過去の太陽活動 : 2010年、
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2020年12月の太陽活動 バックナンバー
![]() 黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。太陽活動第23周期から第24周期にかけての極小は、極小になった時の黒点相対数の値が特に小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、太陽活動第23周期は平均よりも長く12年以上継続したサイクルになりました。 太陽活動第24周期は、太陽全面で見ると2008年12月の極小 (2.21) から始まって2014年に極大 (95.56) を迎え、その後は減少を続けて2019年12月の極小 (1.52) で終了しました。南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。南半球の黒点相対数は2019年5月に0.04を記録した後徐々に増加しており、北半球では2020年1月に0.63となった後に増加の兆候が見え始めています。太陽全体での黒点相対数は、2020年1月から増加傾向が見え始めており、現在の太陽活動サイクルは第25周期です。
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12月は、黒点観測を25日間実施でき、このうち22日間で黒点群を確認しました (白色光画像の12月のデータベースカレンダー)。NOAA (※) が認定した活動領域は、11月から引き続いて見えていたNOAA 12785・12786・12788に加えて、NOAA 12790~12795の6群が新たに出現しました。黒点相対数の月平均値は、18.56 (北半球 0.00、南半球 18.56) となりました。フレアの月間発生数は11月とくらべて6割ほどに減少し、X線強度CクラスとBクラスフレアが計125回でした。11月29日に東の縁のすぐ裏側でM4.4フレアを起こした活動領域NOAA 12790は、こちら側の半球に姿を見せたときには図1のような単純な形をしていて、フレア発生も落ち着きました。2020年の最後の月になり、太陽活動第25周期が始まって1年が経ちましたので、ここでこれまでの活動の推移を振り返ってみたいと思います。図2からわかるように黒点数の周期変化の位相 (極大・極小のタイミングと山の形) は、南北各半球で見ると互いに差があります。太陽全面での第25周期の開始は2019年12月ですが、南北半球別に見るとまず南半球が7カ月先行して最も深い極小を迎え、北半球は続く2020年1月に極小となりました。極小後の全面での黒点数は順調に増加していますが、そのほとんどは南半球での黒点数増加が寄与しています。北半球の変化が先行していた前周期とは対照的です。
南北での位相ずれの影響は、出現する黒点の特性にも見られます。ある程度以上の大きさの黒点の緯度分布図を図3に示していますが、第25周期では北半球は1群だけなのに対し南半球にはすでに12群出現しています。南半球では、より大きい黒点群が出現する段階にはいっていると思われます。これらの黒点群の緯度が他の周期と比べて低め (南北26度未満) であるのは興味深く、今後の黒点の出現のしかたを見極めたいと思います。
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2020年11月の太陽活動 バックナンバー
![]() 黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。太陽活動第23周期から第24周期にかけての極小は、極小になった時の黒点相対数の値が特に小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、太陽活動第23周期は平均よりも長く12年以上継続したサイクルになりました。 太陽活動第24周期は、太陽全面で見ると2008年12月の極小 (2.21) から始まって2014年に極大 (95.56) を迎え、その後は減少を続けて2019年12月の極小 (1.52) で終了しました。南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。南半球の黒点相対数は2019年5月に0.04を記録した後徐々に増加しており、北半球では2020年1月に0.63となった後に増加の兆候が見え始めています。太陽全体での黒点相対数は、2020年1月から増加傾向が見え始めており、現在の太陽活動サイクルは第25周期です。
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11月は、黒点観測を20日間実施でき、このうち16日間で複数の黒点群を確認しました (白色光画像の11月のデータベースカレンダー)。NOAA (※1) により新たに認定された活動領域はNOAA 12780~12789の10群ありました。中でもNOAA 12786の黒点群 (図1) は、西側の先行黒点が適切に減光すれば望遠鏡なしでも確認できる大きさ (肉眼黒点) に成長したことが特筆されます。赤外線偏光 (磁場分布) 観測から、この先行黒点はほぼS極 (黒) が占めているとわかります。太陽の活動は10月に引き続き活発で、黒点相対数の月平均値は22.25 (北半球 3.45、南半球 18.80) となりました。フレアの月間発生数は9月以降増え続けていて、X線強度が大きなフレアも起こるようになってきました。NOAAのGOES (※2) 衛星によるX線観測では、X線強度Bクラス以上のフレアが206回とらえられていて、最大のものは29日の22:11 UTに発生したM4.4フレアです。第25周期開始後に起きたMクラスフレアとしては5月29日のM1.1に続き2例目で、発生が日本の夜の時間帯だったため三鷹では観測できませんでした。太陽の向こう側の半球でこのフレアを発生した活動領域は、12月1日にこちら側の半球に姿を現しました (活動領域NOAA 12790)。M4.4以外のものは、Cクラスフレアが51回、Bクラスフレアが154回となっていて、このうち23回のCクラスと72回のBクラスは活動領域NOAA 12781が引き起こしています。図2で示されているように、NOAA 12781の黒点群は、西側の先行黒点は半暗部 (薄暗い部分) の中に1つの暗部 (黒い部分) を持つ単純な形状である一方、東側の後行黒点は大きく広がった半暗部の中にいくつもの暗部がある複雑な構造を見せています。黒点群の磁場分布観測から、先行黒点の磁場はS極 (黒) だけであるのに対し、後行黒点にはS極-N極 (黒-白) の双極性磁場があるとわかりました。
この活動領域ではM4.4に次ぐ規模のC7.3フレアが5日に発生していて、こちらは三鷹でも観測できましたので紹介します。Hα線画像をつなげたムービーでは、00:07 UT頃から後行黒点近くの2カ所が光り始め、時間の経過とともに発光部分の形状と明るさが変化していく様子がわかります。2カ所のフレア発光箇所はそれぞれS極とN極の磁場領域に当たっています。
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2020年10月の太陽活動 バックナンバー
![]() 黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。太陽活動第23周期から第24周期にかけての極小は、極小になった時の黒点相対数の値が特に小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、太陽活動第23周期は平均よりも長く12年以上継続したサイクルになりました。 太陽活動第24周期は、太陽全面で見ると2008年12月の極小 (2.21) から始まって2014年に極大 (95.56) を迎え、その後は減少を続けて2019年12月の極小 (1.52) で終了しました。南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。南半球の黒点相対数は2019年5月に0.04を記録した後徐々に増加しており、北半球では2020年1月に0.63となった後に増加の兆候が見え始めています。太陽全体での黒点相対数は、2020年1月から増加傾向が見え始めており、現在の太陽活動サイクルは第25周期です。
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10月は、黒点観測を19日間実施でき、上旬は無黒点だったものの中旬以降に複数の黒点群を確認しました (白色光画像の10月のデータベースカレンダー)。太陽の活動は、9月の低い状況から一変して、この月は急激に活発になりました。NOAA (※1) により新たに認定された活動領域はNOAA 12774~12779の6群あり、三鷹ではこのうち4群をとらえました。29日に太陽フレア望遠鏡で撮影した連続光画像 (図1) では、南半球の高緯度に目立つ黒点群が2つ並んで見えています。黒点相対数の月平均値は12.47 (北半球 1.26、南半球 11.21) となりました。月平均値が10を超えたのは、2019年5月以来のことです。黒点が多く出現したことと併せてフレア発生も活発でした。NOAAのGOES (※2) 衛星によるX線観測では、Cクラスフレアが14回、Bクラスフレアが83回とらえられていて、これらのうち12回のCクラスと53回のBクラスフレアは図1で見えている黒点群で発生しています。図2は、この領域を連続光・赤外線偏光 (磁場分布)・Hα線で観測した拡大画像を並べて見せています。東西 (左右) に最も大きく広がった黒点群は活動領域NOAA 12778、その北東 (左上) 側に見えているコンパクトな黒点群が活動領域NOAA 12779です。NASAの太陽観測衛星 Solar Dynamics Observatory のデータで黒点群の変化を追跡すると、NOAA 12778は25日の09:00 UT頃に出現したときは2個の小さな暗部だけの黒点群だったものが2日ほどで半暗部と多数の暗部を持つ黒点群に発展しており、一方でNOAA 12779は28日の13:00 UT頃に出現してすぐに半暗部を伴う黒点群に急成長していました。赤外線偏光画像では、どちらの活動領域も第25周期の磁場の特徴を見せていますが、NOAA 12779ではN極とS極が入り組んでいて、NOAA 12778よりも複雑な磁場配置になっています。またHα線画像では、黒点から磁力線に沿って暗い筋模様が伸びているのが見えています。
29日の00:00 – 07:09 UT に連続撮影したHα線画像のムービーでは、この時間帯に起こった5回のBクラスフレア以外にも両方の活動領域で突発的な増光が繰り返し起こっている様子がとらえられています。よく見ると、時おり黒点から黒い筋状のものが噴出しているのがわかります。この現象はサージ (Surge) と呼ばれ、磁力線に沿って彩層のガスが細く絞られて噴出するものです。
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2020年9月の太陽活動 バックナンバー
![]() 黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。太陽活動第23周期から第24周期にかけての極小は、極小になった時の黒点相対数の値が特に小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、太陽活動第23周期は平均よりも長く12年以上継続したサイクルになりました。 太陽活動第24周期は、太陽全面で見ると2008年12月の極小 (2.21) から始まって2014年に極大 (95.56) を迎え、その後は減少を続けて2019年12月の極小 (1.52) で終了しました。南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。南半球の黒点相対数は2019年5月に0.04を記録した後徐々に増加しており、北半球では2020年1月に0.63となった後に増加の兆候が見え始めています。太陽全体での黒点相対数は、2020年1月から増加傾向が見え始めており、現在の太陽活動サイクルは第25周期です。
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9月は黒点観測を17日間実施できましたが、新黒点望遠鏡の自動検出にかかる大きさの黒点は出現せず、黒点相対数の月平均値は0.00となりました (白色光画像の9月のデータベースカレンダー)。三鷹での観測で月平均値がゼロになったのは2019年10月以来のことです。この月に出現しNOAA (※1) により認定された活動領域は、NOAA 12773 (北緯27度) の1群のみです。SILSO (※2) がまとめた欠測が無いデータでも、黒点相対数の月平均値は0.7 (北半球:0.6、南半球:0.1) となっており、6月~8月の状況から一変して低調な黒点出現です。その一方で、フレアの発生は8月に次ぐものでした。NOAAのGOES (※3) 衛星によるX線観測では、Cクラスフレアが1回 (C1.0)、Bクラスフレアが18回とらえられており、このうちCクラスを含む4回のフレアは活動領域NOAA 12773で発生しました。残念ながら三鷹の太陽フレア望遠鏡では、天気不良や発生時刻の都合でこれらのフレアを観測できませんでした。新しい活動周期の開始が確認できたとはいえ、極小からまだ9カ月しか過ぎておらず、このような時期に黒点が出なくなることは珍しくありません。9月は目を引く現象をとらえられませんでしたので、ここでは終了が確認された第24周期の活動に注目します。第24周期は、継続期間は11年と平均的でしたが、太陽活動は低調な周期でした。図1 で示されているように、第24周期の極大は三鷹で確認できた極大値としては最も小さいものです。極小値についても、それまでの三鷹の観測で最小だった第23/24周期の極小を、第24/25周期の極小はさらに下回りました。SILSOの記録では、極大値は108年ぶり、極小値は第24周期の開始時・終了時とも1823年5月の極小以来の低い値となっています。第24周期は、黒点以外の活動も低下しています。図2は、衛星で観測した太陽フレアの年間発生数と太陽の明るさ (総太陽放射照度. Total Solar Irradiance) を比較したグラフです。フレアの発生数と総太陽放射照度は、黒点と同じく太陽の活動度に応じて周期的に変動することが知られています。Mクラス以上のフレア発生数に注目すると、第24周期のピークが最も低くなっていて、周期ごとのフレア発生総数でも、第21~23周期では1,500以上だったのに対し第24周期では793となりました。総太陽放射照度の平均値でも、第24周期でのピークは他の周期よりもわずかに低くなっています。
このように第24周期は、黒点数で見ると1世紀ぶり、近代的な観測手法が出揃った時代では最も活動度が低い周期となりました。太陽活動周期には、よく知られた11年周期の他に、70~100年ごとに極大値が低い活動周期が現れるグライスベルグサイクル (Gleissberg Cycle) がありますが、第24周期はこのグライスベルグサイクルの極小に当たっていると見られます。黒点やフレアの発生、総太陽放射照度の変動は、太陽の磁気活動に起源をもち、その元となる磁場は太陽内部のダイナモ機構によって作られます。第24周期の低い活動度はダイナモ機構のどのような変化によるものか、それが第25周期の活動にどのような影響を与えるかは、極域磁場や太陽表面での南北方向の物質運動の観測とダイナモモデルのシミュレーションを組み合わせて研究が進められています。
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2020年8月の太陽活動 バックナンバー
![]() 黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。太陽活動第23周期から第24周期にかけての極小は、極小になった時の黒点相対数の値が特に小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、太陽活動第23周期は平均よりも長く12年以上継続したサイクルになりました。 太陽活動第24周期は、太陽全面で見ると2008年12月の極小 (2.21) から始まって2014年に極大 (95.56) を迎え、その後は減少を続けて2019年12月の極小 (1.52) で終了しました。南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。南半球の黒点相対数は2019年5月に0.04を記録した後徐々に増加しており、北半球では2020年1月に0.63となった後に増加の兆候が見え始めています。太陽全体での黒点相対数は、2020年1月から増加傾向が見え始めており、現在の太陽活動サイクルは第25周期です。
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8月は、梅雨明けの好天に恵まれたため、黒点観測を29日間実施できました (白色光画像の8月のデータベースカレンダー)。この月に見られた黒点群はすべて第25周期に属する高緯度群で、NOAA (※1) により認定された活動領域は6群ありました。活動領域NOAA 12767・12768は先月から引き続いて見えていたもので、NOAA 12769 (北緯27度)・12770 (北緯23度)・12771 (南緯18度)・12772 (北緯18度) の4群は新たに出現したものです。黒点相対数の月平均値は7.52 (北半球 5.97、南半球 1.55) となりました。8月に見られた活動領域のなかでも、NOAA 12770は暗部と半暗部が明瞭な黒点を持ち、4日に東の縁から出現した後9日間も見えていました。蝶形図の上でも、第25周期で最初の北半球の黒点です (全体ではNOAA 12765・12767に続く3例目) 。この活動領域は、フレアも盛んでした。GOES (※2) 衛星のX線モニター観測では、Cクラスフレアが2回、Bクラスフレアが28回とらえられていますが、このうちCクラスのすべてとBクラス14回はNOAA 12770で発生しました。8月15日の06:47 UT (日本標準時 15:47) に北西の縁近く (図1) で発生した最大のC2.0フレアは、太陽フレア望遠鏡でも観測できました。このフレアにともなって物質の噴出がとらえられましたので紹介します。ムービーでは、06:39:25 UTから06:47:25 UTにかけてNOAA 12770 (明るい領域) から物質が右上に向かって噴き出しているのがわかり、足元ではC2.0フレアの発光が見えています。画像の解析から、噴出した物質は見かけ上の速さが秒速344 kmで、太陽の縁より外側ではほぼ一定の速さで運動しているとわかりました。このことは、物質が太陽のごく近くで短時間のうちに秒速300 km以上まで加速されたことを示唆しています。
C2.0フレアにともなって噴出した物質は、その後7:24 UTに太陽観測衛星SOHO搭載のコロナグラフでコロナ質量放出 (CME) として観測されています (図3)。CMEカタログによると、このCMEは見かけの速さ秒速365 kmで噴き出ていて、Hα線の観測で求めた噴出物質の速さとほぼ同じでした。CMEを発生する活動領域が現れたことは、第25周期の活動の上昇を示すものです。
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2020年7月の太陽活動 バックナンバー
![]() 黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。前の太陽活動サイクルから今サイクルにかけての極小は、極小になった時の黒点相対数の値が特に小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、前回の太陽活動第23周期は平均よりも長く12年以上継続したサイクルになりました。 現在の太陽活動サイクルは第24周期にあたり、太陽全面で見ると2008年末から始まって2014年に極大を迎え、その後は現在まで減少を続けています。一方で南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。南半球の黒点相対数は2019年5月に0.04 (13カ月移動平均値) を記録した後徐々に増加していますが、北半球では今なお減少が続いています。太陽全体での黒点相対数は現時点でも安定した増加傾向を見せず、第24周期と次の第25周期の境界となる極小期はまだ確定していません。
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7月は、梅雨による天気不良が続いたため、黒点観測を実施できたのは9日間だけでした (白色光画像の7月のデータベースカレンダー)。黒点を確認したのは4日間で、黒点相対数の月平均値は9.00 (北半球 1.22、南半球 7.78) となりました。欠測が無いSILSO (※1) のデータでも月平均値 6.3 (北半球 2.2、南半球 4.1) となっており、南半球で安定して黒点が出現している一方で、北半球では無黒点の日も多くありました。太陽フレアの発生は非常に低調で、X線強度Bクラス以上のフレアは1回も観測されませんでした。この月に出現した活動領域はNOAA (※2) 12766~12768の3群で、NOAA 12766 (北緯5度) は第24周期に属する活動領域、NOAA 12767 (南緯21度) とNOAA 12768 (北緯25度) は第25周期に属する活動領域でした。中でも活動領域NOAA 12767は、真っ黒な暗部とそれと取り囲む薄暗い半暗部が明瞭な黒点 (図1) が10日間以上安定して見えていたことが注目されます。第25周期に属する活動領域でこのような黒点が見られるようになったのは最近のことで、6月に南半球に出現した活動領域NOAA 12765に続いて2例目です。図2の下段で、暗部の暗さが一定基準を満たした黒点の緯度分布を描いた図 (蝶形図) を示していますが、この図にも活動領域NOAA 12765と12767の2点が現れました。
黒点は、太陽活動周期の初め頃には南北の緯度20度以上に出現しますが、周期の中ほど (極大期) には緯度10~20度あたりに現れ、周期の終わりごろには赤道に近い場所で見られる規則性があります。図2で見せているように、黒点相対数の1つの山 (1つの活動周期) で蝶形図の “一羽のちょうちょ” が描けます。 太陽の表面下では、物質の対流と緯度によって速さが異なる太陽の自転 (差動回転) によって南北向きのグローバルな双極磁場が形成され、さらにそれをもとに黒点の元となる東西向きの磁場の束が作り出されている (ダイナモ機構) と考えられており、蝶形図に見られる黒点出現の規則性はこの機構を反映しています。蝶形図に南半球の高緯度黒点が現れたことは、第25周期の始まりの時期が近いこと、その活動が南北で同期せず南半球先行で進行していることを示唆しています [太陽活動周期の始まり・終わりの定義については2020年3月の太陽活動をご覧ください]。
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2020年6月の太陽活動 バックナンバー
![]() 黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。前の太陽活動サイクルから今サイクルにかけての極小は、極小になった時の黒点相対数の値が特に小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、前回の太陽活動第23周期は平均よりも長く12年以上継続したサイクルになりました。 現在の太陽活動サイクルは第24周期にあたり、太陽全面で見ると2008年末から始まって2014年に極大を迎え、その後は現在まで減少を続けています。一方で南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。南半球の黒点相対数は2019年5月に0.04 (13カ月移動平均値) を記録した後徐々に増加していますが、北半球では今なお減少が続いています。太陽全体での黒点相対数は現時点でも安定した増加傾向を見せず、第24周期と次の第25周期の境界となる極小期はまだ確定していません。
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6月は黒点観測を16日間実施し、このうち9日間で黒点を確認しました (白色光画像の6月のデータベースカレンダー)。この月に姿を現しNOAA (※1) が認定した活動領域はNOAA 12764・12765の2群です。どちらも第25周期に属する活動領域ですが、5月末に活発なフレア活動を見せたNOAA 12764では黒点は検出されず、一方NOAA 12765では複数の黒点が出現・消滅しつつ太陽の自転によって東の縁から西の縁へ移動していく様子がとらえられました。黒点相対数の月平均値は7.19 (北半球 0.00、南半球 7.19) で、2019年5月以来の高い値になりました。太陽フレアの発生は先月より落ち着き、NOAA のGOES (※2) 衛星による観測ではX線強度でCクラス以上のフレアは発生せず、Bクラスのフレアが12回確認されました。このうち、6月9日の 3:11 UT (日本標準時 12:11) に活動領域 NOAA 12765 (図1) で起こったB1.5 フレアを太陽フレア望遠鏡で観測できました。このフレアにともなって動くフィラメントがとらえられましたので紹介します。ムービーでは、フレア発生後からフィラメントが南 (画面の下方向) に向かって動いているのがわかります。よく見ると、B1.5フレアの発光点からフィラメントに向かってジェット [図2 (1) の破線で囲まれた部分] が噴出し、その後にフィラメント [図2 (2)・(3) の破線で囲まれた部分] が動き出しています。フレアとジェットによって、フィラメントを支えている磁場が不安定になり、急激な運動が引き起こされたものです。画像解析から、フィラメントの物質は秒速50 km程の速さで動いているとわかりました。これは彩層での音速 (秒速10 km) を大きく超えていて、フィラメントの運動として大変高速であることが注目されます。このときは南北方向の往復運動を見せただけで元に戻りましたが、このフィラメントはその後同日の18:17 UT (日本標準時 10日 3:17) 頃に噴出し、翌日の観測時には見えなくなっていました。
6月21日には、アフリカとアジアを通過する金環日食が起こり、日本では全国で部分日食が見られました。三鷹でも太陽フレア望遠鏡による観測と画像リアルタイム配信を計画していましたが、当日は天気不良で観測を行えませんでした。次回三鷹で観測できる日食は2030年6月1日の部分日食で、このとき北海道では金環日食が見られます。
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2020年5月の太陽活動 バックナンバー
![]() 黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。前の太陽活動サイクルから今サイクルにかけての極小は、極小になった時の黒点相対数の値が特に小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、前回の太陽活動第23周期は平均よりも長く12年以上継続したサイクルになりました。 現在の太陽活動サイクルは第24周期にあたり、太陽全面で見ると2008年末から始まって2014年に極大を迎え、その後は現在まで減少を続けています。一方で南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも次の極小に向かって黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。太陽全体での黒点相対数は現時点でも増加傾向を見せず、第24周期と次の第25周期の境界となる極小期はまだ確定していません。
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5月は黒点観測を20日間実施しましたが、黒点を見ることができたのはただ1日だけ (5月1日) でした (白色光画像の5月のデータベースカレンダー)。黒点相対数の月平均値は0.55 (北半球 0.00、南半球 0.55) となり、3月と同じで低調な黒点出現状況に戻りました。黒点出現が低調な一方で、太陽フレアの発生は目を引くものがありました。NOAA (※1) のGOES (※2) 衛星による観測では、5月はX線強度Bクラス以上のフレアが20回発生しました。このうち19回は27日から29日までの間に集中 (図1) していて、最大のものは29日の07:24 UTに太陽の北東の縁で起こったM1.1フレア (図2) でした。Mクラスフレアの発生は2017年10月20日以来で、およそ2年7カ月ぶりです。このときフレアを起こした活動領域はまだ太陽の裏側にあったため、上空の加熱された太陽コロナから放射されるX線ではフレアの増光が見えたのに対し、低高度の彩層が見えるHα線では07:24 UTより少し前に縁が小さく光ってわずかに物質が噴きあがる様子だけがとらえられました (図3)。多数のフレアを発生したこの領域は、6月初めにこちら側の半球に姿を現し、第25周期に属する活動領域と確認されました [NOAA AR 12764]。
5月に発生した20回のフレアを規模別に分類すると、大きな順からMクラス1回 (M1.1)、Cクラス2回 (C9.3、C1.0)、Bクラス17回となり、X線強度が小さいフレアほど発生数が多いことがわかります。フレアのエネルギーが小さくなると発生頻度が一定の比率で増えていくのですが、面白いことに太陽表面で起こっているBクラスフレアよりはるかに小さな突発増光から、他の恒星で見られる超巨大フレアに至るまで同じような傾向を示すことがわかっています。太陽などの恒星で起こるこれらの爆発的現象が、規模や星は違っても同じ物理機構で駆動されていることがうかがえます。
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2020年4月の太陽活動 バックナンバー
![]() 黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。前の太陽活動サイクルから今サイクルにかけての極小は、極小になった時の黒点相対数の値が特に小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、前回の太陽活動第23周期は平均よりも長く12年以上継続したサイクルになりました。 現在の太陽活動サイクルは第24周期にあたり、太陽全面で見ると2008年末から始まって2014年に極大を迎え、その後は現在まで減少を続けています。一方で南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも次の極小に向かって黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。太陽全体での黒点相対数は現時点でも増加傾向を見せず、今サイクルと次のサイクルの境界となる極小期はまだ確定していません。
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4月は黒点観測を23日間実施し、このうち7日間で黒点を確認しました (白色光画像の4月のデータベースカレンダー)。4月初めに活動領域 NOAA (※) 12759が見られたほか、25日以降に活動領域群 NOAA 12760・12761・12762が新たに出現しました。黒点相対数の月平均値は4.52 (北半球 1.52、南半球 3.00) となり、2月・3月の低調な活動から転じてやや活発な黒点出現状況でした。黒点出現の増加と併せて、太陽フレアも多く観測されました。4月はX線強度でB4.5を筆頭にBクラスのフレアが7回発生しましたが、このうち6回は活動領域NOAA 12759によるもの (残り1回はNOAA 12762で発生) でした。これらのフレアは、規模こそ小さいですが第25周期の活動領域で起きたフレアであり、太陽活動の高まりを示すものとして注目されます。三鷹の太陽フレア望遠鏡でも、活動領域NOAA 12759 (図1の白い四角枠内) で発生したフレアを観測できました。ここでは、4日に連続して発生した3例の観測を紹介します。ムービー1はB4.2フレア (00:54 UT) とB1.4フレア (01:36 UT) を撮影したもので、活動領域の東 (左) 側が光っています。ムービー2はNOAAフレアリスト未記載のA8.6増光現象 (03:11 UT) をとらえたもので、領域全体が発光し点状や筋状の構造も見えています。
X線強度と活動領域全体でのHα線の明るさを時系列グラフ (図2) にすると、3回のフレア・増光現象でのX線・Hα線の時間変化がよく似ていることがわかります。これは、フレアでX線を出す太陽コロナとHα線を出す彩層の双方が加熱されるからです。3つ目のA8.6増光現象は、ムービー2ではそれほど明るく見えませんが、発光面積が他の2例より大きいため (図2中段参照) Hα線積算値で一番強くなっています。A8.6増光現象がX線強度ではもっとも弱いのにHα線で増光が大きかったのは、フレアの広がりが大きいときには彩層が広く加熱されるために相対的にHα線で明るくなることがあるからです。
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2020年3月の太陽活動 バックナンバー
![]() 黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。前の太陽活動サイクルから今サイクルにかけての極小は、極小になった時の黒点相対数の値が特に小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、前回の太陽活動第23周期は平均よりも長く12年以上継続したサイクルになりました。 現在の太陽活動サイクルは第24周期にあたり、太陽全面で見ると2008年末から始まって2014年に極大を迎え、その後は現在まで減少を続けています。一方で南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも次の極小に向かって黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。太陽全体での黒点相対数は現時点でも増加傾向を見せず、今サイクルと次のサイクルの境界となる極小期はまだ確定していません。
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3月は黒点観測を20日間行うことができましたが、自動検出システムで黒点がとらえられたのは先月と同じく1日 (3月9日) だけでした (白色光画像の3月のデータベースカレンダー)。黒点相対数の月平均値は0.55で、南北別に見ると北半球 0.00、南半球 0.55となりました。2月から引き続いて低い活動水準を維持しています。一方NOAA (※) では、三鷹でも観測されたNOAA 12758 (南緯29度。図1) に加えてNOAA 12759 (北緯28度) を3月に出現した活動領域として認定しています。どちらも次の第25周期に属する高緯度群で、これで番号が付けられた第25周期の黒点群は9つとなりました。このように第25周期の黒点が安定して出現するようになっていますが、一方で第24周期に属する黒点も最近まで現れていて (2020年1月の太陽活動) 現在は第24・25周期両方の活動が見えています。それでは、どうやって第24周期の終わりと第25周期の始まりを決めるのでしょうか。これは、最も黒点数が少なくなった極小で定義します。ここで、この極小の決め方の説明をするために、1975年1月から2020年3月までの黒点相対数の変動グラフ (図2) を紹介します。図2では1か月ごとの黒点相対数の平均値 (月平均値) を黒線で描いていますが、この線はギザギザと変動していることがわかります。これではどこが極小かわからないので、月平均値の細かい変動をならした黒点相対数の13カ月移動平均値 (当該月とその前後各6か月の計13カ月分のデータに重みをつけて算出する) が用いられます。これは図2では赤線で描かれていて、この曲線の谷底が極小 (縦の破線) です。極小から次の極小まで (両矢印で示された期間) が、太陽活動の1周期になります。
最近の黒点活動の変化は図2の赤線の末端部分に示されていますが、まだ上昇する気配は見られませんので、第24周期と第25周期の境界となる極小は確定していません。第25周期が始まったことを確認するには、今後しばらくの黒点活動を見守る必要があります。
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2020年2月の太陽活動 バックナンバー
![]() 黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。前の太陽活動サイクルから今サイクルにかけての極小は、極小になった時の黒点相対数の値が特に小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、前回の太陽活動第23周期は平均よりも長く12年以上継続したサイクルになりました。 現在の太陽活動サイクルは第24周期にあたり、太陽全面で見ると2008年末から始まって2014年に極大を迎え、その後は現在まで減少を続けています。一方で南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも次の極小に向かって黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。太陽全体での黒点相対数は現時点でも増加傾向を見せず、今サイクルと次のサイクルの境界となる極小期はまだ確定していません。
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2月は新黒点望遠鏡による黒点観測を22日間実施できましたが、自動検出システムで黒点がとらえられたのはただ1日 (2月1日) だけでした (白色光画像の2月のデータベースカレンダー)。黒点相対数の月平均値は0.50で、南北別に見ると北半球 0.50、南半球 0.00となりました。黒点観測の中央局であるSILSO (※1) が発表している欠測のないデータでも、黒点が見られたのは2月1日だけで、この黒点は1月末に出現した活動領域NOAA (※2) 12757です。つまり、2月中に新たに出現した黒点は皆無でした。3つの活動領域が出現し昨年6月以来となる高い黒点相対数 (4.60) を記録した1月から一転して、極小期らしい活動状況でした。このように新しい黒点の出現はありませんでしたが、一方でプロミネンスはいくつも現れています。その中には目立った形状の変化を見せるものがあり、その様子が太陽フレア望遠鏡による観測でとらえられていますので、ここで2つの観測例を紹介します。1つ目は2月10日に太陽の南西の縁に見られたもので、図1の青い四角枠で囲まれた場所にあります。図2 は図1の青い四角枠の部分を切り出して拡大した図で、縁から飛び出た炎のようなプロミネンスと縁に近い太陽面に横たわる黒い筋状のフィラメントが写っています。この場所を連続撮影した画像をつなげて作成したムービー1では、プロミネンスの物質が動き回り6時間の間に大きく形を変えていくようすがわかります。
2つ目の観測例は、2月11日に南西の縁 (図3の青い四角枠で囲まれた場所) で見られたもので、10日の観測で見えていたフィラメントが自転により縁に移動してプロミネンスとして見えているものです。ムービー2を見ると、縁から飛び出たプロミネンスと縁近くの太陽面に見えるフィラメントが一続きのものであることがわかります。このようにプロミネンスとフィラメントは、同じものが違う見え方をしているものです (図4) 。
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2020年1月の太陽活動 バックナンバー
![]() 黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。前の太陽活動サイクルから今サイクルにかけての極小は、極小になった時の黒点相対数の値が特に小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、前回の太陽活動第23周期は平均よりも長く12年以上継続したサイクルになりました。 現在の太陽活動サイクルは第24周期にあたり、太陽全面で見ると2008年末から始まって2014年に極大を迎え、その後は現在まで減少を続けています。一方で南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも次の極小に向かって黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。太陽全体での黒点相対数は現時点でも増加傾向を見せず、今サイクルと次のサイクルの境界となる極小期はまだ確定していません。
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太陽活動は極小期で、1月にはフレアの発生はありませんでした。しかし、黒点観測を行った20日間のうち黒点が観測された日が8日間もありました (白色光画像の1月のデータベースカレンダー)。これは最近半年以上なかったことです。月平均黒点相対数は、三鷹の観測では全球で4.6、北半球が 2.4、南半球が2.2と、昨年6月以降では最大となっています。1月に現れてNOAA (※) による番号がついた黒点群は、NOAA 12755、12756、12757の3つでした。NOAA 12755 (図1) は、1月2日頃に南東リムに出現しました。1月2日頃に南東リムに出現した、緯度おおよそ35度の高緯度の黒点群です。太陽フレア望遠鏡の赤外マグネトグラフによる光球磁場観測では、磁場のS極 (図1の青い等高線) が西 (右)、N極 (赤い等高線) が東 (左) に見えています。一方、NOAA 12756 (図2) は、1月9日頃に北西リム緯度23度に出現したやや高緯度の黒点群で、こちらはN極が西 (図2の赤) ・S極が東 (青) となっています。これらは共に今までの黒点周期サイクル24の磁場の並びとは逆で、「次の周期には、前の周期とは磁場の極性が逆転する (天文学辞典) 」というヘール・ニコルソンの法則に従えば、これら黒点群は次の周期であるサイクル25の黒点と考えられます。 なお、北半球に出現したサイクル25の黒点で、NOAA番号が付いたものはNOAA 12756が2例目です。
一方、1月29日頃出現したNOAA 12757 (図3) は、北半球4度の低緯度のものでした。図3では、S極が西 (青) ・N極が東 (赤) となっており、出現緯度も合わせてサイクル24の黒点群と考えられます。この群は、半暗部が確認できるほどに成長しました。このようにサイクル24の黒点もまだ現れてはいますが、11月、12月に引き続きサイクル25の黒点群が出現を続けており、いよいよ新しいサイクルが立ち上がりつつあることがうかがえます。
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