
黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年5月以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年5月に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。
太陽活動第23周期から第24周期にかけての極小 (2008年12月) は、極小になった時の黒点相対数の値が小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、太陽活動第23周期は平均よりも長く1996年5月から12年以上継続したサイクルになりました。
太陽活動第24周期は、2008年12月から2019年12月までの11年間継続し、継続期間は平均的な長さでした。一方で活動度は低調で、三鷹での1929年以降の観測では黒点相対数の極大が最も小さく、世界中の観測を集計したSILSOの記録でも108年ぶりに低い極大となった周期でした。2019年12月の極小値も前回を下回り、三鷹での観測では黒点相対数が過去最低となっています。南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。
太陽全体での黒点相対数は、2020年1月から増加しており、現在の太陽活動サイクルは第25周期です。
→ 2022年の黒点相対数
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12月は、直近4カ月とは対照的に好天が続き、黒点観測を26日間実施できました (白色光画像の12月のデータベースカレンダー)。NOAA (※1) が認定した活動領域は、11月に見られたNOAA 13152が引き続きあり、NOAAs 13153~13179の27群が新たに出現しました。黒点相対数の月平均値は、太陽全面および南北両半球で前月よりも増加し100.19 (北半球 56.65、南半球 43.54) となりました。第25周期が始まってちょうど3年で全面の月平均値が100を超えました。第24周期では極小後2年11カ月でこれを達成していて、黒点数で見ると今週期は前周期と同等の推移を見せています。
フレアの発生は、月間総数と中規模以上のフレアの数のどちらも増加しました。GOES (※2) 衛星のX線観測では、X線強度Bクラス以上のフレアが328回確認され前月比1.47倍となりました。Xクラスフレアは発生しませんでしたが、Mクラスフレアは44回起こり、こちらは前月比7.3倍となっています。黒点相対数月平均値とフレア月間発生数の変化グラフ (図1) からは、第25周期開始後に太陽活動が高まってきていることが読み取れます。この1年間のフレア発生は、Cクラスが2092回、Mクラスが195回、Xクラスが7回となりました。Mクラス以上のフレアの年間発生数の変化グラフで見ると、活動周期開始後3年目でのフレア発生は、現周期は第23・24周期を上回っています。
12月に起こったMクラスフレア44回のうち33回は、14日~17日の4日間にまとまって発生しています。これらのほとんどは、活動領域NOAA 13165が発生源となっていました (twitterの投稿)。NOAA 13165は、11日に南半球の太陽面中心に近い場所に出現した際には小さな黒点が一つだけ見えていましたが、図2 に見られるようにフレアが多発した14~16日には黒点群が発達し磁場分布も複雑になっていました。14日の画像で黒点群の左下側で見えているような (N極とS極が交互に並ぶ) 磁場分布になると、フレアが起きやすい傾向があります。
三鷹の太陽フレア望遠鏡で観測できたMクラスフレアの中から、16日に発生したM3.5フレアのHα線観測結果を紹介します。NOAA 13165が縁近くにある時に発生したもの (図3) で、GOES衛星のX線観測では16日1:30 UT (日本標準時1:30) から明るくなり始めて2:01 UT (日本標準時11:01) にピークを迎えたのち2:30 UT (日本標準時11:30) に終了した緩やかフレアでした。ムービーでは左下側の後行黒点近くでHα線の発光が見えていて、X線でピークとなった2:01 UTよりも早く1:50 UT (日本標準時10:50) 頃に最も明るくなっています (X線・Hα線強度変化比較グラフ)。
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※1 NOAA: National Oceanic and Atmospheric Administration (米国海洋大気局。この機関によって太陽活動領域に番号が振られる。)
※2 GOES: Geostationary Operational Enviromental Satellite (米国 NOAAの地球環境観測衛星。地球に降り注ぐ軟X線の総フラックスも常時モニターしている。)
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図1. 2020年1月~2022年12月のフレア月間発生数 (棒グラフ) と黒点相対数 (折れ線グラフ) の推移。棒グラフ頂上には、フレアの月間発生数のラベルを付けています。フレアの発生数はGOES衛星X線フラックス測定によるフレア検出、黒点相対数は三鷹での観測に基づきます。
図2. (左) 2022年12月14・15・16日に撮影された活動領域NOAA 13165の (上段) 連続光画像と (下段) 赤外線偏光 (磁場分布) 画像、(右) 16日の太陽全面の連続光画像。赤外線偏光画像では磁場の正極 (N極) を白、負極 (S極) を黒で表示しています。右パネルでは、水色の四角形で囲んだところにNOAA 13165が見えています。時間の経過とともに黒点群と磁場が発展していることがわかります。[太陽フレア望遠鏡で撮影]
図3. 2022年12月16日1:51 UT (10:51 JST) の太陽全面のHα線画像。水色の四角形はムービーの表示範囲を表していて、活動領域NOAA 13165でのM3.5フレアの発光が見えています。[太陽フレア望遠鏡で撮影]
ムービー. 2022年12月16日1:30-2:30 UT (10:30-11:30 JST) にNOAA 13165で発生したM3.5フレアをHα線で観測したムービーと説明図。大きさの目安として、縮尺をそろえた地球の画像を並べて表示しています。X線でのピーク (2:01 UT) よりも早く1:50 UT頃にHα線で最も明るく光っているのがわかります。[太陽フレア望遠鏡で撮影。図をクリックするとムービーが再生されます。別の画面でムービーを見たい場合は「新しいタブでムービーを見る」、説明図を見たい場合は「新しいタブで説明図を見る 」]
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