岡山天体物理観測所 65cmクーデ型太陽望遠鏡

oaotel

 岡山天体物理観測所の太陽望遠鏡は1968年に建設されました。主鏡径65cm、クーデ式で合成焦点距離 37m (F/57)、焦点面での太陽像の直径は約35cmです。分光器室には1200本/mm、25×20cmのグレーティングと、エッシェル・グレーティングが設置されています。
研究成果(磁場観測が始まるまで)

解説記事
石田五郎:天文月報、1968年4月号
牧田貢:天文月報、1968年11月号

写真測光用ポラリメータ

 1956年に海野は、磁場の中でのゼーマン効果による吸収線の形成に関する論文を発表しました (W. Unno: 1956, Publ. Astron. Soc. Japan, 8, 108)。この論文で述べられた理論(後に「海野の公式」として有名になりました)は、その後の磁場観測の基本理論となり、現在でもほぼそのままの形で使われています。
 海野の理論に基づき、太陽の磁場を測定するための装置(ポラリメータ)の試作が、1960年代に三鷹の塔望遠鏡を使って始まりました。1970年頃から、岡山天体物理観測所の太陽望遠鏡を使った、写真測光用ポラリメータによる磁場観測が、西・牧田によって進められました。
 ポラリメータの原理は、偏光ビームスプリッタにより、互いに直交する直線偏光を2つの出射光線に分離することです。円偏光は、1/4波長板によって直線偏光に変えた後、同じ操作を加えると、右周り、左周りの円偏光が分離できます。岡山天体物理観測所のポラリメータでは、ポラリメータ通過後の光を分光器に入れ、直線偏光2本、円偏光2本の4本のスペクトルを作っています。これをフィルムに記録して解析します。ビームスプリッタとしてロッションプリズム、1/4波長板としてフレネルの菱面体を採用しています。使うスペクトル線は通常は6303Åですが、フレネルの菱面体は広い波長範囲にわたって1/4波長板としてはたらきます。
 現在、このポラリメータは岡山天体物理観測所・太陽望遠鏡観測室内に保管されています。写真観測では、磁場の測定精度は100G程度が限度で、黒点以外の場所では有為な信号が得られません。光電観測により、高精度の磁場観測を行う装置(マグネトグラフ)が1976年から製作され、1982年に完成しました。
ポラリメータの研究成果

解説記事
田中捷雄:「黒点磁場の最高強度」、天文月報、1975年5月号
西恵三:「岡山天体物理観測所の太陽黒点磁場観測用ポラリメーター」、天文月報、1976年4月号