、平均偏差からして、このシステムで使用する限りにおいては
十分だと考えている。
現在はここまで!