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国立天文台 太陽観測科学プロジェクト

2023年12月の太陽活動 バックナンバー

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 黒点相対数の変動。緑線・青線・赤線はそれぞれ2018年1月以降の太陽全体・北半球・南半球の13カ月移動平均の黒点相対数で、最近半年分は同じ色の点で示しています。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。

 現在の第25周期の黒点数を以前の値と比べられるよう、極小(2019年12月、縦の点線)をそろえて過去の各周期の相対数(太陽全体)もプロットしました。灰色の実線が第24周期、点線がそれ以前の周期を表します。

 第25周期の活動度については、最近100年で最低となった第24周期よりさらに低くなるというものも含め、様々に予想されてきましたが、グラフを見ると、第24周期と同等もしくはそれを上回る活動になっていることがうかがえます。
→ 2023年の黒点相対数

12月の太陽:黒点望遠鏡 連続光・G-Band・CaK Hα線 赤外線偏光

12月は天候に恵まれ、黒点観測を28日間実施できました。黒点相対数の月平均値は103.79(北半球54.20、南半球49.50)となり、 先月の97.10より若干上昇していますが、今年6月の129.33と比べると少ない値です。
ムービー1は12月1日から31日までフレア望遠鏡で撮影した白色光画像をつなぎ合わせたもので、赤い四角は黒点群を示しています。単一の巨大な黒点はなく、微小黒点が集まったものが多く見られました。活動領域はNOAA13509~13536の27群が新たに出現しました。※NOAA:National Oceanic and Atmospheric Administration (米国海洋大気局。この機関によって太陽活動領域に番号がふられる。)
細かな増減はあるものの、活発な領域は増加および長寿命傾向にあります。

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ムービー1.12月1日から31日までの白色光画像(数字はその日の黒点群に西から自動的に割り当てられます)

Mクラス以上のフレアが25回発生しました。最も大きなものは31日21時UT(日本時間7時)に発生したX5.0クラスの大規模フレアでした。東の側面に出現したばかりの活動領域13536で発生したため、高エネルギー物質が地球に向かってくることはありませんでしたが、NASAのSDO衛星やSOHO衛星の観測画像からは、強烈な発光現象とコロナ質量放出が生じたことが分かります。X3以上で考えると2017年9月以来、約6年半ぶりとなります。

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ムービー2. 東縁で発生したX5.0フレアの様子(極端紫外線、波長131Å)
21時55分UTに強烈な閃光が確認される。SDO衛星/NASAに搭載されたAIA装置で撮影。

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ムービー2.X5.0フレアによるコロナ質量放出
フレアの発生により超高速のプラズマが放出されている。太陽観測衛星SOHO/NASAのLASCO(広角分光コロナグラフ)C3で撮影。

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2023年10月の太陽活動 バックナンバー

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 黒点相対数の変動。緑線・青線・赤線はそれぞれ2018年1月以降の太陽全体・北半球・南半球の13カ月移動平均の黒点相対数で、最近半年分は同じ色の点で示しています。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。

 現在の第25周期の黒点数を以前の値と比べられるよう、極小(2019年12月、縦の点線)をそろえて過去の各周期の相対数(太陽全体)もプロットしました。灰色の実線が第24周期、点線がそれ以前の周期を表します。

 第25周期の活動度については、最近100年で最低となった第24周期よりさらに低くなるというものも含め、様々に予想されてきましたが、グラフを見ると、第24周期と同等もしくはそれを上回る活動になっていることがうかがえます。
→ 2023年の黒点相対数

10月の太陽:黒点望遠鏡 連続光・G-Band・CaK Hα線 赤外線偏光

10月は秋晴れで観測条件の良い日が多く、観測実施日は25日ありました。 月の後半は黒点数が少なく、太陽活動は静穏でした。黒点相対数は月平均79.60と今年で最も低い値となっています。 太陽正面が穏やかだった一方で、側面や極付近ではプロミネンス噴出やコロナ質量放出(CME)が良く見られ。リムのすぐ向こう側で発生してリム上に現れたフレアもたびたび観測されています。

図1は10月7日に太陽フレア望遠鏡で撮影したHα線全面像です。
aは表面の黒点やプラージュ、フィラメントが見やすくなっており、プロミネンスの濃淡も分かります。bはaよりも露光時間を長くすることで外側のプロミネンスの位置や形を見やすくしたものです。北極付近にひときわ大きなプロミネンスが見えています。このプロミネンスは日本時間10月4日に見え始め、8日には不安定となって噴出しています。

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図1a,b.太陽Hα線全面像
10月7日に太陽フレア望遠鏡で撮影。
a)表面の黒点やプラージュ、フィラメントが見やすくなっており、プロミネンスの濃淡も分かります。
b)はaよりも露光時間を長くすることで外側のプロミネンスの位置や形を見やすくしたものです。

ムービー1はNASAのSDO衛星が撮影した8-9日の太陽彩層(ヘリウム、波長:304Å)の様子です。時計は世界時(日本時間マイナス9時間)を示しています。 14時頃からアーチが膨らみ始め、18時過ぎには勢いよく外側へ噴出している様子が見て取れます。(AIA装置による画像は、NASA/SDO及びAIA科学チームの厚意により掲載しています。)


ムービー1.プロミネンス噴出の様子
NASAのSDO衛星により撮影。8日から9日にかけての太陽彩層の様子を動画にしたもの。全面でプロミネンスが時折噴出している。

ムービー2は同日、NASAのSOHO衛星に搭載されたコロナグラフLASCO C3で撮影された太陽周辺の様子です。コロナグラフとは、明るすぎる太陽の光を遮ることで周囲の弱い光をとらえることができる観測装置です。プロミネンスの噴出が起きてからしばらくして、宇宙空間へガスが勢いよく飛び出している様子が分かります。この時の速度は数百km/秒にもなり、広範囲に広がっていきます。

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ムービー2.コロナ質量放出の様子
SOHO衛星に搭載されたコロナグラフLASCO C3により撮影。中央の丸が太陽を示しています。北極から勢いよくガスが宇宙空間に放出しています。

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2023年9月の太陽活動 バックナンバー

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 黒点相対数の変動。緑線・青線・赤線はそれぞれ2018年1月以降の太陽全体・北半球・南半球の13カ月移動平均の黒点相対数で、最近半年分は同じ色の点で示しています。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。

 現在の第25周期の黒点数を以前の値と比べられるよう、極小(2019年12月、縦の点線)をそろえて過去の各周期の相対数(太陽全体)もプロットしました。灰色の実線が第24周期、点線がそれ以前の周期を表します。

 第25周期の活動度については、最近100年で最低となった第24周期よりさらに低くなるというものも含め、様々に予想されてきましたが、グラフを見ると、第24周期と同等もしくはそれを上回る活動になっていることがうかがえます。
→ 2023年の黒点相対数

9月の太陽:黒点望遠鏡 連続光・G-Band・CaK Hα線 赤外線偏光

1か月を通して太陽活動は活発でした。最大M8.7クラスの中規模フレアを含む、32回のフレアを観測しています。大きく目立つ黒点が少ない一方、小さな黒点が密集した黒点群が多く見られたのが特徴です。 その影響もあり黒点相対数の月平均は120.83、最も黒点の多かった9月24日は196.00を記録し、今年最高値となっています。

図1は9月24日に太陽フレア望遠鏡が撮影した太陽全面像です。連続光、G-Band,CaK線の観測からも全面に活動領域が点在していることが分かり、中でも丸で囲った活動領域NOAA13442,13445は、28個もの微小な黒点が見えています。
複雑な磁場構造をしており、13445ではCクラスのフレアが複数回、世界時間3時38分にはM4.4フレアが発生しています。ムービー1は太陽フレア望遠鏡がHα線でとらえたフレアの様子です。一瞬の閃光ではなく、活動領域全体がじんわりと増光している様子が分かります。またその手前(上空)でフィラメントが噴出しており、暗い影が揺らめいています。

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図1a,b,c.太陽フレア望遠鏡で撮影した9月24日の太陽全面像。a)連続光、b)G-Band、c)CaK線の太陽


ムービー1.9月24日に活動領域13445で発生したM4.4フレア。 プラージュ全体がじんわりと明るくなり、その手前(上空)でフィラメントが揺らめていている様子が分かる。

この黒点群は20日に東リムから正面に回り込んできた時点で、すでに小さな黒点が散らばっており、、24日にかけて急速に発達、黒点の数が増加していったことが、NASAのSDO衛星に搭載されたHMI装置による光球の観測からも分かります。ムービー2に20日から24日までの動画を示します。(HMI装置による画像は、NASA/SDO及びHMI科学チームの厚意により掲載しています。)


ムービー2.急速に発達する活動領域NOAA13442
SDO衛星に搭載されたHMI装置によって観測された光球の様子。21日から24日にかけて、黒点の密度が高くなっていくことがわかる。

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2023年8月の太陽活動 バックナンバー

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黒点相対数の変動。緑線・青線・赤線はそれぞれ2018年1月以降の太陽全体・北半球・南半球の13カ月移動平均の黒点相対数で、最近半年分は同じ色の点で示しています。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。

現在の第25周期の黒点数を以前の値と比べられるよう、極小(2019年12月、縦の点線)をそろえて過去の各周期の相対数(太陽全体)もプロットしました。灰色の実線が第24周期、点線がそれ以前の周期を表します。

第25周期の活動度については、最近100年で最低となった第24周期よりさらに低くなるというものも含め、様々に予想されてきましたが、グラフを見ると、第24周期と同等もしくはそれを上回る活動になっていることがうかがえます。
→ 2023年の黒点相対数

8月の太陽:黒点望遠鏡 連続光・G-Band・CaK Hα線 赤外線偏光

8月は先月と比べ、雲の出ている時間が増え、ゲリラ豪雨に見舞われる日も多くありました。そのなかでも29日観測することができました。 8月の黒点相対数の平均値は104.24でした。上旬から中旬にかけては黒点の多い状況が続いていましたが、下旬は少なくなり、7月と比べると若干減少しています。また北半球に比べて南半球が少ないのも特徴です。 今回は8月4日4時UT頃にとらえた、興味深いダークフィラメントの不安定化を紹介します。

ダークフィラメント(以下、フィラメント)は高温(約100万度)のコロナ大気中に持ち上げられた低温(約5千~1万度)のプラズマガスで、磁力線によって支えられています。 磁場の強度や分布によってフィラメントの形状も変わりますが、多くの場合は数日から数週間程度、安定した形状を保つことが知られています。 NASAのSDO衛星に搭載されたAIA装置による紫外線観測( ムービー1)では、フィラメントの北端に位置するNOAA13386の発光に伴い、フィラメントが切れて乱れていく様子が分かります。(AIA装置による画像は、NASA/SDO及びAIA科学チームの厚意により掲載しています。)
ムービー2は太陽フレア望遠鏡で撮影したHα線画像で、こちらでもフィラメントの形状が乱れたのちに、元に戻る様子がわかります(雲に隠れて一瞬映像が乱れます)。 これに加えて、太陽フレア望遠鏡ではHα線のドップラー速度をとらえる観測も行っています。図1にフィラメント噴出のHα線強度図とドップラー速度図を示しました。赤色が手前から奥に遠ざかる(赤方偏移)成分、青色が奥から手前へ近づく(青方偏移)成分です。Hα線強度図では不規則に乱れているようにしか見えませんが、速度図を見てみると赤い成分と青い成分がねじれている様にみえています。このようにドップラー速度を観測することで、ガスの上昇や下降まで3次元的にとらえることができます。


ムービー1.2023年8月4日のフィラメント不安定化
NASAのSDO衛星に搭載されたAIA装置による紫外線観測。複雑に絡み合うガスの細かい運動まで見ることができる。


ムービー2.2023年8月4日のフィラメント不安定化
太陽フレア望遠鏡にて撮影したHα線強度図。4時ごろから編み込まれたロープがほどけていくように形が変わり、5時ごろには消えかける。そこから回復し始め、8時過ぎにはほぼ元通りの形になっている。

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図1.Hα線強度図とドップラー速度図の比較
Hα線中心での画像(下)と、同じくHα線でのドップラー速度を表す画像(上)。赤と青は、赤方偏移・青方偏移に対応しています。

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2023年7月の太陽活動 バックナンバー

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 黒点相対数の変動。緑線・青線・赤線はそれぞれ2018年1月以降の太陽全体・北半球・南半球の13カ月移動平均の黒点相対数で、最近半年分は同じ色の点で示しています。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。

 現在の第25周期の黒点数を以前の値と比べられるよう、極小(2019年12月、縦の点線)をそろえて過去の各周期の相対数(太陽全体)もプロットしました。灰色の実線が第24周期、点線がそれ以前の周期を表します。

 第25周期の活動度については、最近100年で最低となった第24周期よりさらに低くなるというものも含め、様々に予想されてきましたが、グラフを見ると、第24周期と同等もしくはそれを上回る活動になっていることがうかがえます。
→ 2023年の黒点相対数

7月の太陽:黒点望遠鏡 連続光・G-Band・CaK Hα線 赤外線偏光

7月は例年以上の猛暑に苦しめられつつも、観測条件としては安定した快晴の日が多く。26日の観測ができました。 黒点相対数は129.33(北65.54、南64.79)と先月をわずかに上回り、Mクラス以上の太陽フレアの発生回数も54回と増加傾向にあります。 フレアは、太陽活動が活発になるにつれて回数も規模も増大していきます。2019年から始まった現在の第25周期も、2025年ごろが極大期になると予想されており、日に日に活発になっていく様子が、三鷹フレア望遠鏡の観測からも分かります。

7月2日22:54UT(3日7:54JST)、活動領域NOAA13354で、X1.1クラスの大規模フレアが発生しました。 ムービー1はフレアの瞬間を極端紫外線でとらえたもので、活動領域上空に浮かぶ磁力線が非常に明るく光っている様子が見られます。図1はフレア望遠鏡で撮影したHα線画像です。 この活動領域は、黒点群発生からフレア発生まで急速に発達したことも注目すべき点です。図2は6月26日~7月2日の間に、フレア望遠鏡で観測ができた連続光画像を並べたものです。26日に微小な黒点が現れ、27日に活動領域としてナンバリング、28日にはすでに東西の広がりが地球約11個分になりました。7月2日までにCクラスのフレアも9回発生しています。 黒点は光球に現れた磁力線の断面であり、磁場の大きさや複雑さを示しているため、黒点の形状変化やその経緯を調べることは、フレアの発生時期や規模を予測するための重要な指標となっています。

発達した黒点群の形状を分類する方法にマウント・ウィルソン(Mount Wilson)分類というものがあります。
  • α(アルファ):単極黒点群
  • β(ベータ):正と負の両方の磁気極性を持つ黒点群(双極性)で、極性間の境界が明確になっている
  • γ(ガンマ):βに分類しづらい、複雑な磁場分布をしている
  • β-γ:全体的に双極磁場をしているが、両極の境界線が複雑
  • δ(デルタ):1つの半暗部に異なる極性の磁極が共存している
  • β-δ:全体として双極だが、一方または双方の磁極にδ型の特徴がある
  • β-γ-δ:δ黒点を含む、非常に複雑で密集した黒点群
  • γ-δ:明確に双極とは言えない。γ型とδ型の特徴を持つ
この分類に照らし合わせ、NOAA13354黒点群がどのような形状をしているのか、ムービー2に7月2日の連続光と赤外線による磁場分布の観測の結果を示します。 黒点群は全体的には双極であるものの、境界線は不明瞭で(β-γ)、先行黒点群は半暗部に異なる極が共存している(δ)ことから、βγδ型に分類されます。Sammis et al., 2000によると、Xクラスの大規模フレアはβγδ型で起こりやすいことが分かっています。 大規模フレアではコロナ質量放出や強力な太陽風を伴い、地球上にも大きな影響を及ぼすことが危惧されており、今回のような複雑かつコンパクトにまとまった黒点群はフレア発生の可能性が高いとして、フレア予測では特に注視されています。


ムービー1.2日22:54UTに発生したX1.1フレア
NASAの太陽観測衛星SDOのAIA装置により撮影 波長:13.1nm(コロナ)[Courtesy of NASA/SDO and the AIA Science Team]

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図1.2日23:38UTに、フレア望遠鏡で撮影したHα線画像
フレア発生から1時間後、X線強度がピークになった23:14UT直後の様子。強烈に白く光っていることが分かる。

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図2.NOAA13354の黒点群の発達
6月26日から7月2日の間にフレア望遠鏡で撮影した連続光画像。急速に範囲を広げ、複雑な形状に変化していく様子が分かります。


ムービー2.黒点群と磁場分布
連続光で撮影した黒点群に、赤外線偏光で撮影した磁場分布を重ねたもの。白が正極で黒が負極を示している。

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2023年6月の太陽活動 バックナンバー

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黒点相対数の変動。緑線・青線・赤線はそれぞれ2018年1月以降の太陽全体・北半球・南半球の13カ月移動平均の黒点相対数で、最近半年分は同じ色の点で示しています。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。

現在の第25周期の黒点数を以前の値と比べられるよう、極小(2019年12月、縦の点線)をそろえて過去の各周期の相対数(太陽全体)もプロットしました。灰色の実線が第24周期、点線がそれ以前の周期を表します。

三鷹地上観測の結果では、第24周期は2014年2月にピークを迎え、極大値は111.30でした。2023年6月の黒点相対数の月平均は129.23で今年最高を更新し、第24周期を大きく上回るペースで増加傾向にあります。
→ 2023年の黒点相対数

6月の太陽:黒点望遠鏡 連続光・G-Band・CaK Hα線 赤外線偏光

6月は関東が梅雨入りしたことが大きく影響し、観測実施日は18日でした。 Mクラス以上のフレアは26回と先月よりは少ないですが、6月20日16:42UTには活動領域NOAA13341でX1.1フレアが発生し、その前後数日でMクラスフレアが太陽のあちこちで見られました。 今回はプロミネンスやフィラメントの特徴的な動きがあったため、そちらを紹介します。


図1は三鷹フレア望遠鏡が撮影した6月7日のHα線全面像です。まず注目していただきたいのが東の縁(左側)にある大きなプロミネンスです。プロミネンスは、太陽コロナ中に浮かんだ低温のガスの塊で、数日~数週間は形を保つ比較的安定した構造です。太陽の正面にある場合は、太陽面と比べて暗く、黒い筋状に見えるため、ダークフィラメントと呼ばれます。北半球の極付近を見ると、東西方向に横たわる太いフィラメントが見てとれます。これは、ポーラー・クラウン・フィラメントと呼ばれています(図1 Polar Crown Filament)。

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図1.2023年6月7日の太陽全面のHα線画像
東の縁(左側)に大きなプロミネンスが見られる。正面の明るい領域がプラージュ、暗い筋状構造はダーク・フィラメント。

フィラメントは太陽表面の磁場分布の正極と負極の境目の上空に発達するという特徴があります。黒点を伴うような活動領域は東西に極性を持つため、活動領域付近のダークフィラメントは南北方向の成分を持ち、複雑な磁場の影響で蛇行しやすくなります(図1 Quiescent Filament)。一方で、極付近に見られるポーラー・クラウン・フィラメントは東西方向に横たわるように発達するのが特徴です。太陽表面には、赤道から極方向へのゆっくりとした流れがあり、活動領域の磁極は極方向に移動していくことが分かっています。ポーラー・クラウン・フィラメントは、集まってきた活動領域の磁極と、極の磁極の境目に発達すると考えられています。
下線部参照→東西に極性を持つ

図2は、同時刻の図1とほぼ同時刻の赤外線偏光(磁場分布)画像で、矢印は図1と対応しています。白と黒で表現された磁極の境目にフィラメントが発達していることがわかります。南半球にも、磁場分布はわかりにくいですが、列を成すようにポーラー・クラウン・フィラメントが見えています。

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図2.2023年6月7日の赤外線偏光(磁場分布)画像
白が正極、黒が負極を示しています。矢印は図1と対応していて、それ以外のフィラメントも磁極の境目に発達していることがわかる。


ムービー1.ポーラー・クラウン・フィラメントの噴出
NASAの太陽観測衛星SDOのAIA装置により撮影。9日~12日にかけてポーラー・クラウン・フィラメントが自転によって西側へ移動していく様子と、12日未明にアーチを描きながら噴出した様子。

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2023年5月の太陽活動 バックナンバー

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 黒点相対数の変動。緑線・青線・赤線はそれぞれ2018年1月以降の太陽全体・北半球・南半球の13カ月移動平均の黒点相対数で、最近半年分は同じ色の点で示しています。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。

 現在の第25周期の黒点数を以前の値と比べられるよう、極小(2019年12月、縦の点線)をそろえて過去の各周期の相対数(太陽全体)もプロットしました。灰色の実線が第24周期、点線がそれ以前の周期を表します。

 第25周期の活動度については、最近100年で最低となった第24周期よりさらに低くなるというものも含め、様々に予想されてきましたが、グラフを見ると、第24周期と同等もしくはそれを上回る活動になっていることがうかがえます。
→ 2023年の黒点相対数

5月の太陽:黒点望遠鏡 連続光・G-Band・CaK Hα線 赤外線偏光

2023年5月の太陽活動は先月に増して活発で、観測されたMクラス以上のフレアは55回(前月比+35)でした。
16日16:43UT(日本時間17日7:43)、東側面に位置する活動領域NOAA13310において5月最大となるM9.6フレアが発生しました。NASAの太陽観測衛星SDOのAIA装置によって撮影されたフレアの瞬間をムービー1に示します。 18日に北半球東側に出現したNOAA13311も非常に活発な状態が続き、26日にかけてM8.9を含めたMクラスフレアを26回観測しています。


ムービー1.16日16:43UTに発生したM9.6フレア
NASAの太陽観測衛星SDOのAIA装置により撮影。
左:波長13.1nm(コロナ)。右:波長30.4nm(彩層上部)[Courtesy of NASA/SDO and the AIA Science Team]

図1に、24日のHα線、連続光(黒点)、赤外線偏光(磁場分布)全面像を示しました。フレアを起こした2つの活動領域には、黒点とプラージュ(明るい領域)が見えており、磁場が発達していることがわかります。赤外線偏光(磁場分布)は白がN極、黒がS極を表しています。磁場を見ると一定のパターンがあることに気づきます。
一般的に黒点は、ほぼ東西に並んで対になって現れます。実際には西側の黒点(先行黒点)と東側の黒点(後行黒点)は赤道方向に傾きをもって並ぶことが知られており、これを『ジョイの法則』といいます。先行・後行黒点の磁極はNS互いに対になっています。さらに詳しく観察すると、北半球は白(S極)ー黒(N極)、南半球は黒(N極)ー白(S極)になっていることがわかります。黒点の磁極にはおもしろい法則性があり、以下の3つを総称して『ヘール・ニコルソンの法則』と呼んでいます(図2)。
  • 1.太陽活動のひと周期(約11年)の間に現れる先行黒点の磁極はNSのどちらかである。
  • 2.北半球でN極の場合、南半球ではS極である。
  • 3.次の活動周期では、NSの関係が逆転する。
しかし、5月8日に北半球に出現したNOAA13296の磁場は先行黒点がS極を示すという逆転現象が見られました(ムービー2)。統計上3~9%の割合で逆配置になると考えられていますが、その詳細なメカニズムは解明されていません。こういった複雑な磁場構造を理解することが、太陽磁場の研究の次世代の課題でもあります。

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図1.24日の太陽全面像
(左)Hα線(中央)連続光(右)赤外線偏光(磁場分布)。赤外線偏光画像では磁場の正極 (N極) を白、負極 (S極) を黒で表示している。

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図2. 太陽黒点の極性の変化(ヘール・ニコルソンの法則)
右側(西側)が先行、左側(東側)が後行で、南北で逆位置になる。また約11年のサイクルごとに、南北で逆になる


ムービー2.逆転磁場を持つNOAA13296
連続光と赤外線偏光の重ね合わせ。NOAA13296の磁場分布が北半球のほかのものと逆転していることがわかる。

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2023年4月の太陽活動 バックナンバー

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 黒点相対数の変動。緑線・青線・赤線はそれぞれ2018年1月以降の太陽全体・北半球・南半球の13カ月移動平均の黒点相対数で、最近半年分は同じ色の点で示しています。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。

 現在の第25周期の黒点数を以前の値と比べられるよう、極小(2019年12月、縦の点線)をそろえて過去の各周期の相対数(太陽全体)もプロットしました。灰色の実線が第24周期、点線がそれ以前の周期を表します。

 第25周期の活動度については、最近100年で最低となった第24周期よりさらに低くなるというものも含め、様々に予想されてきましたが、グラフを見ると、第24周期と同等もしくはそれを上回る活動になっていることがうかがえます。
→ 2023年の黒点相対数

4月の太陽:黒点望遠鏡 連続光・G-Band・CaK Hα線 赤外線偏光

 2023年4月も比較的活発な太陽活動が続きました。特に注目されるのは、現太陽活動周期で最大となる磁気嵐を引き起こしたコロナ質量放出が発生したことです。コロナ質量放出は日本の夜に起こりましたので私たちの観測はありませんが、噴出を起こした活動領域を紹介します。

 この領域はNOAA13283で、4月15日ごろ東リムから見え始め、4月26日ごろに西に沈んでいきました。図1に、太陽フレア望遠鏡でとらえたこの領域の様子を示しています。この領域に属する黒点は、上の白色光像に矢印で示したものだけで、まわりの黒点は別の領域のものですから、小さい黒点だけを持つ小規模群のように見えます。しかし、下のHα線像では、大きなフィラメントを従えているのが分かります。

 図1でもフィラメント周辺が光っているのが見えているように、このフィラメントは活発な活動を示していました。図2 (ムービー)は、4月20日のこのフィラメントの様子です。上にHα画像、下に同じHαでの視線速度場図を示しています。速度場図では、赤と青で向こうへ去っていく動き(赤方偏移)とこちらへ向かってくる動き(青方偏移)を示しています。Hα画像でも速度場図でも、フィラメントでは1日中ずっとプラズマの流れが見えており、ムービーに見える他のフィラメントと異なり顕著なプラズマの運動があることが分かります。なお、この4月20日には、オーストラリアやインドネシアで見られる金環皆既日食が起こり、日本の一部での部分食が見られましたが、三鷹は範囲外でした。

 この4月20日には大きな噴出は無かったのですが、その後4月21日18:12UTにM1.7フレアが起こり、このときに、このフィラメントの一部の噴出を含むコロナ質量放出が発生しました。放出されたコロナプラズマは4月23日には地球に到達し、地球磁気圏のやや大きな変動を引き起こしました。地磁気の変化は、Dst指数(地磁気変化量を示す指数のひとつ)で-187nT(ナノテスラ)に達し、現太陽活動周期で最大を記録しました。

 フレアはM1.7と特に大きなものではなかったのに磁気嵐としては規模が大きくなったのは、フレアが太陽の中央やや西という、放出されたプラズマがちょうど地球へ向かって来やすい位置で起こったことなどの他、フィラメント周辺の磁場構造にも原因があります。図3に、4月21日のフィラメントとその周辺の磁場の様子、SDO衛星AIA装置でとらえられた紫外線でのフレアループの様子を示しています。緑の四角がフレアの中心部分です。Hα+磁場の図では、白と黒がそれぞれ太陽表面上のN極・S極の分布を示しており、両極の間に細いHαフィラメントが見えています。右の模式図に示したようなN極からS極へ向かう磁力線に沿うループが紫外線像で見えています。右図のように地球の北の方向はやや傾いているため、おおむね地球の南方向を向いている磁力線がフレアにより惑星間空間へ放出されたと考えられます。

 地球の磁場は、南極から北極へ向かう北向きであるため、地球に向かって飛んできたコロナプラズマが南向きの磁場を持っていると、容易に磁気再結合を起こして地磁気の乱れを発生することになります。今回の磁気嵐はまさにこのような条件で発生しました。太陽表面のフィラメントや磁場の観測は、磁気嵐という地球での現象がどのように起こるか、の情報ともなるものなのです。
(AIA装置による画像は、NASA/SDO及びAIA科学チームの厚意により掲載しています。)


図1. 太陽フレア望遠鏡で撮影した、NOAA13283の白色光像及びHα線像。NOAA13283に属する黒点は矢印で示したものだけで、ごく小さい黒点群のようですが、Hα線像では発達したフィラメントが見えています。


図2 (ムービー). 太陽フレア望遠鏡で2023年4月20日に撮影した、NOAA13283のHα線中心(上)と、同じくHα線でのドップラー速度(下)のムービー。赤と青は、赤方偏移・青方偏移に対応しています。


図3. 2023年4月21日の、フレア前のHα線中心での画像に磁場分布(白と黒がN極とS極に対応)を加えた図(左)と、SDO衛星AIA装置による紫外線でのM1.7フレアの画像(中)。緑の四角はフレアの中心で、この部分は模式的には右の図のような磁場構造をしていると考えられます。

国立天文台 太陽観測科学プロジェクト

2023年3月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動。緑線・青線・赤線はそれぞれ2018年1月以降の太陽全体・北半球・南半球の13カ月移動平均の黒点相対数で、最近半年分は同じ色の点で示しています。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。

 現在の第25周期の黒点数を以前の値と比べられるよう、極小(2019年12月、縦の点線)をそろえて過去の各周期の相対数(太陽全体)もプロットしました。灰色の実線が第24周期、点線がそれ以前の周期を表します。

 第25周期の活動度については、最近100年で最低となった第24周期よりさらに低くなるというものも含め、様々に予想されてきましたが、グラフを見ると、第24周期と同等もしくはそれを上回る活動になっていることがうかがえます。
→ 2023年の黒点相対数

3月の太陽:黒点望遠鏡 連続光・G-Band・CaK Hα線 赤外線偏光

 2023年3月も活発な太陽活動が続き、2月に続いてXクラスフレアが発生しました。ひとつは2月に既に現れていたNOAA13234で3月4日に発生したX2.1フレアです。この領域はフレアの後すぐに西の縁に沈んでしまったのですが、その後も衰えなかったようで、3月13日にはおそらくこの領域起源と思われる大規模コロナ質量放出が、太陽の向こう側で発生したことが確認されています。その後この領域は、3月19日に東の縁から現れたNOAA13260として、黒点は小さくなってはいましたが、回帰しました。もうひとつは3月29日にNOAA13256にて発生したX1.2フレアで、こちらは太陽フレア望遠鏡でとらえることができました。図1に、NOAA13234の、2月に大きな黒点を有した姿、3月4日のXクラスフレア直前の姿とともに、3月20日のNOAA13260の画像を示しました。図1で同じ3月20日に南半球で大きな黒点を見せているのがNOAA13256で、西のリム近くに移動した3月29日に発生したX1.2フレアのHα線像も載せています。

3月には興味深いプロミネンス噴出の様子がとらえられましたので、紹介します。図2 (ムービー)は、3月12日に東のリムで起きたフィラメント噴出を、雲が多い中、太陽フレア望遠鏡がHα線でとらえたものです。太陽フレア望遠鏡ではHαのドップラー速度をとらえる観測も行っています。図3に、プロミネンス噴出のHα像とドップラー速度画像を示しました。図を見ると、噴出の間ずっと、もともとプロミネンスの下側(太陽面に近い側)だったほうが私たちから遠ざかっていき(赤方偏移)、上側がこちらに近づいている(青方偏移)ことがわかります。プロミネンスはもともとらせん状の磁場に支えられていると考えられるのですが、図4に示すように、プロミネンスの片方の端が地面から離れて上昇し始めると、らせんがほどける方向に磁力線が回転します。これにつれてプロミネンスの物質も回転しますので、図3のような赤方偏移・青方偏移が隣り合った姿は、プロミネンスが回転しながら噴出している様子を示しているわけです。

プロミネンス噴出は、NASAのSDO衛星のAIA装置による紫外線観測でも見事にとらえられていますが、これだけだとプロミネンス物質が近づいているのか遠ざかっているのか知るのは困難です。地上のHα観測は、プロミネンス噴出での3次元的な運動をとらえる重要な手段になっています。


図1. 太陽フレア望遠鏡で撮影した、2月に大きな黒点を有したNOAA13234、3月4日のXクラスフレア直前のNOAA13234、NOAA13234の回帰と思われる3月20日のNOAA13260の画像、および南半球のNOAA13256の、3月20日の白色光像と3月29日のX1.2フレアのHα線像を、1枚に合成したもの。


図2 (ムービー). 太陽フレア望遠鏡で撮影した、2023年3月12日に北東の縁で発生したプロミネンス噴出のHα線ムービー。


図3. 2023年3月12日のプロミネンス噴出の、Hα線中心での画像(上)と、同じくHα線でのドップラー速度を表す画像(下)。赤と青は、赤方偏移・青方偏移に対応しています。


図4. プロミネンス噴出における、磁力線とその運動の模式図。片方の端がちぎれて上昇するとき、らせん状の磁力線がほどける方向に回転します。

国立天文台 太陽観測科学プロジェクト

2023年2月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動。緑線・青線・赤線はそれぞれ2018年1月以降の太陽全体・北半球・南半球の13カ月移動平均の黒点相対数で、最近半年分は同じ色の点で示しています。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。

 現在の第25周期の黒点数を以前の値と比べられるよう、極小(2019年12月、縦の点線)をそろえて過去の各周期の相対数(太陽全体)もプロットしました。灰色の実線が第24周期、点線がそれ以前の周期を表します。

 第25周期の活動度については、最近100年で最低となった第24周期よりさらに低くなるというものも含め、様々に予想されてきましたが、グラフを見ると、第24周期と同等もしくはそれを上回る活動になっていることがうかがえます。
→ 2023年の黒点相対数

2月の太陽:黒点望遠鏡 連続光・G-Band・CaK Hα線 赤外線偏光

 2023年2月は引き続き太陽活動が活発で、X2.2という大きなフレア(2022年4月20日のものと並んで今周期ではこれまでで最大)をはじめとする顕著なフレア活動も見られました。ここでは、このX2.2フレアを起こした活動領域NOAA13229を紹介します。

 図1に、この領域が太陽面上を進んでいく様子を、連続光とHαで示します。この領域は太陽面のこちら側に現れる前から活発で、2月16日にはM1.1フレアを起こしました。太陽フレア望遠鏡でとらえたこのフレアのHα線で見た姿を図2 (ムービー)に示します。活動領域はリムの向こう側にあるのですが、フレアに伴ってHαの明るいループ構造が膨張していく様子が見えています。

 その後この領域は、2月17・24・25日(いずれも世界時)ににそれぞれX2.2、M3.7、M6.3の大きなフレアを起こします。残念ながらすべて私たちの観測時間前に発生したため、図3に、GOES衛星が観測したX線強度変動と、SDO衛星AIA装置が観測したフレアの様子を示しました。図1の連続光画像と比べると、X2.2フレアを起こした後しばらくは発達した黒点が見られるものの、その後黒点が衰えていく中でM3.7、M6.3フレアが発生したことが分かります。

 一方、図1のHα画像で見ると、活動領域を貫くように横たわるフィラメントが継続して見えています。図3でわかるように、X2.2・M3.7・M6.3はいずれも長くX線強度が尾を引く長時間フレアです。このようなフレアは、フィラメントを含むコロナプラズマが大規模に惑星間空間に噴出することで起こります。NOAA13229では、黒点が縮小しながらも活発なフィラメント形成が続き、Mクラスフレアを起こしたと考えられます。M6.3フレアは磁気嵐も起こしており、地球に影響する太陽フレアが小さな黒点群でも起こることがわかります。このことは、太陽フレアの発生と影響を予測するには、黒点ばかりではなく、彩層・フィラメントの観測が重要であることを示しています。
(AIA装置による画像は、NASA/SDO及びAIA科学チームの厚意により掲載しています。)


図1. 太陽フレア望遠鏡で撮影した、白色光とHα線でのNOAA 13229。黒点の発達と縮小、Hα線で継続して見えるフィラメントの姿を示しています。


図2 (ムービー). 太陽フレア望遠鏡で撮影した、2023年2月16日00:32 UT (9:32 JST) にNOAA 13229で発生したM1.1フレアのHα線ムービー。太陽面の向こう側から輝くループが膨張していく様子が見えています。


図3. 2023年2月16日~27日の、GOES衛星で測定された太陽のX線強度と、NOAA 13229で発生した、図2のM1.1フレアおよびSDO衛星AIA装置で観測されたX2.2、M3.7、M6.3の様子。

国立天文台 太陽観測科学プロジェクト

2023年1月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年5月以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年5月に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。

 太陽活動第23周期から第24周期にかけての極小 (2008年12月) は、極小になった時の黒点相対数の値が小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、太陽活動第23周期は平均よりも長く1996年5月から12年以上継続したサイクルになりました。

 太陽活動第24周期は、2008年12月から2019年12月までの11年間継続し、継続期間は平均的な長さでした。一方で活動度は低調で、三鷹での1929年以降の観測では黒点相対数の極大が最も小さく、世界中の観測を集計したSILSOの記録でも108年ぶりに低い極大となった周期でした。2019年12月の極小値も前回を下回り、三鷹での観測では黒点相対数が過去最低となっています。南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。

 太陽全体での黒点相対数は、2020年1月から増加しており、現在の太陽活動サイクルは第25周期です。
→ 2023年の黒点相対数

1月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 2023年1月は、黒点観測を26日間実施できました (白色光画像の1月のデータベースカレンダー)。NOAA (※1) が認定した活動領域は、前年12月に見られたNOAA 13172・13173・13175~13177・13179・13180の7群が引き続きあり、NOAA 13181~13207の27群が新たに出現しました。黒点相対数の月平均値は、太陽全面と南北両半球で前月よりも増加し108.08 (北半球 62.81、南半球 45.27) となりました。2カ月連続で全面の月平均値が100を超え、太陽活動の順調な上昇がうかがえます。

 フレアの発生も活発でした。GOES (※2) 衛星のX線観測では、X線強度Bクラス以上のフレアが279回確認されました。Mクラスフレア発生は41回で前の月と同水準だった一方、Xクラスフレアは3回発生しました。Xクラスフレアの日時・規模と発生領域は、1月6日0:57 UT (9:57 JST) のX1.2 (NOAA 13182)、9日18:50 UT (10日3:50 JST) のX1.9 (NOAA 13184)、10日22:47 UT (11日7:47 JST) のX1.0 (NOAA 13186) となっています。

 1月6日のX1.2フレアは、日本での日中の時間帯に発生し、三鷹の太陽フレア望遠鏡と野辺山の強度偏波計で同時観測できました。まず、太陽フレア望遠鏡での観測結果を紹介します。図1で見られるように、X1.2フレアを起こした活動領域NOAA 13182は連続光では大きめの黒点群が確認でき、カルシウムK線の画像では黒点群を取り囲んで明るく見える領域 (プラージュ) がよくわかります。Hα線画像と見比べると、フレアの主要な発光はプラージュの南側の端近くで起こっています。ムービーでは、太陽表面から炎が噴き出るように発光している様子が目を引きます。現周期に入って初めて三鷹で観測できたXクラスフレアです。

 次に、野辺山強度偏波計での観測結果を紹介します。この観測装置は、太陽から放射される電波をモニタリングしていて、今回X1.2フレアに伴う電波バースト (電波強度の一時的な増加) をとらえました。図2に4つの周波数でのグラフを示します。観測された電波は、主として太陽フレアで発生した高エネルギー電子から放出されたものです。35 GHz・3.75 GHzといった高周波側がピークとなった00:56 UT頃にはHα線でも最も明るい輝点が出現しており、電波の源であるフレアのエネルギー解放の現場の様子がうかがえます。一方、低周波側の1 GHzの電波とX線強度は遅れて0:57 UT頃にピークになり、さらにその後1:00 UT付近にHαでのフレア領域全体の明るさが最大になっています。これらは高エネルギー電子により生成された高温プラズマのふるまいを示すものです。このような電波・Hα線・X線の時間変化の違いは、フレアで解放されたエネルギーの変換過程を反映しています。
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※1 NOAA: National Oceanic and Atmospheric Administration (米国海洋大気局。この機関によって太陽活動領域に番号が振られる。)
※2 GOES: Geostationary Operational Enviromental Satellite (米国 NOAAの地球環境観測衛星。地球に降り注ぐ軟X線の総フラックスも常時モニターしている。)
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Continuum, Calcium II K-line, and H-alpha images of the Sun on January 6, 2023
図1. 2023年1月6日の太陽全面の (左) 連続光、(中央) カルシウムK線画像と (右) Hα線画像。灰色の四角で囲まれた場所に活動領域NOAA 13182があり、その部分を拡大した画像を全面像に重ねて表示しています。Hα線画像中の青い四角はムービーの表示範囲を表しています。[太陽フレア望遠鏡で撮影]


ムービー. 2023年1月6日0:57 UT (9:57 JST) にNOAA 13182で発生したX1.2フレアをHα線で観測したムービーと説明図。大きさの目安として、縮尺をそろえた地球の画像を並べて表示しています。太陽表面から炎が噴き出しているように見えるHα線の発光が目を引きます。[太陽フレア望遠鏡で撮影。図をクリックするとムービーが再生されます。別の画面でムービーを見たい場合は「新しいタブでムービーを見る」、説明図を見たい場合は「新しいタブで説明図を見る 」]

Solar radio burst for the X1.2 flare on January 6, 2023
図2. (左) 2023年1月6日に起こったX1.2フレアで観測された太陽電波バースト。上段から1・2・3.75・35 GHzの4つの周波数における電波強度変化グラフを図示しています。各グラフで、緑色の破線はHα線で最も明るい輝点が見られた時刻 (0:56:00 UT)、赤い実線はX線での明るさのピーク時刻 (0:57 UT) を示しています。[野辺山強度偏波計で観測]

過去の太陽活動 : 2010年2011年2012年2013年2014年2015年2016年2017年2018年2019年2020年2021年2022年2023年2024年