過去の太陽活動 : 2010年、
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2022年12月の太陽活動 バックナンバー
![]() 黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年5月以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年5月に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。太陽活動第23周期から第24周期にかけての極小 (2008年12月) は、極小になった時の黒点相対数の値が小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、太陽活動第23周期は平均よりも長く1996年5月から12年以上継続したサイクルになりました。太陽活動第24周期は、2008年12月から2019年12月までの11年間継続し、継続期間は平均的な長さでした。一方で活動度は低調で、三鷹での1929年以降の観測では黒点相対数の極大が最も小さく、世界中の観測を集計したSILSOの記録でも108年ぶりに低い極大となった周期でした。2019年12月の極小値も前回を下回り、三鷹での観測では黒点相対数が過去最低となっています。南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。 太陽全体での黒点相対数は、2020年1月から増加しており、現在の太陽活動サイクルは第25周期です。
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12月は、直近4カ月とは対照的に好天が続き、黒点観測を26日間実施できました (白色光画像の12月のデータベースカレンダー)。NOAA (※1) が認定した活動領域は、11月に見られたNOAA 13152が引き続きあり、NOAAs 13153~13179の27群が新たに出現しました。黒点相対数の月平均値は、太陽全面および南北両半球で前月よりも増加し100.19 (北半球 56.65、南半球 43.54) となりました。第25周期が始まってちょうど3年で全面の月平均値が100を超えました。第24周期では極小後2年11カ月でこれを達成していて、黒点数で見ると今週期は前周期と同等の推移を見せています。フレアの発生は、月間総数と中規模以上のフレアの数のどちらも増加しました。GOES (※2) 衛星のX線観測では、X線強度Bクラス以上のフレアが328回確認され前月比1.47倍となりました。Xクラスフレアは発生しませんでしたが、Mクラスフレアは44回起こり、こちらは前月比7.3倍となっています。黒点相対数月平均値とフレア月間発生数の変化グラフ (図1) からは、第25周期開始後に太陽活動が高まってきていることが読み取れます。この1年間のフレア発生は、Cクラスが2092回、Mクラスが195回、Xクラスが7回となりました。Mクラス以上のフレアの年間発生数の変化グラフで見ると、活動周期開始後3年目でのフレア発生は、現周期は第23・24周期を上回っています。12月に起こったMクラスフレア44回のうち33回は、14日~17日の4日間にまとまって発生しています。これらのほとんどは、活動領域NOAA 13165が発生源となっていました (twitterの投稿)。NOAA 13165は、11日に南半球の太陽面中心に近い場所に出現した際には小さな黒点が一つだけ見えていましたが、図2 に見られるようにフレアが多発した14~16日には黒点群が発達し磁場分布も複雑になっていました。14日の画像で黒点群の左下側で見えているような (N極とS極が交互に並ぶ) 磁場分布になると、フレアが起きやすい傾向があります。
三鷹の太陽フレア望遠鏡で観測できたMクラスフレアの中から、16日に発生したM3.5フレアのHα線観測結果を紹介します。NOAA 13165が縁近くにある時に発生したもの (図3) で、GOES衛星のX線観測では16日1:30 UT (日本標準時1:30) から明るくなり始めて2:01 UT (日本標準時11:01) にピークを迎えたのち2:30 UT (日本標準時11:30) に終了した緩やかフレアでした。ムービーでは左下側の後行黒点近くでHα線の発光が見えていて、X線でピークとなった2:01 UTよりも早く1:50 UT (日本標準時10:50) 頃に最も明るくなっています (X線・Hα線強度変化比較グラフ)。
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2022年11月の太陽活動 バックナンバー
![]() 黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年5月以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年5月に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。太陽活動第23周期から第24周期にかけての極小 (2008年12月) は、極小になった時の黒点相対数の値が小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、太陽活動第23周期は平均よりも長く1996年5月から12年以上継続したサイクルになりました。太陽活動第24周期は、2008年12月から2019年12月までの11年間継続し、継続期間は平均的な長さでした。一方で活動度は低調で、三鷹での1929年以降の観測では黒点相対数の極大が最も小さく、世界中の観測を集計したSILSOの記録でも108年ぶりに低い極大となった周期でした。2019年12月の極小値も前回を下回り、三鷹での観測では黒点相対数が過去最低となっています。南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。 太陽全体での黒点相対数は、2020年1月から増加しており、現在の太陽活動サイクルは第25周期です。
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11月は、中旬と月末に天気不良の日が連続し、黒点観測日数は18日間でした (白色光画像の11月のデータベースカレンダー)。NOAA (※1) が認定した活動領域は、10月に見られたNOAAs 13131・13133・13134・13135の4群が引き続きあり、NOAAs 13136~13152の17群が新たに出現しました。黒点相対数の月平均値は、太陽全体と北半球で前月よりもわずかに増加し69.39 (北半球 48.94、南半球 20.44) となりました。10月に引き続いて、北半球での黒点数が多い月でした。フレアの発生は、月間総数は前月と同程度でしたが、中規模以上のフレアは減少しました。GOES (※2) 衛星のX線観測では、X線強度Bクラス以上のフレアが223回確認されました。Xクラスフレアは発生せず、Mクラスフレアは6回起こりました。11月に最もフレア発生が盛んだったのは活動領域NOAA 13141で、全フレア発生233回のうち63回 (27%)、Mクラスフレア6回のうち4回 (67%) はこの領域で起こったものです。NOAA 13141は、図1 で示されているように東西方向に大きく広がった黒点群を持ち、西 (右) 側の先行黒点では複雑な磁場配置が見られました。この領域でのMクラスフレアは発生日時と天気の都合が悪く三鷹では観測できませんでしたが、11日のHα線観測で多数のB・Cクラスフレアとサージ (Surge. 彩層からの物質の噴き上がり) 現象を起こす活発な活動がとらえられましたので紹介します。ムービーでは、先行黒点の近くで小さなフレア発光が起こっていて、サージ現象が黒い筋状の噴出として見えています。
この月は、宇宙天気予報に関連して、フレア以外にも注目すべきものが見られました。ひので衛星のX線望遠鏡で撮影した太陽の画像 (図2) を見ると、赤道付近と北半球に黒く見える領域があることがわかります。この部分はコロナホールと呼ばれ、X線の放射が少ないために暗く見えています。図2の左パネルで中心から西側に見えているコロナホールは27日後の画像 (右パネル) でも同じ位置にあり、太陽自転1周の間安定してあったことがわかります。コロナホールは高速太陽風の発生源として知られていて、磁気嵐の発生予報ではコロナ質量放出と併せて注目されるものです。実際に、画像で見えているコロナホールから吹き出た速い太陽風は、11月2~6日にかけて (twitterでの投稿1) と11月24日~12月7日にかけて (twitterでの投稿2) の2期間に地球に到来し、G1クラス (NOAAによるG1~G5の5段階評価で最弱) の磁気嵐が複数回発生しました。
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2022年10月の太陽活動 バックナンバー
![]() 黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年5月以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年5月に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。太陽活動第23周期から第24周期にかけての極小 (2008年12月) は、極小になった時の黒点相対数の値が小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、太陽活動第23周期は平均よりも長く1996年5月から12年以上継続したサイクルになりました。太陽活動第24周期は、2008年12月から2019年12月までの11年間継続し、継続期間は平均的な長さでした。一方で活動度は低調で、三鷹での1929年以降の観測では黒点相対数の極大が最も小さく、世界中の観測を集計したSILSOの記録でも108年ぶりに低い極大となった周期でした。2019年12月の極小値も前回を下回り、三鷹での観測では黒点相対数が過去最低となっています。南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。 太陽全体での黒点相対数は、2020年1月から増加しており、現在の太陽活動サイクルは第25周期です。
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10月は、黒点観測は15日間にとどまりました (白色光画像の10月のデータベースカレンダー)。NOAA (※1) が認定した活動領域は、9月に見られたNOAAs 13105・13107・13110・13111の4群が引き続きあり、NOAA 13112~13135の24群が新たに出現しました。黒点相対数は、多くの黒点群が太陽面にあった前半月で観測機会が少なかったこともあって月平均値は65.47 (北半球 43.67、南半球 21.80) となり、黒点相対数が100を超えた日は1日間 (4日) のみでした。太陽全面での月平均値が減少した一方で、9月とは逆に北半球での黒点数が多い月でした。フレアの発生は、月間総数は前月より少なくなりましたが、中規模以上のフレアが多く起こっています。GOES (※2) 衛星のX線観測では、X線強度Bクラス以上のフレアが230回確認され、Mクラスフレアが19回起こったほか、5月10日以来となるXクラス (X1.0) フレアが発生しました。これらM・Xクラスフレアは、1例を除いて北半球の活動領域NOAA 13110とNOAA 13112が起こしたものです。このうち、NOAA 13112は10月1日に東の縁から出現した黒点群で、9月17日に西の縁に没したNOAA 13098が太陽を半周して戻ってきた領域です。図1 の左右パネルを見比べると、NOAA 13112は自転1周前のNOAA 13098とほぼ同じ位置にあり、黒点群の大きさもほぼ同じです。NOAA 13098はCクラスフレア42回・Mクラスフレア6回を発生した領域でしたが、NOAA 13112もBクラス3回・Cクラス53回・Mクラス11回 (これらとは別に東の縁から出現する直前の9月30日にもCクラス14回・Mクラス3回) のフレアを起こし活動は衰えていませんでした。もうひとつのNOAA 13110は、9月下旬から引き続き見えていた黒点群で、X1.0フレアはこの領域で10月2日20:25 UT (日本標準時3日5:25) に発生しました (twitterでの投稿1)。Xクラスフレアは東京での日の出前に起こったため三鷹では観測できませんでしたが、これに次ぐ規模のM8.7フレアが同日の2:21 UT (日本標準時2日11:21) に同じ黒点群で発生し太陽フレア望遠鏡で観測できましたので、結果を紹介します。図2の3枚のパネルで、NOAA 13110とその東 (左) 隣に出現したNOAA 13113を比較すると、NOAA 13110には大きな暗部を見せる直径が大きな黒点があります。ムービーでは、Hα線で明るく光り始めると同時に北西 (右上) 方向に短いフィラメントが噴出している様子が確認できます。よく見ると、フレアが光り始めた直後には白く発光した物質が噴出していますが、それに続いて黒い筋状のものが噴き出ているようです。この見え方の違いは、プラズマの温度の違い (最初の噴出は高温で、続く噴出は低温) を反映していると思われます。
M8.7フレアで噴出したフィラメントはコロナ質量放出 (CME) になりましたが、太陽の北西側に噴き出し地球には到来しませんでした (twitterでの投稿2)。一方で、フレアで放射された紫外線やX線の影響で、日本各地でデリンジャー現象 (短波通信障害) が発生しました (twitterでの投稿3) 。
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2022年9月の太陽活動 バックナンバー
![]() 黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年5月以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年5月に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。太陽活動第23周期から第24周期にかけての極小 (2008年12月) は、極小になった時の黒点相対数の値が小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、太陽活動第23周期は平均よりも長く1996年5月から12年以上継続したサイクルになりました。太陽活動第24周期は、2008年12月から2019年12月までの11年間継続し、継続期間は平均的な長さでした。一方で活動度は低調で、三鷹での1929年以降の観測では黒点相対数の極大が最も小さく、世界中の観測を集計したSILSOの記録でも108年ぶりに低い極大となった周期でした。2019年12月の極小値も前回を下回り、三鷹での観測では黒点相対数が過去最低となっています。南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。 太陽全体での黒点相対数は、2020年1月から増加しており、現在の太陽活動サイクルは第25周期です。
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9月は、中旬を中心に天気不良の日が多く、黒点観測は18日間にとどまりました (白色光画像の9月のデータベースカレンダー)。NOAA (※1) が認定した活動領域は、8月に見られたNOAAs 13086・13087・13089・13090の4群が引き続きあり、NOAA 13091~13111の21群が新たに出現しました。観測できた中で黒点相対数が100を超えた日が5日間 (10・12・25・26・27日) あり、黒点相対数の月平均値は85.78 (北半球 34.28、南半球 51.50) となりました。全体と南半球での月平均値は今週期の最高値を更新し、北半球での値も2019年12月以降で3番目の大きさです。黒点数は増加しましたが、フレアの月間発生数は前月比0.92倍になりました。GOES (※2) 衛星のX線観測では、X線強度Bクラス以上のフレアが315回確認され、最大のM7.9フレアを含めてMクラスフレアが13回発生しました。Mクラスフレアは6つの活動領域で発生していて、南半球に片寄っていた8月とは異なり、当月は南北3群ずつとなっています。これらのMクラスフレアは、発生時刻が三鷹での観測時間帯をはずれているものがほとんどで、太陽フレア望遠鏡ではひとつも観測できませんでしたが、9月23日に活動領域NOAA 13110で起こったM1.7フレアをひので衛星のX線望遠鏡が撮影していましたので画像を紹介します。図1 で東 (左) 側の縁で明るく光っているのがM1.7フレアで、プロミネンス噴出を伴う長時間継続イベント (LDE. Long Duration Event) でした。この時噴出したプロミネンスはコロナ質量放出 (CME) になりました (twitterでの投稿1) が、太陽の東側に噴き出して地球には到来しませんでした。9月は、M1.7フレアでのプロミネンス噴出の他にも、複数の噴出現象が発生しています。このうち、9月28日2:50~3:50 UT (日本標準時11:50~12:50) にNOAA 13110の近くで起こったフィラメント噴出を太陽フレア望遠鏡で観測できましたので紹介します。NOAA 13110は、先に述べたM1.7フレアを起こした領域ですが、28日の時点で太陽面の中心近くに移動していて、図2で見られるように西 (右) 側に大きめの黒点 [黒い部分 (暗部) とそれを取り囲むうす暗い部分 (半暗部) が見えている] があり、N極 (白) とS極 (黒) が東西 (横) 方向に並ぶ双極型に近い磁場配置でした。噴き出したフィラメントは、活動領域の南東 (左下) 側に半円の形で見えていたものです。ムービーでは、半円がふくらむように動きつつフィラメントが消えていく様子が確認できます。その直後には、フィラメントがあった場所周辺があちこち明るくなるのが見えます。これはフィラメント噴出にともなうエネルギー解放によるもので、フィラメントを支えていた磁場の足元に相当するところが光っています。
このフィラメント噴出はCMEになり (twitterでの投稿2) 10月1日15:07 UT (日本標準時2日0:07) 頃に地球に到来しました (twitterでの投稿3) が、地球磁気圏を乱すには至りませんでした。
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2022年8月の太陽活動 バックナンバー
![]() 黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年5月以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年5月に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。太陽活動第23周期から第24周期にかけての極小 (2008年12月) は、極小になった時の黒点相対数の値が小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、太陽活動第23周期は平均よりも長く1996年5月から12年以上継続したサイクルになりました。太陽活動第24周期は、2008年12月から2019年12月までの11年間継続し、継続期間は平均的な長さでした。一方で活動度は低調で、三鷹での1929年以降の観測では黒点相対数の極大が最も小さく、世界中の観測を集計したSILSOの記録でも108年ぶりに低い極大となった周期でした。2019年12月の極小値も前回を下回り、三鷹での観測では黒点相対数が過去最低となっています。南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。 太陽全体での黒点相対数は、2020年1月から増加しており、現在の太陽活動サイクルは第25周期です。
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8月は、中旬と下旬に天気不良の日が多く、黒点観測は16日間にとどまりました (白色光画像の8月のデータベースカレンダー)。NOAA (※1) が認定した活動領域は、7月に見られたNOAA 13066~13068の3群が引き続きあり、NOAA 13069~13090の22群が新たに出現しました。黒点相対数が100を超えた日はなく、黒点相対数の月平均値は59.88 (北半球 19.00、南半球 40.88) となりました。全体値は前の月より減少して3月・4月・6月と同程度になりましたが、南北別で見ると北半球では数を大きく減らした一方で南半球では増加しています。黒点数が減少した一方で、フレアの月間発生数は前月比1.4倍になりました。GOES (※2) 衛星のX線観測では、X線強度Bクラス以上のフレアが344回確認され、第25周期の最高値を更新しました。このうちMクラス30回を含む197回 (全体の57%) のフレアは、南半球に出現した4つの活動領域NOAA 13078・13079・13088・13089で発生しています。これらの活動領域は、連続光で見られる黒点群の大きさや形は様々ですが、磁場観測画像で見ると単純な双極磁場 (N極とS極が1つずつ東西方向に並ぶ) から外れた磁極配置をしていました。黒点相対数だけでなく、フレア発生が盛んな活動領域の出現も南半球に片寄っていたわけです。フレアを活発に発生した4領域のうち、ここではNOAA 13088を取り上げます。NOAA 13088は、8月24日に太陽の南西側に出現して急激に成長し、翌25日から28日までの間にMクラスフレアを8回起こした活動領域です。図1 の連続光画像では、複数の暗部 (黒く見える部分) が大きな半暗部 (うす暗く見える部分) の中に散らばっている黒点群が見えています。この場所の磁場分布を観測すると、図1の中央パネルで見られるように棒状のS極 (黒) が2つのN極 (白) で挟まれた磁極配置になっていました。世界時8月27日2:40 (日本標準時11:40) にこの領域で起こったM4.8フレアでは、S極の領域に沿って隣り合った2本1組の発光 [ツーリボン (Two ribbon) 発光] がHα線で見られました。M4.8フレアを連続観測したムービー1では、Hα線の発光が2時間以上続いているほか、彩層から物質が噴き上がるサージ (surge) 現象が西 (右) 側の黒点で起こっていることがわかります。
NOAA 13088が起こしたフレアに関連して、もう一つ目を引く現象を観測できましたので紹介します。世界時8月28日16:19 (日本標準時29日1:19) に発生したM6.7フレアの後に、南西の縁 (図2の青い四角で囲んだところ) に大きなポストフレアループ (Post flare loop) が形成されました。ポストフレアループは、フレア発生から7時間以上経過した時点でもHα線で見られ、ムービー2ではループに沿って物質が動いていくようすも確認できます。これは、フレアで加熱されてループ内を満たしていたプラズマが時間の経過とともに冷えて集まり磁力線に沿って太陽面へと落ちていく現象で、雨に似ていることからコロナルレイン (Coronal rain) と呼ばれています。
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2022年7月の太陽活動 バックナンバー
![]() 黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年5月以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年5月に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。太陽活動第23周期から第24周期にかけての極小 (2008年12月) は、極小になった時の黒点相対数の値が小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、太陽活動第23周期は平均よりも長く1996年5月から12年以上継続したサイクルになりました。太陽活動第24周期は、2008年12月から2019年12月までの11年間継続し、継続期間は平均的な長さでした。一方で活動度は低調で、三鷹での1929年以降の観測では黒点相対数の極大が最も小さく、世界中の観測を集計したSILSOの記録でも108年ぶりに低い極大となった周期でした。2019年12月の極小値も前回を下回り、三鷹での観測では黒点相対数が過去最低となっています。南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。 太陽全体での黒点相対数は、2020年1月から増加しており、現在の太陽活動サイクルは第25周期です。
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7月は、黒点観測を21日間実施できました (白色光画像の7月のデータベースカレンダー)。NOAA (※1) が認定した活動領域は、6月に見られたNOAA 13040・13042~13045の5群が引き続きあり、NOAA 13046~13068の23群が新たに出現しました。活動領域が多く出現していた中旬に天気不良による欠測が多かったため、黒点相対数が100を超えた日は7日間にとどまりましたが、それでも2020年1月以降での最高日数です。黒点相対数の月平均値は80.95 (北半球 45.86、南半球 35.10) となり、北半球値と全体値で第25周期での最高値を更新しました。フレアの月間発生数は、6月の1.4倍になりました。GOES (※2) 衛星のX線観測では、X線強度Bクラス以上のフレアが245回確認されました。Mクラスフレアが5つの活動領域で計7回発生しましたが、発生日時と天気の都合で三鷹ではひとつも観測できませんでした。フレアの月間発生数と黒点相対数月平均値は、図1に示されるように月毎には増減しながらも全体の傾向として2020年1月以降に右肩上がりで増加していて、太陽活動の順調な高まりが見られます。この月は、7日から25日にかけてくっきりとしたフィラメントが多く見られました。この期間に太陽フレア望遠鏡で撮影できたHα線太陽全面画像をつなげて作成したムービー1では、南北両半球にいくつもの大小さまざまなフィラメントが見えていて、特に7日~18日に南半球にあった3本の長大なフィラメントが目を引きます。3本のうちで真ん中に見えているフィラメントは16日に噴出しましたが、東 (左) 側と西 (右) 側の2本は縁まで移動してプロミネンスとしても見えています。
フィラメントやプロミネンスの噴出は16日以外にも度々発生しましたが、ほとんどは発生日時と天気の条件が合わず三鷹では観測できませんでした。唯一、7月2日に太陽の北東の縁で見られたプロミネンス噴出は、その過程を雲に邪魔されずに観測できましたので紹介します。図2では、同日2:04 UT (日本標準時11:04) に撮影した太陽全面のHα線画像を挙げていて、青い四角で囲んだところに背が高いプロミネンスが見えています。この時点でプロミネンスの高さはおよそ108,000 km (地球直径の約8.4倍) ありました。ムービー2では、1:40~3:56 UT (日本標準時10:40~12:56) のプロミネンスの変化がわかり、左上方向に噴き出る物質の他に磁場に沿って太陽表面に戻っていく物質も見られます。このプロミネンス噴出は、Solar and Heliospheric Observatory 宇宙機のコロナグラフ観測でコロナ質量放出 (CME) になったことが確認されました (twitterでの投稿)。
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2022年6月の太陽活動 バックナンバー
![]() 黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年5月以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年5月に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。太陽活動第23周期から第24周期にかけての極小 (2008年12月) は、極小になった時の黒点相対数の値が小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、太陽活動第23周期は平均よりも長く1996年5月から12年以上継続したサイクルになりました。太陽活動第24周期は、2008年12月から2019年12月までの11年間継続し、継続期間は平均的な長さでした。一方で活動度は低調で、三鷹での1929年以降の観測では黒点相対数の極大が最も小さく、世界中の観測を集計したSILSOの記録でも108年ぶりに低い極大となった周期でした。2019年12月の極小値も前回を下回り、三鷹での観測では黒点相対数が過去最低となっています。南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。 太陽全体での黒点相対数は、2020年1月から増加しており、現在の太陽活動サイクルは第25周期です。
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6月は、黒点観測を20日間実施できました (白色光画像の6月のデータベースカレンダー)。NOAA (※1) が認定した活動領域は、5月に見られたNOAA 13020~13025の6群が引き続きあり、NOAA 13026~13045の20群が新たに出現しました。黒点相対数の月平均値は60.05 (北半球 30.70、南半球 29.35) となり、全体値では5月の値の86%、3月・4月と同程度の水準でした。第25周期が始まって2年半が経過しました。前年6月に太陽活動の推移を取り上げた際には、現周期は第24周期と似た振る舞いをしていると書きましたが、現在の進展状況はどうなっているでしょうか。三鷹の観測でカバーできる第17~25周期について、黒点相対数13か月移動平均値の変動を極小でそろえてプロットした結果を図1に示します。私たちのデータでは、第25周期は現時点でも極大値が低い周期のグループ (第17・20・23・24周期)に振り分けられそうですが、前周期よりも黒点数の増え方が大きくなっていました。現在の増加傾向が保たれるなら、2025年頃と予想されている第25周期の極大は、第24周期よりも大きくなる可能性があります。引き続き、今後の推移に注目していきます。フレアの月間発生数は、5月の63%にとどまりました。GOES (※2) 衛星のX線観測では、X線強度Bクラス以上のフレアが174回確認され、Mクラスフレアが3回起こった一方Xクラスフレアは発生しませんでした。活動領域の多くは、フレア発生がおとなしい領域でした。3回のMクラスフレアのうち、最大のM3.4フレアを三鷹の太陽フレア望遠鏡で観測できましたので紹介します。このフレアはNOAA 13032で発生し、GOESのX線観測では13日2:58 UT (日本標準時11:58) に開始して4:07 UT (日本標準時13:07) に最も明るくなりました。この時の活動領域は、図2の紫色の四角形で囲まれたところにあり、半暗部を伴った大きめの黒点群とN極-S極 (白-黒) が交互に並んだ磁場構造を見せています。
このフレアは、X線での増光開始から明るさ最大までとその後終了までの各時間がともに1時間以上に及ぶ長時間継続イベント (Long Duration Event. LDE) で、Hα線でもゆっくりとした増光が見られました (X線・Hα線強度変化比較グラフ)。ムービーでは、Hα線で見たフレア発光の発展を確認でき、活動領域内の複数箇所が明るくなる様子がわかります。LDEだったM3.4フレアは、X線・紫外線放射によるデリンジャー現象 (twitterでの投稿1) とコロナ質量放出 (CME) (twitterでの投稿2) も引き起こしました。13日に発生したこのCMEは、その一部が15日に地球に到来しました (twitterでの投稿3)。
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2022年5月の太陽活動 バックナンバー
![]() 黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年5月以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年5月に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。太陽活動第23周期から第24周期にかけての極小 (2008年12月) は、極小になった時の黒点相対数の値が小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、太陽活動第23周期は平均よりも長く1996年5月から12年以上継続したサイクルになりました。太陽活動第24周期は、2008年12月から2019年12月までの11年間継続し、継続期間は平均的な長さでした。一方で活動度は低調で、三鷹での1929年以降の観測では黒点相対数の極大が最も小さく、世界中の観測を集計したSILSOの記録でも108年ぶりに低い極大となった周期でした。2019年12月の極小値も前回を下回り、三鷹での観測では黒点相対数が過去最低となっています。南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。 太陽全体での黒点相対数は、2020年1月から増加しており、現在の太陽活動サイクルは第25周期です。
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5月は、上旬・中旬に天気不良の日が多く、黒点観測は18日間に止まりました (白色光画像の5月のデータベースカレンダー)。NOAA (※1) が認定した活動領域は、4月に見られたNOAA 12997・12999~13001・13003の5群が引き続きあり、NOAA 13004~13025の22群が新たに出現しました。黒点相対数が100以上の日は3日間 (22・23・24日) あり、黒点相対数の月平均値は69.78 (北半球 30.50、南半球 39.28) となりました。フレアの月間発生数は、総数が4月より増加し、規模が大きなフレアも引き続き起こっています。GOES (※2) 衛星のX線観測では、X線強度Bクラス以上のフレアが275回確認され、第25周期の最多記録を更新しました。Mクラスフレアは20回、 Xクラスフレアは2回の発生を記録しました。Xクラスフレアの日時・規模は、3日13:25 UTのX1.1と10日13:55 UTのX1.5で、両者とも活動領域NOAA 13006で起こっています。5月に出現した活動領域NOAA 13015は、4月に活発な活動を見せ向こう側半球に移動したNOAA 12994がこちら側半球に戻ってきた (回帰した) ものです。図1で4月22日の太陽全面画像とそこから自転1周後の5月19日の画像を並べていて、NOAA 12994と同じ位置にNOAA 13015が確認できます。NOAA 12994は、大きな黒点群を持ちN極とS極が入り混じった複雑な磁場構造を見せていて、Xクラス2回を筆頭に総計51回もフレアを起こした領域でした。その領域が回帰して新たに番号が付けられたNOAA 13015では、黒点群は小さくなり、フレアの発生も小規模なCクラス4回にとどまりました。磁場構造も以前より単純になっており、Hα線のプラージュも淡くなっていることが画像の比較からわかります。三鷹の観測では、4月に続き目を引くプロミネンスやフィラメントの活動がいくつもとらえられました。その中から、太陽フレア望遠鏡がとらえたフィラメント (プロミネンス) 噴出を紹介します。この噴出は、5月24日に南東の縁近く(図2の青い四角で囲んだところ) で起こったもので、太陽の縁から飛び出ている部分がプロミネンス、太陽面に重なっている部分が暗い筋状のフィラメントとして見えています。ムービーでは、フィラメントして見えていた部分が噴出して縁の外に出るとプロミネンスになっていることが確認できます。このことから、フィラメントとプロミネンスは同じ構造物が違う見え方をしているものであることがわかります。この噴出は、その後Solar and Heliospheric Observatory搭載のコロナグラフ観測でコロナ質量放出 (CME) になったことが確かめられました。
画像を解析したところ、噴出するプロミネンスの見かけの速さはおよそ秒速41 kmで、2022年1月の太陽活動で紹介したフレアに伴う物質噴出のおよそ7分の1~11分の1の速さでした。プロミネンスやフィラメントの噴出速度は、フレアを伴わない場合は低速、フレアを伴っているものは高速になる傾向があります。噴出現象は太陽コロナ中の磁場構造が平衡状態から外れることで起こり、1月の事例はフレアに起因する急激な磁場不安定化で起こったものであるのに対し、今回の事例はゆっくり変化する光球磁場が引き起こす自発的な不安定化が原因となっています。
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2022年4月の太陽活動 バックナンバー
![]() 黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年5月以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年5月に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。太陽活動第23周期から第24周期にかけての極小 (2008年12月) は、極小になった時の黒点相対数の値が小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、太陽活動第23周期は平均よりも長く1996年5月から12年以上継続したサイクルになりました。太陽活動第24周期は、2008年12月から2019年12月までの11年間継続し、継続期間は平均的な長さでした。一方で活動度は低調で、三鷹での1929年以降の観測では黒点相対数の極大が最も小さく、世界中の観測を集計したSILSOの記録でも108年ぶりに低い極大となった周期でした。2019年12月の極小値も前回を下回り、三鷹での観測では黒点相対数が過去最低となっています。南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。 太陽全体での黒点相対数は、2020年1月から増加しており、現在の太陽活動サイクルは第25周期です。
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4月は、天気不良の日がたびたびあり、黒点観測は19日間に止まりました (白色光画像の4月のデータベースカレンダー)。NOAA (※1) が認定した活動領域は、3月に見られたNOAA 12974~12981の8群が引き続きあり、NOAA 12982~13003の22群が新たに出現しました。無黒点の日が1日 (4月11日)、黒点相対数が100以上の日が1日 (4月27日) あり、黒点相対数の月平均値は59.95 (北半球 39.16、南半球 20.79) となりました。フレアの月間発生数は、総数は3月と同程度だった一方、中規模・大規模なフレアが増えました。GOES (※2) 衛星のX線観測では、X線強度Bクラス以上のフレアが249回確認され、Mクラスのフレア発生は3月の2倍の30回、 Xクラスフレアは3回を記録しました。3回のXクラスフレアの日時・規模 (発生領域) は、17日3:34 UT (12:34 JST) のX1.1 (NOAA 12994)、20日3:57 UT (12:57 JST) のX2.2 (NOAA 12992)、30日13:47 UT (22:47 JST) のX1.1 (NOAA 12994) となっています。17日と20日のXクラスフレアは、日本の正午近くに起こったため国内各地で短波通信障害 (デリンジャー現象) も引き起こしました (twitterでの投稿: 4月17日、4月20日)。残念ながら三鷹の太陽フレア望遠鏡では2つとも天気が優れず観測できませんでしたが、20日のX2.2フレアは発生直後にひので衛星のX線望遠鏡でとらえられていましたので画像を紹介します。図1で、南西 (右下) の縁で明るく光っているのがX2.2フレアで、このときNOAA 12992は向こう側半球に位置していました。1か月間にXクラスフレアが複数回発生するのは第25周期で初めてで、X2.2は今のところ今周期で最大規模のフレアです。4月は大規模フレアの発生だけでなく、フィラメント (プロミネンス) 噴出やコロナ質量放出 (CME) もたびたび観測され、地球の電離圏・磁気圏への影響も見られました。その1例として、4月11日に発生したフィラメント噴出を太陽フレア望遠鏡で観測できましたので紹介します。このフィラメントは、図2で見られるように太陽面中心から少し南にずれたところにあり、小さいものながらS極-N極 (黒-白) の磁場に挟まれて引き伸ばされたS字形の暗い筋 (Sigmoidal filament) として見えていました。このフィラメントが、11日5:04 UT (14:04 JST) 頃にC1.6フレアを伴って噴出しました。
フィラメントのS字 (または逆S字) 形構造が作られていく過程では、太陽コロナ中の磁場もねじられてエネルギーが蓄えられていくことがあります。このフィラメント噴出は、そのように蓄積されたエネルギーが解放された現象と考えられます。ムービーでは、フィラメントが突然見えなくなり直後に2条の筋状の発光 [ツーリボン (two ribbon) 発光] が起こるのが確認できます。噴出したフィラメントは周囲の太陽コロナも吹き飛ばして地球向きのCMEを形成し、これが14日に地球に到来してDst = -81 nTでG2レベル (5段階評価で下から2番目) の磁気嵐と活発なオーロラ活動を引き起こしました。
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2022年3月の太陽活動 バックナンバー
![]() 黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年5月以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年5月に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。太陽活動第23周期から第24周期にかけての極小 (2008年12月) は、極小になった時の黒点相対数の値が小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、太陽活動第23周期は平均よりも長く1996年5月から12年以上継続したサイクルになりました。太陽活動第24周期は、2008年12月から2019年12月までの11年間継続し、継続期間は平均的な長さでした。一方で活動度は低調で、三鷹での1929年以降の観測では黒点相対数の極大が最も小さく、世界中の観測を集計したSILSOの記録でも108年ぶりに低い極大となった周期でした。2019年12月の極小値も前回を下回り、三鷹での観測では黒点相対数が過去最低となっています。南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。 太陽全体での黒点相対数は、2020年1月から増加しており、現在の太陽活動サイクルは第25周期です。
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3月は、黒点観測を24日間実施できました (白色光画像の3月のデータベースカレンダー)。NOAA (※1) が認定した活動領域は、2月のNOAA 12954~12958が引き続きあり、NOAA 12959~12981の23群が新たに出現しました。黒点相対数が100以上の日が1日 (3月28日) あり、黒点相対数の月平均値は60.13 (北半球 28.00、南半球 32.13) となりました。フレアの月間発生数は、1月と同程度まで回復しました。GOES (※2) 衛星のX線観測では、X線強度Bクラス以上のフレアが256回確認されました。中でも特筆されるのは、Mクラスのフレア発生が初めて2ケタ台 (15回) になったことと第25周期で3回目となるXクラスフレアが観測されたことです。この活発なフレア発生は、活動領域NOAA 12975によるところ大でした。NOAA 12975は、3月24日に東の縁から比較的小さな黒点群として出現しましたが、27日12:00 UT以降に急速に発達し、28日には黒点配置と磁場がともに複雑な黒点群になりました (図1)。三鷹での5日間の観測画像を並べてみると、黒点群と磁場の発達がよくわかります (図2)。28日の複雑な磁場配置は、24日・25日に見えている正極-負極 (白-黒) の磁場ペアの西 (右) 側に新たな磁場ペアが浮上してできたもので、この浮上磁場の急激な発達が黒点群が複雑にしフレア発生を活発にしました。28日11:29 UTにM4.0フレアを起こしてから大きめのフレアが連発し、31日までに計9回のMクラスフレアと30日17:37 UTにX1.3フレアを発生しました。一連のフレア活動では、4回のコロナ質量放出 (CME) と2回のプロトンイベント (高エネルギー陽子の大量飛来) も併発しました。中規模・大規模なフレアが多かったものの、それらのほとんどは発生時刻と天気の都合で三鷹では観測できませんでした。唯一、3月25日5:26 UT (日本標準時14:26) に活動領域NOAA 12974で発生したM1.4フレアは、その全過程を太陽フレア望遠鏡でとらえられましたので紹介します。図3に連続光、赤外線偏光 (磁場分布)、Hα線で見た3月25日の太陽とNOAA 12974の拡大像を挙げています。この活動領域の興味深いところは、Mクラスフレアを起こしたものでありながら、NOAA 12975とは対照的に黒点群が小さく磁場配置もより単純で双極型に近いことです。
フレアの全過程を撮影したムービーをよく見ると、プラージュ (白く明るい領域) の中に2つの小黒点があり、東 (左) 側の小黒点で発光が始まった後により大きな2条の筋状の発光 [ツーリボン (two ribbon) 構造] に発展していることがわかります。図3との比較から、NOAA 12974の磁場は、黒点部分は2つとも負極性 (黒) ですが、それを取り囲むプラージュは正極-負極 (白-黒) の磁場ペアをなしていて、プラージュの正極磁場と黒点の負極磁場が接するあたりでフレアが開始していることがわかります。NOAA 12974が起こしたMクラスフレアはこの1回だけでしたが、黒点群としては小さくても活動領域の磁場が貧弱でなければ比較的大きなフレアが起こりうることを示す例です。
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2022年2月の太陽活動 バックナンバー
![]() 黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年5月以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年5月に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。太陽活動第23周期から第24周期にかけての極小 (2008年12月) は、極小になった時の黒点相対数の値が小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、太陽活動第23周期は平均よりも長く1996年5月から12年以上継続したサイクルになりました。太陽活動第24周期は、2008年12月から2019年12月までの11年間継続し、継続期間は平均的な長さでした。一方で活動度は低調で、三鷹での1929年以降の観測では黒点相対数の極大が最も小さく、世界中の観測を集計したSILSOの記録でも108年ぶりに低い極大となった周期でした。2019年12月の極小値も前回を下回り、三鷹での観測では黒点相対数が過去最低となっています。南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。 太陽全体での黒点相対数は、2020年1月から増加しており、現在の太陽活動サイクルは第25周期です。
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2月は、黒点観測を24日間実施できました (白色光画像の2月のデータベースカレンダー)。NOAA (※1) が認定した活動領域は、1月のNOAA 12934とNOAA 12936~12940が引き続きあり、NOAA 12941~12958の18群が新たに出現しました。無黒点の日はなく、黒点相対数の月平均値は55.00 (北半球 34.25、南半球 20.75) となりました。この結果は、北半球値では第25周期の最大値を更新し、全体値では2番目に大きなものです。フレアの月間発生数は、1月の81%ほどになり2カ月連続で減少しています。GOES (※2) 衛星のX線観測では、X線強度Bクラス以上のフレアが205回確認されました。MクラスフレアはNOAA 12939とNOAA 12941で計3回発生しましたが、すべて日本での夕方~夜の時間帯だったため三鷹では観測できませんでした。この月はまた、太陽の活動が宇宙開発に影響を及ぼした事例もありました。それは、2月1日に地球に到来したコロナ質量放出 (CME) とそれに引き続く太陽風の速度と磁場の変化です。このCMEは1月29日に活動領域12936で発生したM1.1フレア (図1) に伴って噴き出したもので、3日弱で地球に到来しました。CMEが通過した2月1~2日にも磁気圏は少し乱れましたが、CME通過後に太陽風の速度が秒速500 km以上になりさらに磁場が長時間にわたって大きく南を向いたため、2月3~4日にかけて磁気嵐が2回発生しました。どちらも規模としては5段階評価 (G1~G5) で最弱のG1、Dst指数で見ると最小値-61~-66 nTで特に激しいものではありませんでしたが、3日に打ち上げられたばかりのスターリンク通信衛星群49機がこの磁気嵐による大気膨張の影響を受け、その大部分が大気圏に再突入して失われました [参考:総務省 宇宙天気予報の高度化の在り方に関する検討会 (第4回) 配布資料]。宇宙天気現象が人工衛星に損害をもたらした例として注目されます。目を引いた現象は、フレアやCME・太陽風だけでなく、2月4~8日にかけて南東の縁で見られたプロミネンスもありました。このプロミネンスを太陽フレア望遠鏡で連日観測できましたので紹介します。図2では、Hα線でとらえたプロミネンス拡大画像と2月8日の太陽全面像を並べています。4日の時点では背が低く幅が広いプロミネンスが見えていましたが、1日経つごとに全体の形状が変化し高さも増しているのがわかります。4日の時点でおよそ40,000 km だった高さは、8日にはおよそ120,000 km (地球直径の約10倍) に達し、ひときわ目を引くプロミネンスになりました。向こう側の半球に隠れていたものが太陽の自転で縁に移動してきたことによる見かけの変化がありますが、7日と8日の画像で見られる差異はプロミネンス自体の変形と思われます。
背が高いプロミネンスは、それを支えている磁場が突然不安定になり噴出するのが度々観測されます。安定しているように見えたこのプロミネンスも、8日の日没までにゆっくりと噴出しました。ムービーでは、最初は動きが無かったプロミネンスが5:00 UT (日本標準時14:00) 頃から少しずつ持ち上がりはじめ、7:13 UT (日本標準時16:13) までに噴出して見えなくなる様子がわかります。噴出したプロミネンスは、その後CMEになったことが確認されています。
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2022年1月の太陽活動 バックナンバー
![]() 黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年5月以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年5月に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。太陽活動第23周期から第24周期にかけての極小 (2008年12月) は、極小になった時の黒点相対数の値が小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、太陽活動第23周期は平均よりも長く1996年5月から12年以上継続したサイクルになりました。太陽活動第24周期は、2008年12月から2019年12月までの11年間継続し、継続期間は平均的な長さでした。一方で活動度は低調で、三鷹での1929年以降の観測では黒点相対数の極大が最も小さく、世界中の観測を集計したSILSOの記録でも108年ぶりに低い極大となった周期でした。2019年12月の極小値も前回を下回り、三鷹での観測では黒点相対数が過去最低となっています。南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。 太陽全体での黒点相対数は、2020年1月から増加しており、現在の太陽活動サイクルは第25周期です。
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1月は、好天に恵まれて黒点観測を27日間実施できました (白色光画像の1月のデータベースカレンダー)。NOAA (※1) が認定した活動領域は、2021年12月のNOAA 12916~12919・12922が引き続きあり、NOAA 12923~12940の18群が新たに出現しました。また、無黒点の日 (1月4日) と黒点相対数が100以上の日 (1月16日) がそれぞれ1日ありました。黒点相対数の月平均値は48.78 (北半球 18.93、南半球 29.85) となり、全体値で前月比約80%に止まりました。フレアの月間発生数は、前年12月の93%ほどでした。GOES (※2) 衛星のX線観測では、X線強度Bクラス以上のフレアが252回、Mクラスフレアは5回確認されました。20日のM5.5フレアでは、第25周期で3回目となるプロトンイベント (高エネルギー陽子の飛来) も観測されました。2021年7月以降ここまでMクラス以上のフレアが毎月1回以上発生しており、太陽活動の高まりが感じられます。太陽活動が活発になっていくのに伴い、大きなフレアやプロミネンス・フィラメントなどの現象が三鷹でも観測されるようになりました。これまでHα線で見た太陽フレアをたびたび取り上げてきましたが、今回は噴出現象を紹介します。この噴出現象は1月12日の4:22 UT (日本標準時13:22) 頃に北東の縁で発生 (図1) したものです。発生場所を拡大したムービーでは、4:22 UTから4:29 UTにかけてHα線で光る小さなかたまりが左上に噴きあがる様子がわかります。画像の解析から、噴出した物質の見かけの速さは、縁からの高さが約49,300 km (~0.07太陽半径) で秒速274 km、高さ約197,000 km (~0.28太陽半径) で秒速469 kmとなっていて、加速しながら上昇しているとわかりました。このとき噴出した物質は、その後4:36 UTに太陽観測宇宙機Solar and Heliospheric Observatory (SOHO) 搭載のコロナグラフでコロナ質量放出 (CME) として観測されました (図2)。CACTus CMEカタログによると、このCMEの速さは平均で秒速939 kmと高速で、太陽フレア望遠鏡で見えなくなってからコロナグラフの視野に現れるまでの間にも加速していたことがうかがえます。
GOES衛星では、この噴出のあとおよそ5時間にわたって継続するB8レベルのX線放射が観測されています (図3)。これは、CMEに伴って太陽の向こう側半球で発生した長時間継続するフレア (Long Duration Event) によるものです。北東の縁では、14日13:34 UTにM1.4フレアが発生したあと同日の遅い時刻に同じ場所から活動領域12932が出現しました。12日のCMEの発生源もこの活動領域と思われます。活動領域12932は、こちら側の半球に現れてからはCクラス以上のフレアを起こさず、18日には黒点もなくなりました。
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