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国立天文台 太陽観測所

2016年12月の太陽活動 バックナンバー

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 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れました。現在の太陽活動は極大期を過ぎたところとなっています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでは北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して、南半球は遅れて上昇し、2014年に極大を迎えるという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2016年の黒点相対数

12月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 12月の平均黒点相対数は12.08でした。12月の太陽観測所の観測日は25日ありましたが、無黒点が報告された日が11日ありました。太陽の周期活動は本格的に極小期に入り始めている様です。南北半球別では、北半球が 5.52、南半球が6.56 でした。2016年の黒点相対数の時間発展を概観すると、2014年初頭に北半球から約2年半遅れでピークを迎えた南半球側の黒点相対数の急速な減衰が目立ちます(図1)。今活動周期の様に、後からピークを迎えた半球側の黒点相対数が先に減衰を示すのは稀で、記録によると、8周期前まで遡らなければ見当たりません。この際、それまで北半球先行であった黒点数変動が、次サイクルより南半球先行に変わりましたので、今サイクルまで既に 5サイクル続いた北半球先行が、次のサイクルでどの様になるか興味のあるところです。

 12月のフレアの発生数は、米国 NOAA GOES 衛星(※1, ※2)の観測結果によると、X線強度別に、Cクラスが5回、Mクラスが0回、Xクラスが0回でした。Cクラスのフレア5例は全て、活動領域 NOAA 12615 にて初旬に発生しました。先月末 (11/29) に、約3ヶ月半ぶりにMクラスのフレアを発生させた活動領域です。

 12月は黒点もフレアもほとんど出現がなく、目立った活動イベントの観測はありませんでした。代わりに、三鷹太陽フレア望遠鏡 Hα線撮像装置が観測した、ひと月間にまたがる、太陽彩層全面像の時間発展の概観のムービーを紹介いたします(ムービー)。今月の様に静穏な太陽では、太陽コロナ中の低温ガスの塊であるダークフィラメントが、活動領域やフレアによって乱されることがありません。この結果、ダークフィラメントは太陽表面の大域的な磁場分布の、正極と負極の境目に集まります (図2, 図3; 矢印の指し示す位置を比較)。

※1 NOAA: National Oceanic and Atmospheric Administration(米国海洋大気局。この機関によって、活動領域に番号が振られる。)
※2 GOES: Geostationary Operational Enviromental Satellite(米国の観測衛星)

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図1: 国立天文台太陽観測所にて観測した、太陽活動周期 8 サイクルにまたがる、南北半球別月平均黒点相対数の時間発展。色付きの各曲線は13ヶ月の移動平均を施した値。青線が北半球、赤線が南半球、緑線が全球での黒点相対数。

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図2(左):2016年12月25日に於けるダークフィラメントの分布。画像上方が太陽の北。主なダークフィラメントの位置に矢印を付ける。
三鷹太陽フレア望遠鏡 Hα線中心波長狭帯域フィルター像 (FWHM 0.25 Å)
図3(右):2016年12月25日に於ける光球面視線方向磁場強度分布。白が正極、黒が負極。画像上方が太陽の北。矢印は、図2と同じ位置を示す。
三鷹太陽フレア望遠鏡 近赤外偏光分光観測装置 Fe I 1564.8 nm Stokes V/I マグネトグラム
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国立天文台 太陽観測所

2016年11月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れました。現在の太陽活動は極大期を過ぎたところとなっています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでは北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して、南半球は遅れて上昇し、2014年に極大を迎えるという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2016年の黒点相対数

11月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 11月の平均黒点相対数は18.11と、先月に引き続き、今極大期の最大レベルである100付近の半分以下の低い値を示しました。ここ最近の最低の黒点相対数でもあります(これまでは2016年6月の19.60)。南北半球別では、 北半球が14.47、南半球が3.63でした。北半球が南半球の黒点数を大きく上回っています。これは2016年の初めから見られる傾向です。また、今月は黒点の観測されない日が3日ありました。

 11月のフレアの発生数は、米国NOAA GOES衛星の観測結果によると、X線強度別に、Cクラスが5回、Mクラスが1回、Xクラスが0回でした。11月に起きた最大のフレアは、活動領域 NOAA 12615で11月29日17:23UTに発生したM1.0クラスのフレアでした。日本時間にすると11月30日の2時23分なので日本では観測されませんでした。この領域は11月の終わりに出現し、それまで静かだった太陽が急に活発になりました。

 今月の太陽活動は全体的に静かだったのですが、太陽フレア望遠鏡では11月4日にフィラメント消失を観測しました。このフィラメントは11月4日に太陽の南西部の静穏領域に位置していました(図1の点線四角内)。図2図3は、図1の点線四角内を拡大したものです。左図が元画像で、右図がフィラメントの位置や大きさを実線で表しています。図2ではフィラメントは見えていますが。図3ではほとんど消失していることがわかります。ムービーにすると、画像中央にあるフィラメントの本体が3:00UT頃から徐々に広がりながら消えていくのがよくわかります。4:20UT頃にはすっかりフィラメントの本体はなくなりました。

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図1: 2016年11月4日のHα線全面像。点線四角内にフィラメント。
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図2: 2016年11月4日00:30:56UTのHα線拡大像。左図が元画像、右図がフィラメントの位置や大きさを実線で表示。画像中央部にフィラメント。
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図3: 2016年11月4日00:04:30UTのHα線拡大像。左図が元画像、右図がフィラメントの位置や大きさを実線で表示。図2で見えていたフィラメントがほとんど消失。
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図1の点線四角内をムービーにしたのがこちら

国立天文台 太陽観測所

2016年10月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れました。現在の太陽活動は極大期を過ぎたところとなっています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでは北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して、南半球は遅れて上昇し、2014年に極大を迎えるという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2016年の黒点相対数

10月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 10月の黒点相対数は23.06と9月の34.71よりも減少しました。 南北半球別では、北半球が19.00、南半球が4.06と、北半球の黒点数の方が卓越し、南半球の黒点出現が低い状態が続いています。 特に10月16日以降は南半球の黒点数はゼロが続きました。三鷹では天気が恵まれませんでしたが、SIDC(※)によると10月10日頃が黒点数が最も多かったようです。特に発達した黒点としては、NOAA12598とNOAA12599があげられます(図1)。

 10月の太陽フレア活動は、Cクラスフレアが4回起きただけで(最高でC4.4)、目立って大きいフレアは起こりませんでした。今年に入ってCクラス以上のフレアは320回起きていますが(10/31まで)これは2015年の2割程度でしかありません。最近になって急速に太陽フレア活動が落ちていることを表しています。ただ、日々のHαの画像に注目すると、興味深いプロミネンスやフィラメントが出現することがあります。ここでは、10月26日に観測されたプロミネンスを紹介します。この日は東西の縁にプロミネンスがにぎやかに出現しています(図2)。プロミネンスは太陽のコロナ中に浮かぶ低温(約1万度)のガスです。特に北西の縁のプロミネンスに注目してみましょう(図3)。短い時間では変化がないように見えますが、長時間観測して動画にするとその内部でガスが目まぐるしく運動している様子がわかります。この日は快晴で、午前9時から午後4時まで観測できました。そして、観測終盤ではプロミネンス本体が薄くなりながら上昇を始めている様子がわかります。
※ Solar Infruences Data Analysis Center

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図1: 2016年10月7日の白色光全面像。北半球中央部にあるのがNOAA12598。南半球のやや左側にあるのがNOAA12599。
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図2(左): 2016年10月26日のHα線の全面像。太陽の縁にプロミネンスが確認できる。
図2(右): 太陽画像北西部のプロミネンスの拡大像。(2016年10月26日02時00分09秒(世界時)) (静止画, 動画)

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2016年9月の太陽活動 バックナンバー

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 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れました。現在の太陽活動は極大期を過ぎたところとなっています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでは北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して、南半球は遅れて上昇し、2014年に極大を迎えるという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2016年の黒点相対数

9月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 9月の平均黒点相対数は34.71でした。南北半球別では、北半球が 29.07、南半球が5.64 でした。今年6月に急に値を落とした黒点相対数は、その後、北半球の活動性が黒点相対数にして2倍から3倍程度に持ち直し、この3ヶ月、同程度の値を推移しています。図1は 9月に出現した最も大きい黒点群 NOAA 12585 の様子です。北半球ではこの様に大きな黒点群もまだ単発的に出現しますが、全体としては、次の極小への途上にあります。

 9月のフレアの発生数は、米国 NOAA GOES 衛星(※1, ※2)の観測結果によると、X線強度別に、Cクラスが9回、Mクラスが0回、Xクラスが0回でした。Cクラス以上のフレアの総数は、今太陽活動周期のピーク以後、6月に初めて1桁を記録した後、7月、8月と、Mクラスのフレアを複数含む活発な活動を見せていたのでました。ところが、9月に入り、再びフレアの活動性が非常に低くなりました。

 最後に、太陽観測所フレア望遠鏡Hα観測装置が9月に観測した、比較的長大なダークフィラメントの、10日間にわたる成長の様子を紹介します。図2は、このダークフィラメントの9月1日での様子です。太陽の北半球側、東の縁付近に、北東から南西にかけて長く連なるダークフィラメントが見えます。このダークフィラメントが、太陽の自転に伴い見かけ上の位置を変え、太陽表面上を10日間かけて太陽の西の縁へと移動します(ムービー)。この間、ダークフィラメントが少しずつ太くなり、太陽表面からの高さも、少し高くなっていることが、見て取れます。ダークフィラメントの一部が、太陽の西の縁の上空に達すると、背景に比べて明るいプロミネンスとして見えるようになります。
※1 NOAA: National Oceanic and Atmospheric Administration(米国海洋大気局。この機関によって、活動領域に番号が振られる。)
※2 GOES: Geostationary Operational Enviromental Satellite(米国の観測衛星)

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図1: 2016年9月に出現した最も大きい黒点群 NOAA 12585。他の黒点群は小規模なものばかりであった。
(画像をクリックすると拡大されます。)

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図2: 2016年9月初旬に太陽の北半球に位置した比較的長大なダークフィラメントの10日間にわたる成長の様子(静止画動画):
三鷹太陽フレア望遠鏡 Hα線中心波長狭帯域フィルター像 (FWHM 0.25 Å)。図の上が太陽の北、左が太陽の東。 (画像をクリックすると動画再生されます。)

国立天文台 太陽観測所

2016年8月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れました。現在の太陽活動は極大期を過ぎたところとなっています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでは北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して、南半球は遅れて上昇し、2014年に極大を迎えるという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2016年の黒点相対数

8月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 8月の平均黒点相対数は42.05と、先月に引き続き、今極大期の最大レベルである100付近の半分以下の低い値を示しました。南北半球別では、 北半球が33.59、南半球が8.45でした。北半球の黒点相対数は2012年から30前後の値を保っています。一方、南半球の黒点相対数は北半球の1/3程度でずいぶんと小さな値を示しています。8月2日から8月4日にかけて黒点の観測されない日が3日ありました。その後、また黒点が出始めました。

 8月のフレアの発生数は、米国NOAA GOES衛星の観測結果によると、X線強度別に、Cクラスが17回、Mクラスが1回、Xクラスが0回でした。8月に起きた最大のフレアは、活動領域 NOAA 12543 (S15W88)で8月7日14:44UTに発生したM1.3クラスのフレアでした。日本時間にすると23時44分なので日本では観測されませんでした。

 8月の関東地方は晴天率が悪く一日中晴れる日が少なかったのですが、彩層プラズマのダイナミックな姿が見えた例がありましたので、紹介します。8月9日には東のリム近くに活動領域NOAA12573があり(図1)、さらにリム上空にはプロミネンスが見えていました(図2)。ムービーに見えているように、NOAA12573では、近くで起こったC8.9フレアに関連すると思われる急激な増光と南側へのプラズマ噴出が00:33-01:00(UT)の間に起っています。また東のリムのプロミネンスでは、リムに平行な大規模なガスの流れが見えるとともに、プロミネンスの南側の足と見られる場所ではサージが繰り返され、プロミネンスの中央辺りでも03:19-03:52(UT)間にジェット状の現象が見られます。翌日の8月10日は、このプロミネンスが上空へ噴出するのが観測されました(ムービー)。9日の大規模なガスの運動に励起された現象かもしれません。

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図1(左): 2016年8月9日のHα全面像と活動領域NOAA12573(点線四角内の明るい領域)(画像)
図2(右): 2016年8月9日に活動領域NOAA 12573で起きたフィラメント運動(画像ムービー)

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2016年7月の太陽活動 バックナンバー

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 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れました。現在の太陽活動は極大期を過ぎたところとなっています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでは北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して、南半球は遅れて上昇し、2014年に極大を迎えるという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2016年の黒点相対数

7月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 7月の黒点相対数は24.94と6月の19.60よりも増加しました。 南北半球別では、北半球が20.06、南半球が4.89と、北半球の黒点数の方が卓越し、南半球の黒点出現が低い状態が続いています。 7月10日から24日の間、北半球では、活動領域NOAA12565と12567が東西に隣接して出現し、発達しました(図1)。 これらの活動領域は、太陽フレア活動が活発で、NOAA12567では Mクラスフレアが7つ、 Cクラスフレアが 46個発生しました。NOAA12565でもCクラスが7個起きています。今年に入って、Mクラスが発生したのは4月以来のことです。X線強度が最大だったのは、7月23日5時(世界時、以下同様)に起きた M7.6フレアです。図2は7月23日から25日にかけてのX線強度変化です。
 ところが、7月は梅雨が長引いたこともあり、晴天率が悪く、Mクラスの太陽フレアはほとんど観測できませんでした。しかし、7月20日にNOAA12567で発生したC4.2フレアは観測することできました。このフレアはGOES衛星によると、03時08分にフレア開始となっていますが、太陽フレア望遠鏡では03時05分にはHα観測ではおなじみのフレアリボン構造が観測されています(図3・矢印、動画)。このあと、曇天で観測がとぎれますが、3時23分には東側で2ヶ所ほど輝いていることがわかります(図4・矢印)。フレアはNOAA12565と12567の間の磁気中性線付近で発生しており、NOAA12567がNOAA12565のすぐそばで急激に発達したことにより活発なフレア活動を起こした可能性があります。このあと小規模なフレア爆発を繰り返して、23-24日にはM7.6クラスを含む5つのMクラスフレアが起きることになります。

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図1(左): 2016年7月18日の活動領域NOAA12565と12567
図2(右): 2016年7月23日から25日にかけてのGOES衛星が観測したX線強度変化(NOAA/SWPC)(○はMクラスフレアを示す)

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図3(左): NOAA12567で起きたC4.2フレア(2016年7月20日03時05分56秒)、矢印はフレアリボン
図4(右): NOAA12567で起きたC4.2フレア(2016年7月20日03時23分57秒)、矢印の箇所で明るくなっている。
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国立天文台 太陽観測所

2016年6月の太陽活動 バックナンバー

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 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れました。現在の太陽活動は極大期を過ぎたところとなっています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでは北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して、南半球は遅れて上昇し、2014年に極大を迎えるという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2016年の黒点相対数

5月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 6月の平均黒点相対数は19.60でした。南北半球別では、北半球が 11.80、南半球が7.80 でした。南北半球共に、先月の半分以下の黒点相対数となりました。日毎で見ると、太陽観測所の6月の観測日数は15日間でしたが、このうち4日間が無黒点でした。太陽観測所の観測では、2014年7月17日以来の無黒点です。2014年7月より前の無黒点の観測は2011年8月15日でした。

 図1.a,図1.b は、それぞれ、2016年6月3日のほぼ同時刻に撮像された、太陽全面白色光像 (太陽光球像)、及び、太陽全面Hα中心波長像 (太陽彩層像)です。太陽光球では黒点が一つもなくのっぺらとしていますが、この場合でも、その上空の彩層では、プラージュ、フィラメント、プロミネンスといった構造があるのが見て取れます。

 6月のフレアの発生数は、米国 NOAA GOES 衛星(※1, ※2)の観測結果によると、X線強度別に、Cクラスが6回、Mクラスが0回、Xクラスが0回でした。Cクラス以上のフレアの総数が、今太陽活動周期のピーク以後初めて1桁を記録しました。黒点相対数とフレアの発生数が共にこのレベルまで低かったのは、2010年12月以来です。今サイクルの太陽活動が、2008~2009年の極小・2014年の極大の後、急速に次の極小へと向かっていることがわかります。

 最後に、太陽観測所フレア望遠鏡Hα観測装置が6月に捉えた活動イベントを紹介します。図2は、6月27日に太陽の東の縁の上空で発生したプロミネンス噴出です(ムービー)。図上、上が北、左が太陽の東に対応します。北から南へと噴出したプロミネンスが、回転するような運動を示しながら上昇を始めるのが見て取れます。このイベントは6月に観測できた唯一のダイナミカルな活動現象となりました。
※1 NOAA: National Oceanic and Atmospheric Administration(米国海洋大気局。この機関によって、活動領域に番号が振られる。)
※2 GOES: Geostationary Operational Enviromental Satellite(米国の観測衛星)

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図1.a(左): 2016年6月3日 三鷹新黒点望遠鏡 太陽全面白色光像 (太陽光球像): この日は無黒点であった。
図1.b(右): 図1.a とほぼ同時刻の 三鷹太陽フレア望遠鏡 太陽全面Hα中心波長像 (太陽彩層像):太陽光球面で無黒点でも、太陽彩層では、プラージュ、フィラメント、プロミネンスといった構造が見える。

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図2: 2016年6月27日に太陽の東の縁上空で発生したプロミネンス噴出(画像ムービー): 三鷹太陽フレア望遠鏡 Hα線中心波長狭帯域フィルター像 (FWHM 0.25 Å)

国立天文台 太陽観測所

2016年5月の太陽活動 バックナンバー

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 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れました。現在の太陽活動は極大期を過ぎたところとなっています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでは北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して、南半球は遅れて上昇し、2014年に極大を迎えるという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2016年の黒点相対数

5月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 5月の平均黒点相対数は46.05と、先月に引き続き、今極大期の最大レベルである100付近の半分程度の低い値を示しました。南北半球別では、 北半球が29.42、南半球が16.63でした。北半球の黒点相対数は2012年から30前後の値を保っています。一方、南半球の黒点相対数は2016年3月と4月は1桁と少なかったのですが、北半球の半分程度に回復しました。5月14日から5月26日にかけて南半球に巨大な暗部を持つ黒点(NOAA12546)が出現しました(図1)。4月に見えていた巨大黒点は北半球に出現していたので、回帰したものではないと考えられます。

 5月のフレアの発生数は、米国NOAA GOES衛星の観測結果によると、X線強度別に、Cクラスが12回、Mクラスが0回、Xクラスが0回でした。5月に起きた最大のフレアは、活動領域 NOAA 12543(N06W56)で5月14日11:34UTに発生したC8.4クラスのフレアでした。日本時間にすると20時34分なので日本では観測されませんでした。

 今回は、5月21日にNOAA 12546で起きたサージという現象を紹介します。図2はサージが運動した範囲を表しています。左の黒点を含む活動領域(白い部分)から噴き出したサージは四角で囲んだ右(西)に向かって運動しました。図3はこのサージを詳細に見た図です。図3(左)がHα線中心(6562.8Å)像、図3(右)が±0.8Åウィングの差分画像です。差分画像は赤い部分が遠ざかる方向、青い部分が近づいてくる方向の運動を表しています。

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図1:5月14日から5月26日にかけて出現した巨大黒点

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図2: 5月21日にNOAA 12546で起きたサージ(太陽全体図)

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図3: 5月21日にNOAA 12546で起きたサージ(拡大図) (画像動画)
(画像をクリックすると動画が再生されます)

国立天文台 太陽観測所

2016年4月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れました。現在の太陽活動は極大期を過ぎたところとなっています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでは北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して、南半球は遅れて上昇し、2014年に極大を迎えるという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2016年の黒点相対数

4月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 4月の黒点相対数は33.33と3月の36.70から減少しました。4月はほとんどの黒点が北半球に出現し、南半球は 4月22日に出現するまでは無黒点と低調でした。 4月25日以降は太陽全体で4-6群出現し、活発な様子を見せました。南半球の黒点相対数は、2014年初めにピークを迎えたあとは減少し、2011年にピークを迎えた北半球の黒点数がこの数ヶ月はその数を維持する状態が続いています。

 4月8日から18日にかけて、北半球に出現したNOAA12529が発達し、特に先行黒点(図1)の暗部が太陽画像上で目立っていました。フレア活動も活発で、 NOAA12529では、Cクラス28個、Mクラス1個のフレアが起きています。最も大きかったのは、4月18日の0時14分(以下、UT)に発生したM6.7クラスのフレアです(図2)。これは今年に入って初めてのMクラス後半のフレアとなりました (Xクラスはまだゼロ回)。0時15分に、黒点暗部の西側がフィラメント状にフレアを起こし、その後0時25分頃、暗部に接した箇所で急激に輝き、ツーリボン構造へと移行しています(図3,動画)。この暗部自体は磁場はN極ですが、西側にS極の磁場が存在しており、この磁気中性線上に蓄積されたエネルギーが解放されて、フレアが起こったと考えられます。
 なお、このあと、2時45分から2時55分にかけて西のリムでプロミネン噴出が発生しています。動画で見ると、小さなプロミネンスが約10分ほどで急速に上昇し、ループ状に噴出していることがわかります(図4,動画)。

(図1)2016年4月15日の太陽黒点画像。中央やや右上に活動領域NOAA12529が存在。

goes-xray-flux-6-hour.gif ha20160418_003059.jpg

図2(左): GOES衛星が観測した太陽フレアのX線強度変化
図3(右): 2016年4月18日に NOAA12529で起きたM6.7フレア
Hα線中心波長による強度マップ。(画像動画)
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図4:2016年4月18日に西のリムで起きたプロミネンス噴出
Hα線中心波長による強度マップ。太陽のディスク部分は塗りつぶしている。(画像動画)
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国立天文台 太陽観測所

2016年3月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れました。現在の太陽活動は極大期を過ぎたところとなっています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでは北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して、南半球は遅れて上昇し、2014年に極大を迎えるという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2016年の黒点相対数

3月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 3月の平均黒点相対数は36.7でした。南北半球別では、北半球が 28.5、南半球が8.2 でした。2014年初頭に今活動周期のピークを過ぎた黒点相対数は、ここ1年ほど50程度をベースに推移していたのですが、ここに来てさらに落ち始めたようです。

 3月のフレアの発生数は、米国 NOAA GOES 衛星(※1, ※2)の観測結果によると、X線強度別に、Cクラスが12回、Mクラスが0回、Xクラスが0回でした。全球での黒点相対数が減少に転じてからも、フレアの発生数で見るとまだしばらく活発だったのですが、3月に入り極端に発生数が減りました。エネルギーの大きなMクラス以上のイベントの月当たりの発生数が、今太陽活動周期のピーク以後、初めて0を記録しました。

 3月9日にはインドネシア付近にて皆既日食がありました。国立天文台からも2名が出張し観測を行いました。

(図1)2016年3月9日の皆既日食画像
(インドネシア・テルナテ島で観測)

 最後に、太陽観測所・太陽フレア望遠鏡・Hα観測装置が3月にとらえた活動現象を2例紹介します。図2は、3月17日に太陽の西の縁の向こう側で発生したプロミネンス噴出です(ムービー)。プロミネンスが自身のねじれを解く様な運動を見せながら、我々から遠ざかる方向に噴出していることがわかります。図3は、3月17日に太陽の中心より少し北東側で発生したフィラメント活動と呼ばれる現象です(ムービー)。図3Aにおいて、一面に淡く分布する明るい部分はプラージュと呼ばれる構造です。プラージュの上空に、ダークフィラメントと呼ばれる暗いガスの塊が覆い被さってます。このダークフィラメントの端に、ひときわ明るい小さな領域があります。浮上したばかりの新しい活動領域(後のNOAA 12525)です。この新しい浮上活動領域が、もともと安定していたダークフィラメントを触発し、フィラメントの噴出を含む活発な運動を見せはじめます。
※1 NOAA: National Oceanic and Atmospheric Administration(米国海洋大気局。この機関によって、活動領域に番号が振られる。)
※2 GOES: Geostationary Operational Enviromental Satellite(米国の気象観測衛星。太陽のX線放射もモニターしている。)

fig_20160317_0230_0330_PE.png 図2:2016年3月17日に太陽の西の縁の向こう側にて発生したプロミネンス噴出
A: Hα線中心波長狭帯域フィルター像 (FWHM 0.25 Å)
B: Hα±0.8Åドップラーグラム。赤が我々から遠ざかる方向、青が我々に近づく方向。
 ドップラーグラム作成の際、ディスクの内側と外側で異なる処理を施している。
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fig_20160317_0350_0630_FA.jpg

図3:2016年3月17日に太陽のディスク中心より少し北東側にて発生したフィラメント活動(部分的な噴出を含む)
A: Hα線中心波長狭帯域フィルター像 (FWHM 0.25 Å)
B: Hα±0.8Åドップラーグラム。赤が我々から遠ざかる方向、青が我々に近づく方向。
(画像をクリックすると動画が再生されます)

国立天文台 太陽観測所

2016年2月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れました。現在の太陽活動は極大期を過ぎたところとなっています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでは北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して、南半球は遅れて上昇し、2014年に極大を迎えるという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2016年の黒点相対数

2月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 2月の平均黒点相対数は51.67と、先月に引き続き、今極大期の最大レベルである100付近の半分程度の低い値を示しました。南北半球別では、北半球が34.71、南半球が16.95でした。北半球の黒点相対数は2012年から30前後の値を保っています。一方、南半球の黒点相対数は2014年をピークに減りつづけ、今月は先月に続いて南半球の黒点が北半球の半分程度になりました。

 2月のフレアの発生数は、米国NOAA GOES衛星の観測結果によると、X線強度別に、Cクラスが102回、Mクラスが4回、Xクラスが0回でした。2月に起きた最大のフレアは、活動領域 NOAA 12497(N13W25)で2月13日15:24UTに発生したM1.8クラスのフレアでした。日本時間にすると真夜中の0時24分なので日本では観測されませんでした。2月に起きたMクラスのフレアはすべて日本の夜の時間帯に起きたものでした。

 今回は2月28日にNOAA 12506の東側で起きたフィラメントの運動を紹介します。図1はフィラメントが運動した範囲を表しています。右上の活動領域(白い部分)から噴き出したフィラメントは四角で囲んだ左下に向かってほぼ対角線の方向へ運動しました。この対角線の距離は約60万kmあり、運動は約2時間程度でした。このフィラメントは水平方向におよそ秒速80kmで運動したことになります。図2はこのフィラメントを詳細に見た図です。上からHα線中心(6562.8Å)像、±0.5Åウィングの差分画像、±0.8Åウィングの差分画像です。差分画像は赤い部分が遠ざかる方向、青い部分が近づいてくる方向の運動を表しています。つまり、フィラメント中のガスは単に水平方向に動いているわけではなく、上下方向にも動きながら移動していることになります。

図1:Hα線の太陽全体像(2016年2月28日02:50UT)。四角で囲まれた領域でフィラメントの運動が観測された。
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ha20160228_012058.jpg

図2:フィラメントの拡大図(2016年2月28日01:20:58UT) (上)Hα線中心(6562.8Å)像、(中)±0.5Åウィングの差分画像、(下)±0.8Åウィングの差分画像。 (画像動画)
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国立天文台 太陽観測所

2016年1月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れました。現在の太陽活動は極大期を過ぎたところとなっています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでは北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して、南半球は遅れて上昇し、2014年に極大を迎えるという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2016年の黒点相対数

1月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 1月の黒点相対数は44.48と、昨年12月の42.14から少し増加しました。 1月前半は北半球が優勢で、特に1月9日前後に黒点数が増加しています。 1月10日の黒点画像を見ると、NOAA12480とNOAA12482のそれぞれが赤道近くで双極群を形成しています(図1)。 逆に南半球は黒点活動が低調で、1月11日から17日にかけて、黒点数が0の日が続きました。特にNOAA12480では大きな黒点が赤道近くに現れていて、黒点の発生が低緯度に偏る太陽活動サイクル終盤が近いことを伺わせます。

1月の太陽フレアの発生数は、米国NOAA(※1) GOES衛星(※)の観測結果によると、 X線強度別に、Cクラス28個、Mクラス1個、Xクラス0個と非常に低調でした (12月はCクラスが95回、Mクラスが6回)。唯一のMクラスフレアが、1月2日に観測されたM2.3フレアで、これはNOAA12473で発生しました(図2,ムービー)。NOAA12473は12月下旬にフレア活動が高かった領域で、「2015年12月の太陽活動」の記事でも紹介しています。今回は、西の縁の手前で発生しており、長いツーリボン構造(a)が特徴です。1時17分頃(世界時)にはツーリボンをつなぐようなループ構造(b)が見えます。縁の向こう側でも明るい構造が変化しており、フレアと関係しているのかもしれません。1月5日には南西の縁でプロミネンス噴出が起こっています(図3(左),ムービー)。 2時50分(世界時)からプロミネンスの上昇が始まり、1時間ほどで高さが最大に達しています。そのあとはプロミネンスの大部分が吹き飛んでしまい、 4時30分頃(世界時)には現象が収まっていました。ドップラーグラムによると、プロミネンスが当初手前側(われわれに近づく方向)に吹き飛んで、そのあと縁の向こう側に落下している様子がわかります(図3(右),ムービー)。NOAA12473が西側の裏側に移動したあとに発生しているので、この活動領域が現象に関係しているのかもしれません。

※1 NOAA: National Oceanic and Atmospheric Administration(米国海洋大気局。この機関によって、活動領域に番号が振られる。)
※2 GOES: Geostationary Operational Enviromental Satellite(米国の観測衛星)

図1: 2016年1月10日の太陽黒点画像。NOAA12480,12482など北半球に黒点群が出現している。
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ha20160102_011739.jpg

図2: 2016年1月2日にNOAA12473で起きたM2.3フレア
Hα線中心波長による強度マップ。(画像動画)
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ha20160105_033343.jpg dp20160105_033349.jpg

図3:2016年1月5日に南西の縁で起きたプロミネンスの噴出現象
(左)はHα線中心波長による強度マップ。(画像動画)
(右)はHα線ドップラーグラム(±0.8 Å)。(画像動画)
(画像をクリックするとムービーが再生されます。)
プロミネンスの部分で、白色が我々から遠ざかる方向、黒色が我々に近づく方向に運動。

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