国立天文台・乗鞍コロナ観測所 共同利用観測報告書


利用者氏名      :萩野正興       所属    :国立天文台
                :山本哲也                      :東京大学
                :                              :


観測テーマ:10830Åを用いた活動領域彩層磁場観測


利用期間:2004年8月2日~ 8月6日 (観測実施日数 2日)


旅費の出所: ■ 国立天文台共同利用旅費   □ 国立天文台関係の科学研究費
         □ 利用者自身の負担       □ 観測所職員旅費(国立天文台職員の場合)

使用機器:  ■25cmコロナグラフ ■G1焦点  ■ G 2焦点
            □ 直接像
            ■ CCD
            ■ ポラリメータ
            ■ 計算機
            □ その他(持ち込み機器など)


観測の目的、方法、今後の解析方針を簡単に記して下さい。

[観測目的]
ポラリメータを用いて10830Åの彩層吸収線のストークスパラメータを観測した。
観測領域はNOAA10655。この研究の最終目的は彩層磁場でヘリシティを検出する
ことである。

[方法]
ターゲットとなる領域にスリットを当て、活動領域をカバーするようにスキャンする。
このとき、ポラリメータを用いてストークス(Q,U,V)の成分を撮像する。
視野の中にHe10830ÅとSi10827Åが同時に撮像できるようにする。

[解析方法]

(これまでの解析)
1.スペクトル線強度(I)からSi10827とHe10830の線の波長を同定。
2.足し引きにより(Q,U,V)を導く。
3.2本のスペクトル線を切り出す。
4.(I,Q,U,V)のマップを作る。
5.Si10827とHe10830の比較を行う。

今回の観測では2の解析でQにVのクロストークが見つかったため、横磁場ベクトルが
作れなかった。Vは信号が強いため正しく取れていると考え、光球と彩層の磁場の
相関を取った。ここで、プラージュ、黒点、何も無いところを分けて回帰解析した
ところ、プラージュ領域で最も強い傾きを持った。黒点領域で彩層磁場は局所的に
強い磁場を持つが、光球と比べると磁場の分布が違っている。これが物理的な
理由でおこる事か、観測・解析でのミスなどで起こる事かは調査中である。

(今後の解析)

観測中にキャリブレーションデータを取得し、正しい直線偏光成分(Q,U)を取得
したい。(Q,U)が取得できたら彩層のベクトル磁場のマップを作り、彩層と光球の
視線方向磁場と水平磁場を比較する。横磁場の比較にはForce-freeパラメータαを
用いる。

今後も同一テーマで当観測所を利用する予定がありますか?   ある


観測所に対する意見、希望など:
10830Åのキャリブレーションが観測中に簡単にできるシステムを作って欲しい。
25cm望遠鏡内に偏光板をセットしなくてはならないので支えを作って欲しい。
ポラリメータの定期的なメンテナンスをして欲しい(液晶は壊れていないかなど
のチェック)。

世界的にも乗鞍コロナ観測所でも10830Åの観測が増えてきています。
観測者が行った時だけでは天候に左右され、思った観測データが得られないので、
25cm望遠鏡が他の観測に使われていない期間はデータを撮って欲しい。