2018年04月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線(黒)は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年に揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけての極小は、特に深い極小でまた時期も遅れました。現在の太陽活動サイクルは、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して、南半球は遅れて上昇し、2014年に極大を迎えました。その後、極小期に向かっていますが、北半球の黒点数がゆるやかに減少しているのに対し、南半球は無黒点日が増加するなど先行して急速に減少しており、前サイクルとは異なった様子を見せています。
→ 2018年の黒点相対数

4月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 4月の月別平均黒点相対数は5.26と、3月の0.48と比較すると上昇しました。南北半球別で見ると、北半球の月平均黒点相対数が3.53、南半球は1.74でした。4月の黒点観測日数19日のうち、無黒点観測日は11日でした(白色光画像の4月のデータベースカレンダー) 。

 今月の現象で特に注目されるのは、南半球に次の太陽活動周期(第25周期)のものと思われる黒点が出現したことです。図1は4月10日に撮影された太陽の白色光画像、図2は同じ日の磁場画像で磁場のN極・S極がそれぞれ白・黒で表されています。どちらの図でも、四角形でかこんだところに第25周期のものと思われる黒点があり、その位置は南緯30.6度、中央子午線からの経度差が東1.5度です。この黒点は、大きさによる分類の中では最小クラスであり、確認しやすいように以下に拡大写真も掲載します。

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 ある太陽活動周期に属する黒点は、周期のはじめには高い緯度に出現しますが時間の経過とともにだんだんと出現緯度が低くなっていき、周期の終わりごろには赤道近くで出現するようになります(シュペーラーの法則)。黒点は、N極とS極の磁場をペアで持っていることが多く、(1) ひとつの活動周期の中ではN極・S極の東西方向のならび方は南北半球ごとにだいたい決まっていて南北で逆になっている、(2) 新しい活動周期になるたびに南北両半球での磁極ならびの向きが反転する、という規則性があります(ヘール・ニコルソンの法則)。現在の太陽活動は第24周期にあたっていますが、黒点の出現緯度は赤道に近く、磁場の配置は北半球の黒点では西からS極-N極、南半球ではN極-S極の順になっています。その1例は4月19日に撮影された太陽の磁場画像 (図3) で、この時南半球に出ていた黒点は緯度が低く(南緯14.6度) 西から(画像右側から) N極-S極 (白-黒) という第24周期の磁場配置になっています。これらのことをふまえて4月10日に観測された黒点を見ると、出現緯度が南緯30.6度と高緯度であり、また図2の磁場画像に見られるように磁極が西から(画像右側から) S極-N極 (黒-白) のならびになっていて第24周期の南半球における配置とは逆になっています。これらの特徴から、4月10日の黒点は第25周期に属するものと考えられます。

 太陽活動周期はおよそ11年で入れ替わっていくので、次の周期の黒点が現れるのは時間の問題だったとも言えますが、興味深い点が二つあります。 ひとつは、第24周期が始まって9年余りで次の周期の黒点が現れたことです。第24周期は、その前の第23周期の黒点がほとんどなくなってからもなかなか始まらなかったので、第23周期は12年半ほどという異例の長さになりました。長い太陽活動期の次の活動期では黒点数が少なくなる、という傾向があり、実際第24周期は最近100年で最も黒点の少ない活動期となりました。今後このまま太陽黒点は減り続けるのではないかという説も出されましたが、第25周期の始まりが早く第24周期が短く終わってしまうということは、第25周期は活発な黒点活動が期待できるのでしょうか。ただ、太陽磁場の測定などからは活発化する兆候は見えないという意見もあり、第25周期の黒点活動は太陽の周期的活動を理解する重要なカギになりそうです。

 もうひとつは、この黒点が現れたのが南半球だったことです。黒点相対数の南北別変動グラフに見られるように、1960年代半ばの第20周期から現在の第24周期までは黒点の増減は北半球が先行し南半球が追随するという形でした。ただ、先行する半球は40~50年に入れ替わって来たと考えられるため、そろそろ南半球先行に変わってもおかしくありません。実際、2016年以降は南半球の方が黒点が少なくなっていて早く極小に近づいている可能性が見えていたので、この黒点も第25周期の活動が南半球で先に見えてきているのを示しているのかも知れません。もしそうだとすると、私たちは現代の進んだ観測機器を通して先行する半球の入れ替わりを今目の当たりにしていることになります。

 4月中に出現した黒点群は5群のみです。その中でも4月20日ごろに出現したNOAA12706(※1)は、4月26日の協定世界時1:36にGOES衛星(※2)が観測したX線強度でB1.3クラスの太陽フレアを起こしました。これは日本時間に直すと同日の10:36で、国立天文台の地上望遠鏡でもフレアによって明るく光るようすが観測されました(図4ムービー)。太陽フレア望遠鏡のHα線像で見ると、東西にプラージュと呼ばれる明るい領域が広がっており、フレアはその西端で起きました。その後にプラージュの北側でフィラメントの水平運動が見られます。
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※1 GOES: Geostationary Operational Environmental Satellite (米国 NOAAの観測衛星)
※2 NOAA: National Oceanic and Atmospheric Administration (米国海洋大気局。この機関によって、活動領域に番号が振られる。)
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図1. 2018年4月10日に撮影した太陽の白色光画像。黒い四角でかこんだところに第25周期のものと思われる黒点が写っている。横に書かれたアルファベットと数字は黒点の座標 (緯度, 中央子午線からの経度差) を表している。

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図2. 2018年4月10日に撮影した太陽の磁場画像。赤い四角は黒点がある場所、横に書かれたアルファベットと数字は黒点の座標を表している。磁場のN極・S極がそれぞれ白・黒で表され、第25周期のものと思われる黒点の磁場配置が見えている。

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図3. 2018年4月19日に撮影した太陽の磁場画像。青い四角は黒点がある場所、横に書かれたアルファベットと数字は黒点の座標を表している。現在 (第24周期) の黒点の磁場配置が見えている。

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図4. GOES Class B1.3 フレアを発生した活動領域 NOAA 12706。太陽フレア望遠鏡 Hα中心波長 (6563Å) で観測。
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