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国立天文台 太陽観測所

2015年12月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れましたが、現在は太陽活動は極大期を迎えています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでは北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して、南半球は遅れて上昇し、2014年に極大を迎えるという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2015年の黒点相対数

12月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 12月の平均黒点相対数は42.92でした。南北半球別では、北半球が 18.04、南半球が24.88 でした。黒点相対数は2014年初頭にピークとなりましたが、2015年2月以降は両半球とも相対数が50を超えることはなくなり、太陽全球にわたり黒点相対数が減少期に入ったと言えそうです。

 12月のフレアの発生数は、米国 NOAA GOES 衛星(※1, ※2)の観測結果によると、X線強度別に、Cクラスが95回、Mクラスが6回、Xクラスが0回でした。全球での黒点相対数が減少に転じてからも、しばらくは活発であったフレアの発生数も、10月頃より目に見えて落ち始め、特にエネルギーの大きなMクラス以上のイベントの発生数の減少が目立ちます。12月に比較的フレアの活発であった活動領域として、NOAA 12473 (Cクラス27, Mクラス4; 図1左) 、NOAA 12472 (Cクラス18, Mクラス2; 図1左) 、及び、NOAA 12470 (近傍の NOAA 12469 と共に Cクラス17; 図1右)をあげておきます。

 最後に、太陽観測所フレア望遠鏡Hα観測装置が12月に捉えた印象的なフレア 2例を紹介します。図2は、12月24日に活動領域NOAA 12473 にて発生した GOES Class M1.1 のフレア(ムービー)。図3は、12月18日に活動領域NOAA 12469 と 12470 の間にて発生した GOES Class C4.6 のフレア(ムービー)です。フレア発生の際、太陽彩層にてしばしば観測される「フレアリボン」と呼ばれる増光の発展がよく見えます。フレアリボンは、活動領域上空を繋ぐフレアに関与した磁力線群の足元にペアで現れることがわかっています。12月18日のイベントでは、磁場の強い黒点の近くと磁場の弱いより外側の領域で、大きさのかなり異なるフレアリボンが現れているのが見てとれます。

※1 NOAA: National Oceanic and Atmospheric Administration(米国海洋大気局。この機関によって、活動領域に番号が振られる。)
※2 GOES: Geostationary Operational Enviromental Satellite(米国の観測衛星)

図1(左): 2015年12月にもっともフレアが活発であった太陽活動領域 NOAA 12473、及び NOAA 12472
図1(右): エネルギーの大きなフレアは起こさなかったものの、12月に出現した太陽活動領域の中では規模の大きかった NOAA 12470: (画像をクリックすると拡大されます)

fig_20151224_M11flare.png

図2: 2015年12月24日にNOAA 12473 にて発生したMクラスフレア
Hα線中心波長狭帯域フィルター像 (FWHM 0.25 Å)
(画像をクリックするとムービーが再生されます。)

fig3_20151104.png

図3:2015年12月18日にNOAA 12469 と NOAA 12470 の間にて発生したCクラスフレア
 Hα線中心波長狭帯域フィルター像 (FWHM 0.25 Å)
(画像をクリックするとムービーが再生されます。)

国立天文台 太陽観測所

2015年11月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れましたが、現在は太陽活動は極大期を迎えています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでは北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して、南半球は遅れて上昇し、2014年に極大を迎えるという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2015年の黒点相対数

10月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 11月の平均黒点相対数は51.22と、先月の48.62よりは少し高い値を示しました。南北半球別では、北半球が46.89、南半球が4.33でした。今月は北半球に多くの黒点群が出現したため、全体の相対数を引き上げています。一方、南半球は中旬にいくつかの黒点群が出現したものの黒点のない状態の日も多かったので、月平均の相対数はかなり低い値になりました。

 11月のフレアの発生数は、米国NOAA GOES衛星の観測結果によると、X線強度別に、Cクラスが71回、Mクラスが4回、Xクラスが0回でした。特に前月から今月上旬にかけて太陽面上に存在したNOAA 12443と12445(図1)は多くのフレアを起こしました。一方、南半球に存在した数少ない活動領域の一つNOAA 12449(図1)も活発な領域で、11月9日13:12UTにピークを迎えたM3.9の大きなフレアを起こしました。これが11月に起こった最大のフレアでした。

 図2は、これら活動領域のひとつ(NOAA12445)で起こり、11月4日03:25UTにピークを迎えたM1.9のフレアです。四角で囲んだ領域で起こりました。図3は、このフレアに伴って起きた噴出現象のムービーです。左からHα線中心(6562.8Å)像、-0.5Åの像で、一番右はHα線中心像と-0.5Åの像を重ねて表示しています。真ん中と一番右のムービーは見やすくするために-0.5Åをネガで青色で表示していて、こちらに向かって噴出している現象が見えています。

図1: 11月に出現した黒点群NOAA12443・12445・12449(3日分を合成したもの。括弧内に三鷹での観測日を表記)
(画像をクリックすると拡大されます)

図2: 11月4日のM1.9フレアの太陽全面像(左:可視光、右:Hα線)
(画像をクリックすると拡大されます)

fig3_20151104.png

図3:フレアにともなって発生した噴出現象
 (左)Hα線中心(6562.8Å)像
 (中)Hα線-0.5Åの画像
 (右)Hα線中心像と-0.5Åの像を重ねたもの。
(画像をクリックすると動画が再生されます。)

国立天文台 太陽観測所

2015年10月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れましたが、現在は太陽活動は極大期を迎えています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでは北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して、南半球は遅れて上昇し、2014年に極大を迎えるという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2015年の黒点相対数

10月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 10月の黒点相対数は46.22と、9月の58.14から減少しました。10月前半は特に低調で、 黒点相対数が11(1群1個)という日もありました。後半はNOAA12434と12436が発達 して、最大で80まで盛り返しました。 NOAA12436は東西に黒点が発達した双極群構造で、10月18日から28日の間、太陽面で見ることができました(図1)。

 太陽フレア活動は、GOES衛星のX線強度別に、Cクラスが100回、Mクラスが9回、Xクラスは0回でした。Cクラス以上のフレアの数は、9月より減少しています。Mクラス9個のうち5つはNOAA12422で起きました。これは9月下旬からフレア活動が活発だった活動領域で、9月23日以来、Mクラス18個、Cクラス62個起きています。10月1日にM4.5、2日にM5.5フレアが発生しています(図2)。10月13日から出現したNOAA12434では Mクラスが2個、Cクラスが40個発生し、活発な活動領域でした。しかし、ただ、時間帯や天候事情で、目立った太陽フレアは観測できませんでした。

 10月19日にはプロミネンス噴出現象が観測されました。太陽の南東の縁に見えていたプロミネンスが1時間ほどで噴出したものです(図3, 動画)。動画の前半では(a)のプロミネンス全体がねじれながら少しずつ上昇し、プロミネンス物質が上方に噴出、その一部が落下しているのがわかります。動画の後半では高さの低い(b)のプロミネンスが手前に向かって落下している様子がわかります。

図1: 2015年10月24日の黒点画像に、18日・20日・22日・26日のNOAA12434(南半球),12436(北半球)の黒点を重ねたもの。
(画像をクリックすると拡大されます)

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図2:(左)2015年10月2日の黒点画像に、9月28日・30日のNOAA12422(南半球),12427(北半球)の黒点を重ねたもの。
(右)2015年10月2日のHα画像。
(画像をクリックすると拡大されます)

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図3:2015年10月19日に太陽の東の縁にて発生したプロミネンス噴出
(左)はHα線中心波長による強度マップ。(画像動画)
(右)はHα線ドップラーグラム(±0.8 Å)。(画像動画)
プロミネンスの部分で、白色が我々から遠ざかる方向、黒色が我々に近づく方向。
(画像をクリックするとムービーが再生します)

国立天文台 太陽観測所

2015年09月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れましたが、現在は太陽活動は極大期を迎えています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでは北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して、南半球は遅れて上昇し、2014年に極大を迎えるという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2015年の黒点相対数

9月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 9月の平均黒点相対数は58.1でした。今年1月まで今極大期の最大レベルの9割程度を維持していた黒点相対数は、その後減少に転じ、ここ数ヶ月は極大期の5割程度の数値を推移しています。南北半球別では、北半球が 25.0、南半球が33.1 でした。時期別で見ると、初旬では黒点相対数が30前後まで落ち込んだのですが、中旬に入って盛り返し、下旬には大規模で複雑な活動領域NOAA12422 が出現しました。

 9月のフレアの発生数は、米国NOAAのGOES衛星(※1, ※2)の観測結果によると、X線強度別に、Cクラスが97回、Mクラスが20回、Xクラスが0回でした。フレアの総数に比べてMクラスの発生数が目立ちます。9月はCクラス以上のフレアを発生させた活動領域の数が少なく(8例)、一方で、下旬に出現した活動領域NOAA12422 (Cクラス39, Mクラス13; 図1) が、全体の数値を押し上げたためです。9月26日までのフレアの発生数は、Cクラスが55回、Mクラスが3回と、むしろ低調でした。

 太陽観測所の太陽フレア望遠鏡が9月に観測した印象的な活動現象を2例紹介します。図2は、9月28日に活動領域NOAA12423にて発生した、GOESクラスM3.6のフレアと、同時に発生したフィラメント噴出です (ムービー)。NOAA12423は、構成する個々の黒点は小規模なのですが、群としては複雑で、かつ、太陽の大域的な表面磁場分布の正極と負極の境界に浮上しました。この境界に既に成長していた大規模なダークフィラメントと干渉し、Mクラスのフレアを複数回起こします。紹介のフレアではダークフィラメントの一部のみの噴出ですが、2日後、9月30日の観測終了後に、全体が噴出します。最後にもう一例、別の領域ですが、9月28日に太陽の東の縁にて発生した大規模なプロミネンス噴出を紹介します(図3, ムービー)。

※1 NOAA: National Oceanic and Atmospheric Administration(米国海洋大気局。この機関によって、活動領域に番号が振られる。)
※2 GOES: Geostationary Operational Enviromental Satellite(米国の観測衛星)

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図1: フレアが非常に活発で、大規模で複雑な形状を持つ太陽活動領域 NOAA 12422、及び、Mクラスのフレアを4例起こした NOAA 12423。(左) 両活動領域浮上時の様子。(右) フレア頻発時での様子。5日間で急速に発展したことがわかる。(クリックすると画像が拡大します)

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図2:2015年9月28日にNOAA12423にて発生したMクラスのフレアとフィラメント噴出(プロミネンス噴出)。
(画像をクリックするとムービーが再生します)
A: Hα線中心波長狭帯域フィルター像 (FWHM 0.25 Å)
B: Hα±0.8Åドップラーグラム。ドップラー速度の信号が赤・青で表されている。太陽の縁の内外で異なる処理を施している。

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図3:2015年9月28日に太陽の東の縁にて発生した大規模なプロミネンス噴出
(画像をクリックするとムービーが再生します)
A: Hα線中心波長狭帯域フィルター像 (FWHM 0.25 Å),
B: Hα±0.8Åドップラーグラム。ドップラー速度の信号が赤・青で表されている。太陽の縁の内外で異なる処理を施している。

国立天文台 太陽観測所

2015年08月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れましたが、現在は太陽活動は極大期を迎えています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでは北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して、南半球は遅れて上昇し、2014年に極大を迎えるという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2015年の黒点相対数

8月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 8月の平均黒点相対数は48.26と、先月の47.83とほぼ変わらない数字を示しました。南北半球別では、北半球が26.26、南半球が22.00でした。北半球では、2011年後半にピークを迎えましたが、最近の相対数は20-40程度 の値で安定しています。南半球は遅れて2014年初頭にピークを迎え、活動が高い状態が続きましたが、最近になって北半球と同じ程度に低下してきました。8月後半には、南半球にNOAA12403という東西方向に発達した黒点群が出現しました(図1)。

 8月のフレアの発生数は、米国NOAA GOES衛星の観測結果によると、X線強度別に、Cクラスが119回、Mクラスが11回、Xクラスが0回でした。このうち、活動領域NOAA12403ではCクラスが85回、Mクラスが11回起きました。Xクラスフレアこそ起きませんでしたが、最近ではフレア活動の高い活動領域で、9月1日まで観測されました。その中で最大の太陽フレアが8月24日07:35UTに西半球で発生したM5.6のフレアでした。日本時間にすると夕方16:35で曇っていましたが、このMクラスのフレアの最後の部分を観測することができました。この時、フレア発生にともなって大きな噴出現象が見られました。

 図2は8月24日08:03UTのMクラスフレア後の太陽全体像です。四角で囲んだ領域で起こりました。図3はこの活動領域(NOAA 12403)でフレア後に起きた噴出現象です。左からHα線中心(6562.8Å)像、±0.5Åウィングの差分画像です。差分画像は黒い部分が遠ざかる方向、白い部分が近づいてくる方向の運動を表しています。

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図1:2015年8月19日(左)、22日(中)、27日(右)のNOAA12403の黒点画像

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図2:Hα線の太陽全体像(2015年8月24日08:03UT)。四角で囲まれた領域でM5.6のフレアが起きた。

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図3:Hα線中心(6562.8Å)像(左)、±0.5Åウィングの差分画像 (右)

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2015年07月の太陽活動 バックナンバー

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 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れましたが、現在は太陽活動は極大期を迎えています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでは北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して、南半球は遅れて上昇し、2014年に極大を迎えるという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2015年の黒点相対数

7月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 7月の黒点相対数は47.83と、6月の56.38から減少しました。7月前半は梅雨の影響で9日まで観測ができませんでしたが、この間、黒点がたくさん出現していたようです。10日の黒点画像(図1)では7群の黒点群が出現しており、その一端を見ることができます。逆に7月20-24日は南半球の黒点数が0になり、南半球の活動が低調でしたが、25日に黒点が出現してやや盛り返しました。

太陽フレア活動も低調でした。7月はCクラス以上のフレアが46個(Cクラス43,M3クラス3,Xクラス0)起きていますが、6月の223個(Cクラス141,Mクラス12,Xクラス0)と比べるとかなり減少しました。この中で活動領域NOAA12381(図1)はM2個,C16個のフレアが起きるなど、フレア活動がやや活発な活動領域でした。NOAA12381は7月4日に急速に発達し、東西に並んだ双極群の形をしているのが特徴です。

プロミネンス・フィラメント関係の活動現象がいくつか観測されています。まず、7月11日には北西のリムに見えていたプロミネンスの噴出現象が発生しました(図2)。図2の赤い矢印で示したプロミネンスの明るい部分に注目して動画で見ると、1時間ほどの間にプロミネンスの構造が劇的に変わって、次第に消失していく様子がわかります。 7月19日2時20分(世界時)には、北西の静穏領域に存在したフィラメント(図3, 動画)の消失が観測されています。SDO衛星の観測によると、このフィラメント上空では噴出現象が起きていました。そのあと4時00分(世界時)頃にも南西のリム近くでフィラメントが噴出しています(図4)。図4の矢印で示した明るい領域付近が、動画で見ると、何か明るいフィラメント状の構造が噴出している様子がわかります。さらに、ドップラーグラムの動画を見ると激しくガスの流れが生じていることがわかります。 

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図1:7月10日の太陽黒点画像。北半球にNOAA12381が存在。双極群の構造をしている。

(画像をクリックすると画像が拡大されて表示されます。)

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図2:7月11日に北西のリムで起きたプロミネンス噴出
(左)3時00分03秒(世界時) 静止画 動画
(右)3時50分13秒(世界時) 静止画

(画像をクリックすると動画が再生されます。)

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(左)図3:7月19日1時頃(世界時)に北西の静穏領域で起きたフィラメント消失。矢印のフィラメントが消失。
静止画 動画
(右)図4:7月19日4時20分(世界時)に南西の静穏領域で起きたフィラメント噴出。
静止画 動画(強度マップ) 動画(ドップラーグラム)

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国立天文台 太陽観測所

2015年06月の太陽活動 バックナンバー

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 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れましたが、現在は太陽活動は極大期を迎えています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでは北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して、南半球は遅れて上昇し、2014年に極大を迎えるという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2015年の黒点相対数

6月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 6月の平均黒点相対数は56.4でした。今極大期の最大レベル100付近に対し、40% 程度低い値の周りを 5ヶ月続けて推移しています。南北半球別では、北半球が 33.1、南半球が22.3 でした。北半球より遅れて2014年初頭にピークをつけた南半球の黒点相対数は、今年に入って減少の傾向が続いています。

 6月のフレアの発生数は、米国 NOAA GOES 衛星(※1, ※2)の観測結果によると、X線強度別に、Cクラスが141回、Mクラスが12回、Xクラスが0回でした。このうち、全フレアの 8割弱、Mクラス以上のフレアでは 12例中11例が、フレアの活発な3つの活動領域 NOAA 12360 (Cクラス31, Mクラス2)、12367 (Cクラス34, Mクラス3)(図1・左)、及び 12371 (Cクラス39, Mクラス6) (図1・右) にて発生しました。NOAA 12371 にて6月21日に発生した Mクラスのフレアに伴うコロナ質量放出は、地球に大きな磁気嵐を引き起こし、6月23日には北海道でオーロラが観測されました。

 6月は天候が悪く、残念ながら上記フレアの観測は出来ませんでしたが、太陽フレア望遠鏡が6月15日に観測した、規模が大きく印象的なサージ(太陽彩層で観測されるジェット様構造)を紹介します(図2ムービー)。このサージは、太陽の北西の縁の向こう側へと回り込んだ NOAA 12360 上空にて発生したようです。そのため、一般にサージの足下にて観測されるフレアが、このイベントでは太陽の縁に隠されて見えません。

 この7月1日に、ベルギー王立天文台のSILSO (※3) が、新しい基準値と評価に基づく過去300年分の黒点相対数の標準値を公開いたしました。比較のため、新旧の標準値と、国立天文台観測の黒点相対数の観測結果をプロットしたものを図3に示します。

※1 NOAA: National Oceanic and Atmospheric Administration(米国海洋大気局。この機関によって、活動領域に番号が振られる。)
※2 GOES: Geostationary Operational Enviromental Satellite(米国の観測衛星)
※3 SILSO: Sunspot Index and Longterm Solar Observations(黒点相対数の観測結果を収集し、その標準値を策定している機関。)

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図1:2015年6月に活発であった3つの太陽活動領域 NOAA 12360, 12367(左), 及び 12371(右)

(画像をクリックすると画像が拡大されて表示されます。)

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図2:太陽の北西の縁にて発生した大規模なサージ(ジェット様構造)
A: Hα線中心波長狭帯域フィルター像 (FWHM 0.25 Å)
B: Hα±0.8Åドップラーグラム。赤が我々から遠ざかる方向、青が我々に近づく方向

(画像をクリックすると動画が再生されます。)

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図3: SILSO より2015年7月1日付けで公開された、新しい基準値と評価に基づく過去300年分の黒点相対数の標準値(赤線)、改定前の黒点相対数の標準値(緑線)、及び、国立天文台観測の黒点相対数(黒線: スケールは旧標準基準値に基づく)

国立天文台 太陽観測所

2015年05月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れましたが、現在は太陽活動は極大期を迎えています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでは北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して、南半球は遅れて上昇し、2014年に極大を迎えるという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2015年の黒点相対数

5月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 5月の平均黒点相対数は70.17と、先月に引き続き、今極大期の最大レベルである100付近より40% 程度低い値を示しました。南北半球別では、北半球が33.79、南半球が36.38でした。北半球では、2011年後半にピークを迎えましたが、それ以後の相対数は20-40程度の値で安定しています。南半球は遅れて2014年初頭にピークを迎えましたが、減少し始めたようです。
 5月のフレアの発生数は、米国NOAA GOES衛星の観測結果によると、X線強度別に、Bクラスが44回、Cクラスが114回、Mクラスが5回、Xクラスが1回でした。5月のフレアで、最大のものは活動領域 NOAA 12339で5月5日22:11UTに東リムで発生したX2.7のフレアでした。日本時間にすると朝7:11で観測が始まっていませんでしたが、観測開始時には名残が見え、この領域付近で噴出現象が頻繁に見られました。このフレアの後もこの領域は高いアクティビティを保ちつつ5月15日ごろまで観測されました。Xクラスフレアは昨年は16回起きたのに、今年はこのフレアでやっと2回目のXクラスのフレアです。フレア活動も下降期に入ったのかも知れません。図1は5月13日にこの活動領域(NOAA 12339)で起きたフレアと噴出現象です。
 5月後半には南北半球にそれぞれ長く横たわる静穏型フィラメントが出現しました(図2ムービー)。これらのフィラメントは5月20日頃に東のリムにプロミネンスとして出現したものが太陽の自転とともに太陽面上にフィラメントとして見えるようになりました。6月の初めには西のリムで再びプロミネンスとして観測されるようになるでしょう。 Ha_thumb.png

図1: 5月13日のHa線太陽全面像。5月5日にXクラスフレアを起こしたNOAA 12339は北緯14度西経33度(矢印)に位置し、このムービーでは何度もこちらに向かって噴出する現象が見られます。
(拡大画像は左からHα線波長中心、+0.5Å、-0.5Å。)

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図2: 太陽面を移動する静穏型フィラメントの様子。矢印の白線で囲んだ領域に大きなフィラメント(プロミネンス)が見えます。

(画像をクリックすると動画が再生されます。)
国立天文台 太陽観測所

2015年04月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れましたが、現在は太陽活動は極大期を迎えています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでは北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して、南半球は遅れて上昇し、2014年に極大を迎えるという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2015年の黒点相対数

4月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

4月の黒点相対数は67.5と、3月の60.50からやや増加しました。昨年は南半球の黒点数が優勢でしたが、これは太陽極大期の2つ目のピークの特徴で、過去の活動期にもよく見られた傾向です。ところが、4月は北半球40.9・南半球26.6と北半球の黒点数が優勢となりました。特に4月12日から北東のリムから、 NOAA12321, 12323, 12324と次々に複雑な磁場構造をした黒点が出現し、北半球の黒点群が増加する一因となっています(図1)。
 黒点数こそ3月より増加していますが、太陽フレア活動は低調でした。4月はCクラス以上のフレアが118個(Cクラス107回,Mクラス11回,Xクラス0回)起きていますが、3月の223個(Cクラス194回,Mクラス28回,Xクラス1回)からかなり減少しました。フレア活動が目立った活動領域は、NOAA12322です。これは太陽面ではそれほど大きい領域ではありませんでしたが、西のリムに達してから7個のMクラスフレア、6個のCクラスフレアを起こしました(図2)。今月、もっとも大きかったフレアは、4月21日にこのNOAA12322で起きたM4.0フレアでした。
 4月22日から北東のリムに大きなプロミネンスが見えています(図3,a)。25日以降は太陽の自転とともに、フィラメントとして太陽の前面に28日まで見えていましたが(図3,b,c)、29日の観測では消えてなくなっていました(図3,d)。どうやら日本が夜の時間帯に、フィラメントが上昇して噴出してしまったようです。なお。プロミネンスは大局的には安定した構造のように見えますが、連続観測すると、実は内部で激しい運動をしていることがわかります。(動画)

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図1: 2015年4月15日の活動領域 NOAA12321, 12323, 12324

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図2: 活動領域 NOAA12322で起きたフレアのX線強度変化

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図3: 4月下旬に出現したプロミネンスとフィラメント、太陽フレア望遠鏡のHα線で観測
(a) 2015年4月24日 00時15分48秒(世界時)
(b) 2015年4月26日 02時47分30秒(世界時)
(c) 2015年4月28日 00時02分24秒(世界時)
(d) 2015年4月29日 05時01分20秒(世界時)

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国立天文台 太陽観測所

2015年03月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れましたが、現在は太陽活動は極大期を迎えています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでは北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して、南半球は遅れて上昇し、2014年に極大を迎えるという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2015年の黒点相対数

3月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 3月の平均黒点相対数は60.5と、先月に引き続き、今極大期の最大レベルである100付近より40% 程度低い値を示しました。南北半球別では、北半球が26.2、南半球が34.3でした。北半球では、2011年後半にピークをつけた後、20-40程度の値で安定しています。南半球のピークは遅れて2014年初頭にありましたが、減少に転じはじめたと言えそうです。
 3月のフレアの発生数は、米国NOAA GOES衛星(※1)の観測結果によると、X線強度別に、Cクラスが194回、Mクラスが28回、Xクラスが1回でした。3月のフレアのうち、Cクラスの約半数と、X及びMクラスのほとんどが、フレアの特に活発なひとつの活動領域 NOAA 12297(※2) (Cクラス97, Mクラス23, Xクラス1)(図1)にて発生しました。
 この活動領域 NOAA12297 にて見られた印象的な現象の例として、ここで頻発したフレアによって、フレア領域の周囲のフィラメントが長時間にわたり不安定化し、激しい運動が遠方にまで伝わる様子を紹介します (図2ムービー)。フィラメントはこの日は噴出には至りませんでしたが、3日後の15日にCクラスのフレアに伴い激しく噴出し、その影響で地球では大きな磁気嵐が起こり、また滅多にオーロラが見られない北海道でオーロラが観測されました。

※1 GOES: Geostationary Operational Enviromental Satellite(米国の観測衛星)
※2 NOAA: National Oceanic and Atmospheric Administration(米国の気象庁のような機関)。この機関によって、活動領域に番号が振られる。


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図1: 活動領域 NOAA12297
(左) Hα中心波長像 (右) Hα±0.8Åドップラーグラム。赤が我々から遠ざかる方向、青が我々に近づく方向。
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図2: 活動領域 NOAA12297にて頻発したフレアと、近傍のフィラメントの絶え間ない運動:
A: Hα線中心波長狭帯域フィルター像 (FWHM 0.25 Å), B: Hα±0.8Åドップラーグラム。赤が我々から遠ざかる方向、青が我々に近づく方向。

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国立天文台 太陽観測所

2015年02月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れましたが、現在は太陽活動は極大期を迎えています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルも極大が北半球に対して南半球は遅れて上昇しているという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2015年の黒点相対数

2月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 2月の月間平均黒点相対数は55.9となり、1月(80.3)に比べて約3割少なくなっています。1月は北半球23.2、南半球57.1と南半球が優勢でしたが、2月は北半球36.5、南半球19.4と、相対的に北半球の黒点が多かったようです。2月の南北半球および全体の黒点相対数をグラフ(図1)に示します。特に中旬においては、北半球が南半球に比べて優勢でした。1年前の2014年2月の平均黒点相対数は111.3だったことを考えると、この1年でずいぶん減少しました。

 太陽フレアの月間発生累計数は、NASAのGOES衛星(※1)の観測結果によるとCクラス73回、Mクラス2回、Xクラス0回(C, M, Xの順に10倍ずつX線強度が大きくなる)となっており、1月に比べると活動がやや穏やかになっていました(1月はCクラス167回、Mクラス13回、Xクラス0回)。Cクラスフレアの発生数はおよそ半分、Mクラスフレアの発生数は約6分の1にまで減っています。また、4か月ほど前の10月に出現した巨大黒点NOAA12192
(※2)においてはXクラスフレアが6回も発生しましたが、今月観測された黒点においてはXクラスフレアは一度も起こりませんでした。

 さて、このコーナー後半ではフレアやプロミネンスの活発な活動がトピックとして取り上げられることが多いのですが、今月は少し目先を変えてみましょう。太陽は約27日周期で自転することが知られていますが、それに伴って太陽表面の黒点や活動領域などの構造も一回転して再び同じ位置まで周ってきます。図2の左側は、2015年2月1日に太陽観測所のフレア望遠鏡で撮影された太陽のHα線画像です。一方右側にあるのは、同じ観測機器で2月28日に撮影されたもので、左側の写真からちょうど一回転したときにあたります。破線で囲ったそれぞれ3か所の活動領域を見ると、ちゃんと一周したことがわかります。右側の図において矢印で示したものはフィラメント(黒い筋)と呼ばれる構造で、1万度付近のプラズマが宙に浮いているものだと考えられています。左右の写真を見比べると、2月1日から2月28日の間にフィラメントが発達して長くなっていることが一目瞭然です。フィラメントは、このあと惑星間空間への放出などのプロセスを経て消失することがありますが、そのメカニズムは完全には解明されていません。
※1 GOES: Geostationary Operational Enviromental Satellite(米国の観測衛星) 。
※2 NOAA: National Oceanic and Atmospheric Administration(米国の気象庁のような機関)。この機関によって、活動領域に番号が振られる。

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図1: 2月の黒点相対数推移。


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図2: 太陽観測所のフレア望遠鏡で撮影されたHα線全面像。(左)2月1日。(右)2月28日。

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国立天文台 太陽観測所

2015年01月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れましたが、現在は太陽活動は極大期を迎えています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルも極大が北半球に対して南半球は遅れて上昇しているという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2015年の黒点相対数

1月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

1月の黒点相対数は80.33と、12月の91.83から減少しました。特に北半球の黒点相対数が5日0個を記録するなど、北半球の活動が低調であることを示しています。それでも、大きく発達した黒点群がいくつか観測されました。例えば、1月1日から10日にNOAA12253(図1)が南半球に出現しています。23日から31日はNOAA12268が同じく南半球に出現しています(図2)。
sr20150104_12253.jpg sr20150129_12268.jpg

図1(左): 1月4日の活動領域NOAA12253の黒点。
この日は北半球の黒点がゼロ。
図2(右): 1月29日の活動領域NOAA12268の黒点。
1月で一番黒点が多かった日。

 太陽フレア活動もやや低調でした。12月はCクラス以上のフレアが218回(Cクラス200回,Mクラス17回,Xクラス1回)起きていたのが、今月は180回(Cクラス167回,Mクラス13回,Xクラス0回)にとどまりました。1月、もっとも大きかったフレアは、1月13日に北西の縁近くのNOAA12257で起きたM5.6フレアです(図3)。この20分後にはM4.9フレアが同じ場所で発生しています。これらは太陽フレア望遠鏡で観測しています(図4,動画)。Hα線では、4時10分(世界時)頃から輝き始め、2本の筋のツーリボン構造として観測され、4時25分(世界時)には2つのリボンをつなぐように輝きを増しています。その後一度暗くなりますが、4時45分(世界時)に再度数カ所の輝点がリボン上で確認できます。これらはGOES衛星で記録されたX線の強度変化と対応していると考えられます。

 1月16日は北西の縁で、面白いプロミネンス活動が観測されました。このプロミネンスは、1月6日から9日は太陽面上にフィラメントとして見えていたものです。その後、北西の縁に達し、プロミネンスとして見えました。この日はらせん状の構造をしたプロミネンスが1時30分(世界時間)頃上昇を開始し、その後、プロミネンスの一部がねじれながらちぎれて、2時間ほどで、吹き飛んでいる様子がわかります(図5左,動画)。ドップラーマップから、このプロミネンスが回転しながら上昇していることがわかります。(図5右,動画)

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図3: (上)GOES衛星によるX線強度変化,(下)Hαの強度変化
図4: 2015年1月13日に起きたM5.6フレア。太陽フレア望遠鏡にて、Hα線で観測。(画像動画)


図5: 2015年1月16日に観測されたプロミネンス。太陽フレア望遠鏡にて観測。
(左)はHα線中心波長による強度マップ。(画像動画)
(右)はHα線ドップラーグラム(±0.5 Å)。プロミネンスの部分で、白色が我々から遠ざかる方向、黒色が我々に近づく方向。(画像動画)

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