登録有形文化財・塔望遠鏡
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塔望遠鏡(正式名称は太陽分光写真儀室)は1928年にドイツのツァイス社から当時の金額で約6万円で購入されました。東大の総合図書館などと同じ、茶色のタイル張りの建物は1930年に完成しました。ドイツのポツダム天文台のアインシュタイン塔と望遠鏡としての構造が似ているので、アインシュタイン塔とも呼ばれます。地上18.2mの塔の頂上に直径65cmのシーロスタット(平面鏡2枚)がドームに納められています。結像系は当初口径45cmのレンズでしたが、1957年に口径48cmのカセグレン鏡に交換されました。半地下の分光器室には焦点距離12mの回折格子分光器が備えられ、高分散の分光観測ができる装置です。末元・日江井によるフレア領域の厚みの導出、西・牧田による黒点の磁場構造などの研究が行われたほか、ここで始まった偏光測定の基礎研究は後日、岡山天体物理観測所のベクトル・マグネトグラフに結実する事となります。
塔望遠鏡は第一線を退いて久しく、内部の痛みも激しいのですが、その特殊な建物構造が歴史的価値を認められ、平成10年2月20日に有形文化財に指定されました。
なお、本家のポツダム天文台のアインシュタイン塔は1921年建設ですが今も現役です。著名な建築家エリッヒ・メンデルゾーンの設計になる超モダンなデザインが特徴。
- 解説記事
- 東京大学百年史・部局史3「東京天文台」、p.102、1977
- 長尾清一:「アインシュタイン塔の建設工事について」、天文月報、昭和5年5月号、p.87
- 藤田良雄:「東京天文台の塔望遠鏡に就て」、天文月報、昭和10年3月号、p.87
- 堀 勇良:「建築譜ー明治大正昭和10 『天文台』」、自然 1980年10月号、p.57
- 論文リスト
三鷹構内には塔望遠鏡の他にも、1921年建設の20cm ツァイス赤道儀ドーム(2002年3月文化財登録)など、天文学史上貴重な建物、装置が残っています。1920年建設の太陽写真儀(ヘリオスコープ)室(Hαフレアのスペクトロヘリオスコープ観測や、スペクトロヘリオグラフによるカルシウムK線画像の観測が行われていた)は1999年春に取り壊しとなりました。