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国立天文台 太陽観測所

2014年12月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れましたが、現在は太陽活動は極大期を迎えています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルも極大が北半球に対して南半球は遅れて上昇しているという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2014年の黒点相対数

12月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

12月の黒点相対数は90と、最盛期より若干落ちるものの、引き続き今極大期の最大レベルである100近くを維持しています。日毎で見ると、複雑でフレアの活発な活動領域 NOAA 12241, 12242 (図1)が現れてから消えてゆくまでの12月中旬に100を超える数値が集中しました。南北半球別では、北半球が31、南半球が59となり、南半球優勢の状態が続いています。

 フレアの発生数を見ると、X線強度別に、Cクラスが198回、Mクラスが17回、Xクラスが1回と、フレアの活動は活発でした。このうち、Cクラスの約半数と、X及びMクラスのほとんどが、特にフレアの活発な 3つの活動領域 NOAA 12242 (Cクラス51, Mクラス6, Xクラス1)、12241 (Cクラス20, Mクラス5)(図1)、及び 12222 (Cクラス55(12月中は33), Mクラス5)(図2)にて発生しました。対して、Cクラス以上のフレアを一つ以上発生させた活動領域の総数は、12月は23でした。

 図1(右)は、太陽観測所フレア望遠鏡赤外線偏光観測装置が捉えた活動領域 NOAA 12241, 12242とその周辺を含む視線方向磁場マップです。図1(左の)黒点の分布と比較すると、両活動領域とも複雑な磁場形状を持っており、フレアの特に活発であったNOAA 12242の場合には更に、広く分布する古い磁極群の中に黒点群が浮上しました。

 これらの活動領域で見られたイベントとして、フレアのムービーを2例、紹介します。それぞれ、12月17日にNOAA 12242 にて発生した GOES クラス M1.5 の two ribbon flare (図3、ムービー) と、12月24日にNOAA 12241 にて発生したGOES クラス C3.7のフレアと付随するプロミネンス噴出 (図4、ムービー)です。

AR12242WL.png AR12242Si.png

図1(左):活動領域NOAA12241,12242の黒点
図1(右):活動領域NOAA12241,12242の視線方向磁場マップ。白が磁場の+極。黒が磁場の−極。
(クリックすると画像が拡大されます。)


AR12222WL.png

図2:活動領域 NOAA12222の黒点


図3:(左) 活動領域 NOAA12242にて発生した GOES class M1.5 の two ribbon flare。太陽フレア望遠鏡にて、Hα線で観測。(画像動画)
図4:(右) 活動領域 NOAA12241にて発生した GOES class C3.7のフレアと、複雑な形状を持つフィラメント噴出。太陽フレア望遠鏡にて、Hα線で観測。(画像動画)

(画像をクリックすると拡大されます。)
国立天文台 太陽観測所

2014年11月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れましたが、現在は太陽活動は極大期を迎えています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルも極大が北半球に対して南半球は遅れて上昇しているという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2014年の黒点相対数

11月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

11月の月間平均黒点相対数は89.1となり、10月(73.5)に比べて約2割強多くなっています。10月は北半球15.3、南半球58.2と南半球が優勢でしたが、11月は北半球34.8、南半球54.3と、相対的に北半球の黒点が増加したようです。11月の南北半球および全体の黒点相対数をグラフ(図1下段)に示します。10月に太陽面上を通過した巨大黒点が太陽を一周回って再び見えるようになったことで、11月中旬に南半球の黒点相対数が増えています。その他の時期においては、南北半球の黒点相対数は概ねバランスが取れていました。

さて、太陽フレアの月間発生累計数は、NASAのGOES衛星(※1)の観測結果によるとCクラス173回、Mクラス16回、Xクラス1回(C, M, Xの順に10倍ずつX線強度が大きくなる)となっており、10月に比べると活動がやや穏やかになっていました。10月には巨大黒点NOAA12192(※2)においてXクラスフレアが6回発生しましたが、一周回って再び現れたとき(今回はNOAA12209と番号が振られた)には黒点数が減っていて、Xクラスフレアは一度も起こりませんでした。Mクラスフレアの発生数も10分の1に減っています。10月の「今月の太陽活動」に引き続いて、巨大黒点が太陽面上を横切る様子が太陽観測所の新黒点望遠鏡で捉えられました(図2)。11月13日に東(画像左側)の縁から現れたNOAA12209は11月20日前後に太陽面の中心付近を通り、11月28日に西の縁に消えてゆきました。

今回のトピックとして、10月に現れた巨大黒点NOAA12192と11月に再び回ってきて観測されたNOAA12209の面積を比較しようと思います。10月25日のNOAA12192を置いてみると(図2の四角の中)、巨大黒点が太陽を一周回る間に面積が小さくなったことがわかります。太陽観測所の新黒点望遠鏡による観測では、画像から自動で黒点を検出して黒点数を決定していますが、その際それぞれの黒点の面積も計算しています。NOAA12192とNOAA12209について、黒点の面積の時系列変化を調べたところ、図1上段のようになりました。グラフの横軸は巨大黒点が太陽の東の縁から現れてからの日数、縦軸は黒点の面積です。なお、面積の単位は太陽半球の表面積の100万分の1で、およそ300万平方キロメートル(日本の面積の約8倍)に相当します。グラフから、10月の巨大黒点と11月に再び回ってきた巨大黒点では面積が半分程度にまで減少していることがわかります。この巨大黒点は、10月には2つの大きな黒点とその間の多数の小さな黒点から成り立っていたのですが、11月にはその小さな黒点の多くが消えてしまいました。

※1 GOES: Geostationary Operational Enviromental Satellite(米国の観測衛星)
※2 NOAA: National Oceanic and Atmospheric Administration(米国の気象庁のような機関)。この機関によって、活動領域に番号が振られる。

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図1:(上)NOAA12192 と 12209 の面積変化の比較。(下)2014年11月の黒点相対数推移。


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図2: NOAA12209 が太陽面上を移動していく様子(太陽観測所の新黒点望遠鏡で撮った画像を重ね合わせたもの)。画像中の数字は日付。巨大黒点NOAA12192の10月25日(図1上段紫色の線8日目)の画像も比較のために四角で囲って示した。

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2014年10月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。赤線は最近1周期における変動、緑線と青線は最近1周期における北半球(緑)と南半球(青)の変動、黒線は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れましたが、現在は太陽活動は順調に上昇しています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでも特に異常はなく、現在既に極大に近い北半球に対して南半球は遅れて上昇しているという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2014年の黒点相対数

10月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 10月の黒点相対数は73.70と9月(99.67)よりかなり減少しました。 特に10月8日から11日、17日・18日に北半球の黒点数が0を記録するなど、 黒点数の減少に影響を及ぼしています。
 そんな中、10月18日に大きな黒点を伴って南東の縁から出現した活動領域 NOAA12192は、その後成長し、24日に見かけ上最大の大きさとなりました(図1,図2)。 これは今活動周期最大の黒点(これまでは2014年1月8日)となり、 1990年11月18日以来実に24年ぶりの巨大黒点で、世間の注目を集めました。また、N極とS極の磁場が入り組んだβγδ型の黒点群で、あとで述べる巨大フレアが連続発生する要因になったものと考えられます。

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図1(左):2014年10月18日から28日の白色光全面像
(抜粋、活動領域12192のみを重ねたもの)
図2(右):2014年10月24日の活動領域12192
(クリックすると拡大して表示されます)

 10月19日にはこの黒点群でX1.1の巨大フレアが起きて、太陽フレア望遠鏡で一連の経過を観測することができました。このフレアは、10月19日の4時17分(世界時間)に起きましたが、そのX線強度が最大になるまで40分かかるという珍しいものでした(図3)。Hαでは、黒点の暗部の両脇に明るい2条のフレアリボンが観測され、プロミネンス噴出現象も観測されました(図4,図5,ムービー)。Xクラスフレアが起きたのは9月10日以来(X1.6)です。このあとも、この黒点群NOAA12192ではたくさんのフレアが起こりました。その数、Cクラス67個、Mクラス32個、そして、Xクラスが6個になります(図6)。これは、10月に起きたCクラス以上の太陽フレアの半分以上にあたります。同じ活動領域で6個のXクラスのフレアが起きたのは今活動周期で初めてのことです。これで、今年起きたXクラスのフレアは合計14個となり、昨年の12個を上回りました。

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図4(左):2014年10月19日に起きたX1.1フレア
(クリックすると動画で見れます)
図5(右):2014年10月19日の活動領域12192の白色光画像
(クリックすると拡大して表示されます)

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図6:10月18日から30日の太陽のX線強度変化。Xクラスと代表的なMクラスフレアを◯で示しています。
(クリックすると拡大して表示されます)

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2014年09月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。赤線は最近1周期における変動、緑線と青線は最近1周期における北半球(緑)と南半球(青)の変動、黒線は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れましたが、現在は太陽活動は順調に上昇しています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでも特に異常はなく、現在既に極大に近い北半球に対して南半球は遅れて上昇しているという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2014年の黒点相対数

9月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 9月の黒点相対数は99と、8月に引き続き今極大期の最大レベルである100前後に戻しました。今月は日毎で見ても継続して70程度以上の値を維持しており、安定して活発でした。南北半球別では、北半球が36、南半球が63となり、8月には南北の黒点相対数がほぼ等しくなりましたが、9月は再び南半球優勢に戻しました。フレアの発生数を見ると、X線強度別に、Cクラスが129回、Mクラスが11回、Xクラスが1回と、強い活動性を維持しました。最も多くのフレアを発生させた活動領域は NOAA 12157 (Cクラス32回, Mクラス2回)でしたが、他にも
 NOAA12158 (Cクラス11回, Mクラス1回, Xクラス1回)、
 NOAA12172 (Cクラス13回, Mクラス1回)
 NOAA12173 (Cクラス8回, Mクラス2回) と、
フレアの比較的活発な活動領域の存在が目立ちました。

Fig_AR12157_12158.png Fig_AR12172_12173.png

図1(左):活動領域NOAA12157,12158の黒点
図2(右):活動領域NOAA12172,12173の黒点
(クリックすると拡大して表示されます)

 太陽観測所・太陽フレア望遠鏡が9月にとらえた印象的なイベントとして、9月26日に太陽の東の縁上空で発生した大規模なプロミネンス噴出 (図3、ムービー) を紹介します。図3及びムービーでは、地球の大きさに比べて非常に大きなプロミネンスが複雑な内部運動を伴いながら勢いよく噴出し、後になって、プロミネンスを形成していたガスの一部が太陽表面へとゆっくりと落下する様子が見て取れます。噴出時と落下時でガスの視線方向での速度の符号が逆向きになるのは、プロミネンスを形成していた磁束管が我々の視線から遠ざかる方向へと伸びており、ガスがその磁力線に沿って移動しているためと考えられます。
 9月28日には、活動領域 NOAA12173 にて発生した GOESクラス M5.1 の two ribbon flare (図4、ムービー) が起こりました。図4及びムービーでは、フレアの発生と共にHα線で強く光る2本の帯状の構造の発展が見て取れます。two ribbon 構造と呼ばれるこの領域での視線方向速度の符号をドップラーグラムで確認すると、我々から遠ざかる方向であることがわかります。この強く光る領域では水素ガスの下降流が存在することを示しています。

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図3: 9月に太陽の東の縁上空で発生した、大規模なフィラメント噴出(クリックすると動画が再生されます)
A. Hα線中心波長狭帯域フィルター像 (FWHM 0.25 Å)
B. Hα線ドップラーグラム(±0.8 Å)。赤色が我々から遠ざかる方向、青色が我々に近づく方向


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図4: 太陽観測所で観測された GOESクラス M5.1 の two ribbon flare とそのドップラーグラム(クリックすると動画が再生されます)
two ribbon 構造と呼ばれるフレアで強く光る場所の速度を調べると、水素ガスの下降流が存在することがわかります。
A. Hα線中心波長狭帯域フィルター像 (FWHM 0.25 Å)
B. Hα線ドップラーグラム(±0.8 Å)。赤色が我々から遠ざかる方向、青色が我々に近づく方向
C. Hα線広帯域フィルター像(いろいろな速度を合成した像)


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2014年08月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。赤線は最近1周期における変動、緑線と青線は最近1周期における北半球(緑)と南半球(青)の変動、黒線は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れましたが、現在は太陽活動は順調に上昇しています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでも特に異常はなく、現在既に極大に近い北半球に対して南半球は遅れて上昇しているという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2014年の黒点相対数

8月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 8月の月間平均黒点相対数は92.0と7月に比べて約1割強増加しました。数か月程度の長期的な変動としては、ほぼ横ばいの状態になっています。先月からの黒点相対数の変化を見ると、7月は北半球26.5、南半球47.7と南半球が優勢でしたが、8月は北半球43.1、南半球48.9と、相対的に北半球の黒点が増加したようです。南北半球および全体の黒点相対数をグラフ(図1)に示します。8月初旬までは、北半球に比べて南半球の黒点相対数が圧倒的に多かったのですが、10日以降は大小関係が南北半球で逆転していることがわかります。データがないのは、天候が良くなくて観測できなかった日です。
 太陽フレアの月間発生累計数は、NASA/NOAAのGOES衛星(※1)の判定によるとCクラス119回、Mクラス7回、Xクラス0回となっており、7月に比べると活動がやや活発になっていました(7月:Cクラス76回、Mクラス5回、Xクラス0回)。8月21日に太陽面の東の縁(向かって左側)から現れた活動領域NOAA(※2) AR12149が特に活発だったようです。
 今回は、フレア望遠鏡のHα線カメラで撮影されたプロミネンスを紹介します。8月15日の3:45 UT(日本時間12:45)頃から西のリム(太陽面で右の縁)において、プロミネンスが少しずつ成長する様子が捉えられました。白色光画像で対応する部分を白い四角形で囲んであります(図2)。白色光画像では何もありませんが、Hα線画像(図3,動画)でその領域を見ると、画像上半分の縁に突起が見られます。これがプロミネンスです。時間が経つにつれてプロミネンスが上から下の方向にどんどん伸びてゆくのがわかります。このあと7:00 UT頃まで成長は続きました。プロミネンスがどのように形成され始めて、どのように成長してゆくかについては、現在でもまだ完全には解明されていません。

※1 GOES: Geostationary Operational Enviromental Satellite(米国の観測衛星) 。
※2 NOAA: National Oceanic and Atmospheric Administration(米国の気象庁のような機関)。この機関によって、活動領域に番号が振られる。

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図1: 8月の黒点相対数推移


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図2(左): 2014年8月15日の白色光画像(画像をクリックすると拡大表示されます)
図3(右): 2014年8月15日に南西のリムの成長するプロミネンス(画像をクリックすると動画にリンクします)


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2014年07月の太陽活動 バックナンバー

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 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。赤線は最近1周期における変動、緑線と青線は最近1周期における北半球(緑)と南半球(青)の変動、黒線は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れましたが、現在は太陽活動は順調に上昇しています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでも特に異常はなく、現在既に極大に近い北半球に対して南半球は遅れて上昇しているという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2014年の黒点相対数

7月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 7月の黒点相対数は76.10と6月(79.21)よりやや減少しました。7月上旬は黒点活動が活発で、特に7月8日で黒点相対数は163となり、この日は11群の黒点群が出現しています(図1)。ところがその1週間後の7月16日と17日は無黒点、黒点数0を記録しました(図2)。太陽活動極大期に黒点数が0になるのは非常に珍しいことで、2011年8月15日以来の無黒点日となりました。その後は7月末、南半球に新たな黒点群が出現し、7月29日は黒点相対数が125まで増加しています。

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図1(左): 2014年7月8日の黒点画像
図2(右): 2014年7月17日の黒点画像(黒点が全くない)


 7月上旬に出現した12108と12109は東西に大きく発達し(図1参照)、活発なフレア活動が期待されましたが、Mクラス以上のフレアは発生しませんでした。7月中に起きたMクラスフレアは12106と12113などでで発生したものでだけで、12113では7月8日にM6.5クラスのフレアが起こっています。従って、フレア活動は7月全体では低調でした(Cクラス76、Mクラス5、Xクラス0)

 そんな中、7月25日に、東西のリムで興味深いプロミネンス活動が観測されました(図3)。東側のリムのプロミネンスは、主に上空5万kmに浮遊する部分(a)と低空に広がる部分(b)からなります(図4,動画)。この浮遊部分(a)から太陽表面に向かって、プロミネンスの冷たいガス(といっても1万度ぐらい)が落下しています(c)。これはプロミネンスの崩壊現象を捕らえたものだと考えられます。この日の0時から4時まで(世界時間)を動画にしました。雨のような落下運動を見ることができます。動画の後半では(b)のプロミネンスが太陽の縁に沿って大きく変化しています。南西のリムでは、2本の角のような形をしたプロミネンスが見えています。これは、7月17日から南半球にフィラメントして見えていたものが、7月25日は縁に達し、プロミネンスとして見えたものです(図5,動画)。(d)の部分を動画で見ると、ゆったりとねじれた運動をしていることがわかります。このプロミネンスは数日かけて上昇しており、26日はプロミネンスイラプション(噴出)が起こりました。
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図3: 7月25日のHα全面画像


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図4(左): 2014年7月25日に東のリムに出現したプロミネンス
図5(右): 2014年7月25日に南西のリムに出現したプロミネンス

(画像をクリックすると拡大表示されます)


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2014年06月の太陽活動 バックナンバー

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 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。赤線は最近1周期における変動、緑線と青線は最近1周期における北半球(緑)と南半球(青)の変動、黒線は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れましたが、現在は太陽活動は順調に上昇しています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでも特に異常はなく、現在既に極大に近い北半球に対して南半球は遅れて上昇しているという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2014年の黒点相対数

6月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 6月の黒点相対数は79と、今回の極大期の最大レベルである100前後を維持していた直近の8ヶ月に対し有意に落ち込みました。活動領域別で見ると、NOAA 12080, 12082, 12085 といった比較的大規模な黒点群(図1)も出現した一方で、中規模から小規模な黒点群の発生も目立ちました。このため、黒点の比較的目立たない日も多く、黒点相対数が100以上の値を示す日数の多かった5月までに対し、趣の異なる太陽となりました。

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図1: 6月8日の太陽黒点画像。(クリックすると大きく表示されます)

 フレアの発生数を見ると、X線強度別に、Cクラスが132回、Mクラスが16回、Xクラスが3回と、強い活動性を維持しました。多くは、フレアの非常に活発な一つの活動領域 NOAA 12087 にて発生しました(Xクラス3回、Mクラス8回、Cクラス29回)。この活動領域は黒点群としてそれほど大きなものではありませんが、古い活動領域の残骸の中に出現しました。ダークフィラメントを多数含む活動領域でもありました。

 6月に太陽観測所の太陽フレア望遠鏡が観測した印象的なイベントとして、 6月15日に NOAA 12087 にて発生したフィラメント噴出を紹介します(図2ムービー)。NOAA 12087 に存在していたダークフィラメントの一つが突然、複雑な運動を伴いながら、膨張、噴出を始めます。ある高さまで噴出した所で、上空に横たわっていたより大きな磁力線群に接触、磁力線のつなぎかえを起こし、フィラメントの形が変化します。その後、ダークフィラメントの密度の高いガスが、新しくつながったであろう幅広い磁力線ループに沿って落下する様子がわかります。最後にもう一例、6月3日にNOAA12077で発生したM1.3のツーリボンフレア を紹介します(図3, ムービー)。 。

Figure2.png

図2: 6月にフレアの最も活発であった活動領域NOAA12087 にて発生した、フィラメント噴出(クリックすると大きく表示されます)
A. Hα線中心波長狭帯域フィルター像 (FWHM 0.25 Å)
B. Hα線ドップラーグラム(±0.8 Å)。赤色が我々から遠ざかる方向、青色が我々に近づく方向
C. Hα線広帯域フィルター像(いろいろな速度を合成した像)

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図3: 太陽観測所で観測されたM1.3のツーリボンフレア(NOAA12077で発生)


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2014年05月の太陽活動 バックナンバー

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 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。赤線は最近1周期における変動、緑線と青線は最近1周期における北半球(緑)と南半球(青)の変動、黒線は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れましたが、現在は太陽活動は順調に上昇しています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでも特に異常はなく、現在既に極大に近い北半球に対して南半球は遅れて上昇しているという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2014年の黒点相対数

5月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 5月の月間平均黒点相対数は102.4と4月(93.08)に比べて約1割増加しました。数か月単位の長期的な変動としては、ほぼ横ばいの状態が続いています。先月は北半球・南半球でほぼ同じ黒点相対数でしたが、今月は基本的に南半球が優勢でした。南北半球および全体の黒点相対数を図1に示します。5月20日以降、北半球には黒点が現れませんでしたが、このように南北どちらかの半球において黒点が現れない状態は、太陽活動極大期にしては珍しいことです。
 その中で、5月7日~5月17日の約10日間にわたっては北半球でも四つの目立った活動領域NOAA(※1)12055, 12056, 12057, 12059が現れました。図2に、北半球で複数の黒点が発達した5月12日の白色光画像を紹介します。ウィルソン分類(※2)によると、前者二つは双極性のなかでも複雑なβγ型、後者二つは単極性の単純なα型となっています。
 また太陽フレアの月間発生累計数は、NASAのGOES衛星(※3)の判定によるとCクラス122回、Mクラス5回、Xクラス0回となっており、4月に比べるとやや低い程度の活動を維持しています(4月:Cクラス167回、Mクラス3回、Xクラス1回)。
 最後に、フレア望遠鏡のHα線カメラで撮影されたプロミネンス噴出を紹介します(図3, 動画)。このイベントは5月9日の2:30 UT(日本時間11:30)頃に西のリム(太陽面で右の縁の部分)において発生したものです。このとき西のリム付近に活動領域NOAA12049があり、ここから噴出したのではないかと考えられます。動画の上端にも時刻が表示されていますが、このプロミネンス噴出は約40分間続く大規模なものでした。NASAの太陽観測衛星IRIS(※4)でも捉えられたようです(動画:外部リンク)。プロミネンスを構成するプラズマの上昇は約10分で終わり、その後はゆっくりと落下していったと推測できます。

※1 NOAA: National Oceanic and Atmospheric Administration(米国の気象庁のような機関)。この機関によって、活動領域に番号が振られる。
※2 磁場の形状によって黒点を分類したもの。
※3 GOES:Geostationary Operational Enviromental Satellite(米国の観測衛星)
※4 IRIS: Interface Region Imaging Spectrograph(米国の観測衛星)

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図1: 5月の黒点相対数推移


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図2(左): 5月12日の白色光画像
図3(右): 5月9日のプロミネンス噴出

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国立天文台 太陽観測所

2014年04月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。赤線は最近1周期における変動、緑線と青線は最近1周期における北半球(緑)と南半球(青)の変動、黒線は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れましたが、現在は太陽活動は順調に上昇しています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでも特に異常はなく、現在既に極大に近い北半球に対して南半球は遅れて上昇しているという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2014年の黒点相対数

4月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 4月の黒点相対数は93.08と3月(109.55)より減少しました。最近6ヶ月で一番少ない月となりましたが、それでも100前後を維持しています。昨年5月以降、南半球が優勢でしたが、今月はほぼ北半球・南半球同数となり、南半球の黒点がゼロとなる日(4月11日)もありました。もっとも黒点が観測されたのは4月17日で黒点相対数は175で、この日は12群の黒点群が出現しています(図1)
 黒点数に対して、フレア活動はこれまでに比べるとやや低調で、Cクラス167、M1クラス3、Xクラス1でした。それでも、4月25日に西のリムでX1.3フレアが起きました。今年に入って4つ目のXクラスフレアです。午前9時半頃(日本時間)に起きたということもあり、太陽フレア望遠鏡で一連の変化を観測することができました。このフレアは、西のリムの向こう側に移動したNOAA12035とのその東側に出現した12046で起きました。当初はリム上で輝き、そのあと小さなアーケード構造を形成しています(図2、動画1)。さらにその3時間後には浮かんだプロミネンスがブロブ状に形成されて、そのプロミネンス物質がループ構造に沿って太陽表面に落ちて行く様子が観測されています(図2、動画2動画3)。SDO衛星ではこの上空には大きなカスプ状のアーケード構造が観測されており、熱いコロナが冷えて、このようなプロミネンスがHαで見えるようになったと推測されます。
 NOAA12035は12036は、ともに今月特にフレアが頻発した活動領域(図1参照)で、両者ともβγ型と複雑な磁場構造をしています。4月11日には、東のリム上に明るいプロミネンスが見られ、数時間にわたり激しく形状が変化したり、何度も噴出現象を起こしました。太陽面に出現前の活動領域12035上空の彩層活動を捕らえたものだと考えられます(図4,動画4)。

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フレア望遠鏡Hα中心波長でとらえた2014年4月25日のX1.3フレア。
図2(左):最初にフレアが起こった頃。
図3(右):フレアの後半部分。リム上空にプロミネンスが形成されている(太陽の表面は黒く塗りつぶしている)。動画3はドップラーグラム(白が遠ざかる方向、黒が近づいてくる方向の運動を表す)。
図の上が北、左が東に対応する。


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図4:4月11日の東のリムの彩層活動。
図の上が北、左が東に対応する。


国立天文台 太陽観測所

2014年03月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。赤線は最近1周期における変動、緑線と青線は最近1周期における北半球(緑)と南半球(青)の変動、黒線は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れましたが、現在は太陽活動は順調に上昇しています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでも特に異常はなく、現在既に極大に近い北半球に対して南半球は遅れて上昇しているという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2014年の黒点相対数

3月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 3月の太陽活動は、黒点相対数、フレアの活動共に非常に活発でした。黒点相対数は直近の6ヶ月間で継続して100前後の値を推移し、今回の極大期の最大レベルを維持しています。フレアの発生数をX線強度別にまとめると、Cクラスが201回、Mクラスが22回、Xクラスが1回でした。
 巨大黒点とその回帰群での活動が目立った1月、2月と異なり、3月では、新たに浮上して急速に発達する中規模の活動領域での活動が目立ちました。全フレアのうち、Cクラス116、Mクラス16、Xクラス1が、この様な中規模の若い活動領域 NOAA 11996, 12002, 12010, 12014, 12017 上空で発生しました。これらの活動領域は全て、二つ以上の磁束管が、同時ないし比較的近いタイミングで浮上し、お互いに干渉し合うβγδ、ないしβγ型の活動領域でした。
 3月に太陽観測所フレア望遠鏡が観測した印象的なイベントとして、 3月16日に発生した大規模フィラメント噴出を紹介します(図1、ムービー)。図1左側がフィラメント噴出前での様子。図1右側が噴出中の様子を示します。地球規模の太さを持ち、東西に非常に長い距離にわたって安定して存在していた低温のガスと磁力線の固まり(ダークフィラメント)が、突如不安定化し、噴出する様子が見て取れます。このようなフィラメント様構造の突然の噴出は、電磁流体力学的な力によって駆動されると考えられています。尚、図及びムービーでは、画像処理によって太陽の縁の外側を強調しているために縁の外に飛び出したものが明るく見えますが、実際には同じ明るさのものがディスク上から縁の外へ移動しているだけです。

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図1:フレア望遠鏡Hα中心波長でとらえた2014年3月16日の大規模フィラメント噴出。図の上が北、左が東に対応する。


国立天文台 太陽観測所

2014年02月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。赤線は最近1周期における変動、緑線と青線は最近1周期における北半球(緑)と南半球(青)の変動、黒線は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れましたが、現在は太陽活動は順調に上昇しています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでも特に異常はなく、現在既に極大に近い北半球に対して南半球は遅れて上昇しているという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2014年の黒点相対数

2月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 2月の太陽活動は、黒点相対数、太陽フレアの活動ともに活発でした。2月の平均黒点相対数は111.3と1月の98.32より増加しました。一番多かったのは2月26日の201で、これは今活動周期最大の黒点相対数です(これまでは2013年11月17日の174)。
 黒点相対数が増加した理由として、大きく発達した黒点群がいくつも出現したことがあげられます。その一つがNOAA11967です。この黒点群は元々1月前半にNOAA11944として出現したものが、1月末に東の縁から再出現しました。その後大きく発達し、2月5日に面積が最大となり(図1左, 全面像)、西の縁に消える2月10日まで見えていました。そして、2月25日に東の縁からNOAA11990(図1右, 全面像)として再度出現しました。2ヶ月近く長寿命な黒点群となっています。
 NOAA11990として出現した2月25日には、X4.9フレアが発生しました(ムービー)。これは今年2回めのXフレアです。このフレアをHα線で観測すると、太陽面上に筋状の明るいフレアリボンが見えています。また、上空では激しい噴出現象も起こっており(図2)、フレアのあとにはCME(コロナ質量放出現象)も観測されています。フレアのX線の強度変化とHα線の明るさの変化を示します(図3)。ムービーではフレアの光っている下側のプロミネンスが大きく振動しているのが見えます。これはCMEによる急激な磁場構造の変化がコロナ中を伝わったことによって引き起こされたと思われます。
 太陽フレアの数ではCクラスが189回、Mクラスが39回、Xクラスが1回と1月を上回っており、フレア活動の面でも太陽活動が活発だったことがわかります。特にフレアを頻繁に起こしたのが、上記の11967や2月中旬に出現した11974です。主な活動領域で起きたフレアの数の内訳を表1に示します。

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図1:活動領域NOAA11967(左)とその回帰群NOAA11990(右)


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図2(左):25日のX4.9フレア
図3(右):25日のフレアによるX線強度変化(上段)とHα線の明るさの変化(下段)


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表1:2月に現れた主な活動領域で起きたフレアの数

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国立天文台 太陽観測所

2014年01月の太陽活動

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。赤線は最近1周期における変動、緑線と青線は最近1周期における北半球(緑)と南半球(青)の変動、黒線は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れましたが、現在は太陽活動は順調に上昇しています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでも特に異常はなく、現在既に極大に近い北半球に対して南半球は遅れて上昇しているという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2014年の黒点相対数

1月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 1月の太陽活動は、黒点相対数、フレアの活動共に非常に活発でした。黒点相対数は、直近の3ヶ月間に引き続き、今回の極大期の最大レベルを維持しました。フレアの発生数をX線強度別に見ると、Cクラスが137回、Mクラスが26回、Xクラスが1回発生しました。
 第24太陽周期で最大級の黒点が、1月上旬に出現しました(図1左:図中一番大きな黒点)。その面積は地球30個分の大きさに相当します(暗部、半暗部を含む)。この黒点を含む活動領域NOAA11944は長寿命であり、太陽の自転と共に、地球から見て太陽の裏側に回った後、1月下旬に再び活動領域NOAA11967として表側に回ってきます(図1右)。活動領域NOAA11944、及びその回帰群NOAA11967は共にフレアの多産な活動領域でした。NOAA11944ではCクラス44回、Mクラス7回、Xクラス1回、NOAA11967では1月中の5日間だけでCクラス25回、Mクラス13回、Xクラス1回のフレアが発生しています。但し、フレアの活動性を必ずしもひと月に渡って維持していた訳ではないようで、NOAA11944とNOAA11967では、フレアの発生領域となる浮上磁場領域の位置が、中心となる黒点に対し、それぞれ東側(図中左側)、西側(図中右側)と異なります。太陽観測所フレア望遠鏡が捉えたこの二つの領域で発生したフレアを数例、図、及びムービーにて紹介します(図2, ムービー:1, 2)。
 更にもう一例、浮上活動領域NOAA11946にて7日に発生したM1.0フレア及びサージを紹介します(図3, ムービー)。このイベントでは、フレア初期において明るいアーチ状のフレアアーケードと、その先端部よりの明るいジェット様の構造がまず現れ、次に、サージと呼ばれる低温のジェットがフレアアーケード上空に出現するのが見て取れます。これらは、新しく浮上した活動領域の成長初期の様子をHα波長にて観測した際に典型的に見られる現象で、光球面下から浮上した低温高密度の質量を伴う磁束管が、上空のコロナの磁力線群と繋ぎ替えを起こすことにより発生すると考えられています。

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図1:第24太陽周期で最大級の黒点群。活動領域NOAA11944(左)とその回帰群NOAA11967(右)


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図2(左):28日のM1.5フレア及びプロミネンス噴出
図3(右):7日のM1.0フレア及びサージ

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