2020年3月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。

 前の太陽活動サイクルから今サイクルにかけての極小は、極小になった時の黒点相対数の値が特に小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、前回の太陽活動第23周期は平均よりも長く12年以上継続したサイクルになりました。

 現在の太陽活動サイクルは第24周期にあたり、太陽全面で見ると2008年末から始まって2014年に極大を迎え、その後は現在まで減少を続けています。一方で南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも次の極小に向かって黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。太陽全体での黒点相対数は現時点でも増加傾向を見せず、今サイクルと次のサイクルの境界となる極小期はまだ確定していません。
→ 2020年の黒点相対数

3月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 3月は黒点観測を20日間行うことができましたが、自動検出システムで黒点がとらえられたのは先月と同じく1日 (3月9日) だけでした (白色光画像の3月のデータベースカレンダー)。黒点相対数の月平均値は0.55で、南北別に見ると北半球 0.00、南半球 0.55となりました。2月から引き続いて低い活動水準を維持しています。

 一方NOAA (※) では、三鷹でも観測されたNOAA 12758 (南緯29度。図1) に加えてNOAA 12759 (北緯28度) を3月に出現した活動領域として認定しています。どちらも次の第25周期に属する高緯度群で、これで番号が付けられた第25周期の黒点群は9つとなりました。このように第25周期の黒点が安定して出現するようになっていますが、一方で第24周期に属する黒点も最近まで現れていて (2020年1月の太陽活動) 現在は第24・25周期両方の活動が見えています。

 それでは、どうやって第24周期の終わりと第25周期の始まりを決めるのでしょうか。これは、最も黒点数が少なくなった極小で定義します。ここで、この極小の決め方の説明をするために、1975年1月から2020年3月までの黒点相対数の変動グラフ (図2) を紹介します。図2では1か月ごとの黒点相対数の平均値 (月平均値) を黒線で描いていますが、この線はギザギザと変動していることがわかります。これではどこが極小かわからないので、月平均値の細かい変動をならした黒点相対数の13カ月移動平均値 (当該月とその前後各6か月の計13カ月分のデータに重みをつけて算出する) が用いられます。これは図2では赤線で描かれていて、この曲線の谷底が極小 (縦の破線) です。極小から次の極小まで (両矢印で示された期間) が、太陽活動の1周期になります。

 最近の黒点活動の変化は図2の赤線の末端部分に示されていますが、まだ上昇する気配は見られませんので、第24周期と第25周期の境界となる極小は確定していません。第25周期が始まったことを確認するには、今後しばらくの黒点活動を見守る必要があります。
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※ NOAA: National Oceanic and Atmospheric Administration (米国海洋大気局。この機関によって、太陽活動領域に番号が振られる。)
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fig1_sunspot_202003.png
図1. 2020年3月9日に太陽フレア望遠鏡で撮影した太陽全面の白色光画像。赤い四角枠で囲まれた場所に活動領域NOAA 12758の黒点が見えている。

fig2_SSNgraph_202003.png
図2. 三鷹キャンパスでの太陽黒点観測に基づく1975年1月から2020年3月までの黒点相対数の変動グラフ。黒線は黒点相対数の月平均値、赤線はその13カ月移動平均値を表す。縦の破線は13カ月移動平均値で決まる極小を示している。現在の第24周期と次の第25周期との境界となる極小はまだ確定していない。