§13 発動発電設備

 陸の孤島とも言われる3000m級の山頂にあって,観測・通信等の機器及び生活関係の動力源となる電力を,一般商用に求めることは建設経費と技術上から非常に困難なことであったため,自家発電を行うことによって賄わざるを得なかった。しかし2馬力1KVAと小型の上,配給制の燃料では充分に需要を満たしてくれるものではなく,当初は蓄電池の充電用のみに限定された。
 その後年を追って逐次大型のものに改められ,昭和28年に自動車道路の完成によって15KVAとなり初めて室内照明(時限的)にも便宜が与えられた。
 昭和34年にはドームの融氷装置用として 50KVAが加わり,室内暖房もヒーターに切替えられ照明も終夜点灯となった。昭和44年25cmクーデ型コロナグラフの設置に関連して150kVAが2台となり,あらゆるものが電化の運びとなった。
 機器の保守については,昭和28年要員をヤンマーディゼル(大阪・尼ヶ崎・長浜)に派遣し運転保守技術の履修を行った。昭和42年使用電力の大型化に伴い,電気主任技術者の選任と,燃料の大量貯蔵取扱いに必要な危険物取扱主任の選任が行われた。また発動機の冷却に必要な水を貯える為に漸次大型の貯水槽が作られたが,これは建物の項に記した。
イ.各年度の使用電源(AC・DC)等の変遷

昭和24年 可搬型発電機 2HP×1KVA(友野鉄工所製)2台
      鉛蓄電池 96Ah 6V×4
     充電用セレン整流器 12V用 1台
       無線室の一部を発電室として通信時間のみ発電し,送信をAC,受信をDCと
       する,無線の他は1日7分間位の一般ニュース程度の受信のみ,従って照明
       は石油吊ランプによる。
其の他は平角3号乾電池2個を連結して使用する
昭和25年 鉛蓄電池 96Ah 6V×6
     セレン整流器 24V用 1台(新規購入)
       DC電源にコンバーターを接続しAC100Vを得て送信用とし,受信用及び観測
       用にはそれぞれDC24Vを使用する。
ガソリン庫(防風壁外)を新設,エン
       ジン室として旧便所を取除いて増改築する
昭和26年 可搬型発電機 2HP×1KVA(友野鉄工所製)
     鉛蓄電池 96Ah 6V×9
       July.29 新たに発電機1台入荷,3号機としてAug.26日より使用開始する
           (計3台となる)
昭和27年   Feb.17 1号機,2号機のヘッドを修理に下す
       Feb.27 予備機として4号機 2HP×1KVA(友野鉄工所製)の荷揚げ,
           Mar.06より正常運転する。  (1KVAは計4台となる)
       Sep.25 より2号機を運転,3号機はシリンダー部分故障のため分解(その
           まま)
     無線室裏防風壁間に屋根仮設によるエンジン室を新設,4HP 2KVA 友野鉄工所
     製ディーゼルエンジンを据付ける。 但し4HPは運転せず
昭和28年 48PH×15KVAディーゼル1台及び3HPディーゼルエンジン付C3コンプレッサー1台新設
                                (ヤンマー製)
       友野 2HP×1KVAエンジン3号機 Feb.6修理の上荷揚げ,Oct.より全部のガ
       ソリンエンジンは予備機として運転中止する
     4HP×2KVAディーゼル Aug.27より運転,Oct.13焼付けの為,運転中止とする
      48HP×15KVAディーゼル Oct.21より運転に入る,K3-C3コンプレッサー用エンジン不調
       新たに居室東にエンジン室(含燃料庫)を新設する
昭和29年 48HP×15KVAディーゼル2号機(ヤンマー製)1台新設,K3-C3コンプレッサー用エンジン
     不調のためOct.よりSS4-C4コンプレッサーに変更。バッテリーも施設拡大にともない
     300Ah 6ヶ 24V 2組の大型バッテリーに変更,充電器も水銀(タコ足)整流器とする
昭和30年     Aug. セレン整流器 1台増設,今までの 12V,24Vセレン整流器各1台を
       東京に降す,重油タンク14t 1基を新設する
昭和31年   重油タンク21tを新設,14tはモービルオイル用とする
昭和32年   ドームに融氷装置を取付ける
昭和33年   重油タンク21tを増設,同量タンク計2本となる,ドーム融氷装置完成
昭和34年   Sep.  120HP×50KVAディーゼルを新設,燃料庫を改造の上据付ける
     現在の電力設備
     48HP×15KVAディーゼル(ヤンマー製)2台 300Ah 6ヶ 24V 2組
     120HP×50KVAディーゼル(ヤンマー製)1台  セレン整流器 1台
     SS4-C4コンプレッサー(ヤンマー製)1台    水銀整流器  1台
       重油タンク100tを増設,重油収容量は計142tとなる
       融氷装置は通電実験の結果あまり効果なく中止,各個室等の暖房は電気ヒ
       ーターに切り換える
昭和35年   July.17 バッテリーの不良品を入れ替えて24Vに倍増 300Ah 12ヶ 24V
       2組 水銀整流器を東京に降す
昭和36年   融氷装置用配線工事を行い通電テストの結果,効果上らず
昭和37年   120HP×50KVAディーゼル1台を増設,48HP×15KVA1台を廃棄,1台を東京に
       降す
昭和38年   循環冷却用ラジエーター1台故障,宇宙線より借用,Oct.エンジン不調
昭和39年   循環冷却水槽60tを新設,Sep.16よりエンジンの冷却方法を空冷(ラジエーター)
       より水冷に変更する
昭和40年   暖房用電気ヒーターの増設
昭和41年   M3-C3コンプレッサーをAug.17より取付け増設使用する
昭和44年   紅炎観測室を改増築して室を作り,310HP 150KVA
           ディーゼルエンジン2台(p.204),新設エンジン用として重油タンク500t
       (角槽)を新設,モビ-ルオイル用として21tタンクを移設,廃油用とし
       て14tタンクを移設利用する,新たに冷却水槽 60t容量のものを増設,今
       までのものと合せて120tとなる
       今までの120HP×50KVAディーゼルは大型機の予備機として残し,1台は廃棄
       重油タンク21t,100tの各1ヶを廃棄する。

       120HP×50KVAディーゼル1台(ヤンマー製)
       310HP×150KVAディーゼル2台(ヤンマー製)
       SS4-C4コンプレッサー1台(ヤンマー製)
       M3-C3コンプレッサー1台(ヤンマー製)
       C3N-C5コンプレッサー1台(ヤンマー製)
       100Ah/5h 20ヶ (104CS-20形) 全密閉形焼結式アルカリ蓄電池(湯浅)
       完全自動式サイリスター整流器 (GTS24-30V形) 1台
              300Ah 17ヶ 1組        セレン整流器   1台