国立天文台・乗鞍コロナ観測所 共同利用観測報告書
 
利用者氏名:綿田辰吾          所属    東京大学地震研究所
      西田究                              東京大学地震研究所


観測テーマ: 高地における連続微気圧観測
 
利用期間:2002年 7月17日 ~10月 8日 (観測実施日数 83日)


旅費の出所:□ 国立天文台共同利用旅費   □ 国立天文台関係の科学研究費
            ■ 利用者自身の負担         □ 観測所職員旅費(国立天文台職員の場合)
 
使用機器:  □ 25cmコロナグラフ     □ G1焦点      □ G2焦点
            □ 直接像
            □ CCD
            □ ポラリメータ
            □ 計算機
            ■ その他(持ち込み機器など) 微気圧計、テレメータ装置


観測の目的、方法、今後の解析方針を簡単に記して下さい。


地球の大気中には、数分から数十分の周期を持つ重力波と音波が存在している。
重力波は、地表での圧力変動や散乱電波のドップラー変動からその存在が確認
されている。一方、長周期の音波は地球熱圏にくらべ低温の対流圏、成層圏、
中間圏にエネルギーが捕獲された状態で存在することが理論的に予言され、
大規模火山噴火時に、音波と地震表面波の音響共鳴の結果、波特徴的な単色の
地動が観測されることから、間接的に存在が示されているが、これまで大気中の
音波が観測されたことはなかった。

微気圧連続観測では、大気中の長周期音波を圧力変動として世界で初めて捕らえる
ことを第一の目的とし、検出できない場合には、大気音波のバックグラウンド強度
の上限を見積もることを第2の目的とする。理論上、高地での音波モードの大気中の
エネルギー振幅分布は地表に節を持ち、高所に行くほど急激に増大する。そのため、
3000メートルに近い乗鞍コロナ観測所に大気圧の100万分の1まで計測できる
高感度微気圧計を設置し、また長期間のデータのスペクトル解析によりS/Nの向上
を測る。

微気圧計測システムは制御・記録を行うPC、データ転送用の携帯電話モデム、
携帯電話アンテナ、微気圧計、GPSアンテナ、無停電電源装置からなる。
 


今後も同一テーマで当観測所を利用する予定がありますか?   ある
 
観測所に対する意見、希望など:

天文台共同研究者である加藤禎博技官には、機器の収納、ドームへの常時電源供給
の周知徹底、機器の不具合による通信不能時の対処などしていただきました。
佐野助手、篠田技官にも工具の貸し出しや県道の交通事情などについてご連絡を
いただきました。多くの天文台の方にお世話になり無事観測が終了し、
貴重なデータが取得できました。ありがとうございました。

観測期間中に携帯電話の通話状態が格段に改善され、電話によるデータ転送が確実
になったのは有り難かった。