観測地

  1. 女満別市街(女満別小学校校庭)
  2. 女満別日進部落(東経9時37.1分北緯43度51分)
  3. 中頓別(中頓別小学校校庭)
  4. 訓子府(訓子府村小学校校庭:東経9時34分58秒、北緯43度43分19秒)
  5. 紋別(北見国紋別郡紋別町尋常小学校校庭)
  6. 斜里(斜里郡斜里村三井農場)

観測者と遠征計画

  • 早乙女清房氏
  • 吉田玄馬氏
  • 関口鯉吉氏
  • 野附誠夫氏
  • 藤田良雄氏
  • 石井重雄氏
  • 橋元昌矣氏
  • 奥田豊三氏
  • 小野亀吉氏
  • 及川奥郎氏
  • 相田八之助氏(大学院生)
  • 窪川一雄氏
  • 竹田吉雄氏
  • 田代實氏
  • 高木重次氏(東大天文学科学生)
  • 辻光之助氏
1936年4月15日機材荷づくりに着手
1936年4月23日機材発送
1936年5月18日観測隊員順次出発

観測結果とデータ

女満別市街(女満別小学校校庭)

天候:第1接触から部分食の間は雲を通して太陽が見えた。皆既になるころから雲の隙間が広がってきた。
日程:5月26日着、7月1日発

観測項目担当観測内容等装置等
写真観測 早乙女清房
吉田玄馬
アインシュタイン効果の観測
雲のため星像が写らず、かつ星像が目的のためコロナは露出過多になった
  • クック式トリプレット写真鏡(口径30cm、焦点距離3.5m)
  • 肉眼望遠鏡(口径20cm)
  • イギリス式赤道儀
  • イーストマン50番四つ切乾板(メトルハイドロ微粒子現像報)
動画によるコロナ・彩層の状況変化
皆既中にフィルム送りが故障し目的を果たせず
クック式トリプレット写真鏡(口径18cm、焦点距離85cm)
ドイツ式赤道儀

女満別日進部落

天候:午前中は曇りだったが、正午ころから雲が切れだした。皆既数分前に、濃い雲がかかり、以後は不規則な雲に妨げられた。
日程:5月26日着、6月24日発

観測項目担当観測内容等装置等
分光観測 関口鯉吉
野附誠夫
藤田良雄
石井重雄
グレーティングによる5500Å~7000Åのスリットなし分光
雲の影響で多数の輝線はとらえられなかった。
  • グレーティング(口径10cm、14000本/インチ)
  • カメラレンズ(口径10cm、焦点距離1.55m)
  • イルフォード製ハイパーセンシティブパンクロマチック乾板キャビネ判
  • グラブ製シーロスタット(口径40cm石英平面鏡、第2鏡は使用せず)※両分光で共用
プリズム分光器による3100Å~4000Åのスリットあり分光
  • 石英製コルニュ型プリズムカメラレンズ(口径5cm、焦点距離50cm)
  • 富士パンクロマチック乾板(10×25cm)
  • グラブ製シーロスタット(口径40cm石英平面鏡、第2鏡は使用せず)※両分光で共用

中頓別(中頓別小学校校庭)

天候:日食が始まる頃は雲が多かったが、皆既中はそれほどの雲はなかった。
日程:5月28日着、6月21日発

観測項目担当観測内容等装置等
分光観測 橋元昌矣
奥田豊三
小野亀吉
コロナのスリットスペクトル撮影
4231、4566、6303Åのコロナ輝線をとらえた。
  • 赤道儀(口径20cm、焦点距離306cm)
  • プリズム分光器(63度フリントガラス製プリズム3個使用)
  • イルフォード製S.G.パンクロ乾板(パイローソーダ法で現像)

訓子府(訓子府村小学校校庭)

天候:皆既中の太陽は巻雲を通して見えた。
日程:5月26日着、6月22日発

観測項目担当観測内容等装置等
分光観測 及川奥郎
相田八之助
日周運動によるフラッシュスペクトルの滑動式写真の撮影
 雲の影響で十分な輝線が写らず
  • ブラッシャー写真望遠鏡(銀河写真型、口径8インチ、焦点距離1.27m)
  • 対物プリズム(シュタインハイル製、口径18cm、角度45度)
  • 第2プリズム(クック製、口径15cm、角度15度、神戸海洋気象台より借用)
  • イルフォード製汎整色軟調乾板(メトルハイドロキノン標準液で現像)

紋別(北見国紋別郡紋別町尋常小学校校庭)

天候:雲のため第1接触は見えず。2時40分頃から小雨。皆既後半に太陽が雲から出る。第4接触は雲の中。
日程:5月26日着、6月22日発

観測項目担当観測内容等装置等
分光観測 窪川一雄
竹田吉雄
田代實
高木重次
彩層の形態、コロナの形状の測定
5回の露出中、後半3回のみ写る。雲の影響はあるが、コロナの形、流線等の測定は可能
  • 直径17cmシーロスタット
  • 水平望遠写真儀(口径13cm、焦点距離11.5m)
  • イーストマン50番(四つ切)
  • イルフォード製プロセス乾板八つ切(部分食)
時刻測定 辻光之助 接触時刻測定(測地学委員会の事業)
第3接触以外は雲のため測定できず
クック製実視望遠鏡(口径9cm、焦点距離140cm)

画像撮影日時露出(秒)使用乾板
15h21m08s10イーストマン50番(四つ切)
15h21m37s9イーストマン50番(四つ切)
15h22m02s4.5イーストマン50番(四つ切)

※同じ敷地で、東京帝国大学天文学教室の観測隊も観測
萩原雄祐、鏑木政岐、戸田光潤、大脇桓次、斎藤国治、佐藤隆夫、清水彊、山形俊夫、長澤進午
(以上、大学院生)

斜里(斜里郡斜里村三井農場)

天候:皆既中は薄雲がかかった。
日程:5月16日着、6月25日発

観測項目担当観測内容等装置等
分光観測 服部忠彦 プリズム分光器を使用したコロナのスペクトル線撮影(スリット使用)
雲のためコロナ輝線は5303、6374Åのみわずかに認められる。彩層輝線は写らず。
  • 口径40cmシーロスタット
  • 六桜社製投影レンズ(口径12.5cm、焦点距離50cm)
  • コリメータ・カメラレンズ共用(口径11.1cm、焦点距離50cm、東大物理学教室より借用)
  • 頂角30度プリズム3個(東京天文台塔望遠鏡付属のもの)
  • ラッテン・ハイパーセンシティブパンクロ乾板キャビネ判(パイローソーダ法で現像)

※その他、経緯度測定のため、辻光之助、田代實が猿払村、雄武村、網走町の出向いている

論文

石井重雄
1936年6月19日の日食に就いて並びに日食観測に関する二三の注意
東京天文台報、第3巻、No3、p189、1935
石井重雄
1936年6月19日の日食の精密予報に就いて
東京天文台報、第4巻、No2、p85、1936
堀 鎮夫
1936年6月19日の日食各地推算時刻を中間挿入法によって求める試み
東京天文台報、第4巻、No2、p90、1936
関口鯉吉
序文
東京天文台報、第4巻、No3、p135、1936
早乙女清房・吉田玄馬
アインシュタイン効果及びコロナの観測 
東京天文台報、第4巻、No3、p137、1936
橋本昌矣・奥田豊三
赤道儀式分光器によるコロナスペクトラムの観測
東京天文台報、第4巻、No3、p139、1936
及川奥郎
滑動式スリットによるフラッシュスペクトラムの観測
東京天文台報、第4巻、No3、p141、1936
野附誠夫・石井重雄・藤田良雄
強分散力を用いたるフラッシュ及びコロナスペクトラム並びに接触時の観測
東京天文台報、第4巻、No3、p144、1936
窪川一雄
内部コロナの形態並びに接触時の観測
東京天文台報、第4巻、No3、p150、1936
服部忠彦
強収光力を用いたるコロナスペクトラムの観測
東京天文台報、第4巻、No3、p153、1936
関口鯉吉
コロナ単光環像の写真観測
東京天文台報、第4巻、No3、p155、1936
萩原雄祐・鏑木政岐・戸田光潤・大脇桓次
外部コロナの形態、測光並びにフラッシュスペクトラムの観測
東京天文台報、第4巻、No3、p158、1936
宮地政司
日食観測用特別報時
東京天文台報、第4巻、No3、p165、1936
関口鯉吉
コロナ・スペクトルの星雲線に関する再検討
東京天文台報、第5巻、No2、p57、1938
斉藤国治
コロナ測光に及ぼすフレーアの影響
東京天文台報、第5巻、No2、p82、1938
関口鯉吉
コロナスペクトルについて
東京天文台報、第5巻、No3、p157、1938
橋本昌矣・奥田豊三
コロナスペクトルの観測
東京天文台報、第5巻、No3、p170、1938
野附誠夫
格子分光器にて撮れる閃光スペクトル線の波長
東京天文台報、第5巻、No3、p182、1938
窪川一雄
11.5mコロナグラフの観測結果
東京天文台報、第5巻、No3、p186、1938
藤田良雄
細隙分光器にて観測したる閃光スペクトルに就いて
東京天文台報、第5巻、No3、p192、1938
中野三郎
トラック島及びパラオ島の経緯度再測報告
東京天文台報、第5巻、No3、p201、1938
齋藤国治、池島俊雄
写真乾板におけるハレーションの研究
東京天文台報、第5巻、No4、p228、1938
萩原雄祐、斉藤国治
コロナ測光に及ぼすハレーション及び大気の散乱の影響
東京天文台報、第6巻、No1、p37、1938
野附誠夫、石井重雄、藤田良雄
女満別日進遠藤牧場における観測
東京天文台報、第8巻、No1、p144、1942
及川奥郎
北海道訓子府昭和11年6月19日の日食観測
東京天文台報、第9巻、No1、p21、1942
関口鯉吉
日食前後の分光観測(女満別村日通)
中央気象台日食観測概報、5
関口鯉吉
北海道皆既日食に際し女満別村に於いて行いたる気象並びに天象観測の総合記事
中央気象台日食観測概報、33
関口鯉吉
"Corona and its Spectrum Observed at the Total Solar Eclipse of June 19, 1936"
東京天文台年報、第1巻、No2、p59、1938
萩原雄祐、斉藤国治
"Part1 Photometry of the Outer Corona by the Light of the Photographic Region"
東京天文台年報、第1巻、No2、p91、1938
鏑木政岐
"Part2 Photometry of Corona in the Visible Region"
東京天文台年報、第1巻、No2、p139、1938
萩原雄祐、斉藤国治
"Part3 Effects of Halation and Of Sky-Scattering on the Photographic Photometry on the Corona"
東京天文台年報、第1巻、No3、p151、1938
斉藤国治
"Part4 Effect of the Flare on the Photographic Photometry of the Corona"
東京天文台年報、第1巻、No4、p201、1939
S.Isii
On the Positions and Semidiameters of the Moon and the Sun, derived from Observations of the Solar Eclipse of June 19, 1936
Tokyo Ast.Bulletin、212-218号、9月18日、p423、1937
Rikiti Sekiguti
On Some Result of Re-examinations of the Spectograms Obtained at the Hokkaido Eclipse of June 19, 1936
Tokyo Ast.Bulletin、280-282号、6月13日、p559、1938
Shigeo Ishii
On the Position and Semidiameters of the Moon and the Sun, derived from Observations of the Solar Eclipse of June 19, 1936
 Tokyo Ast.Bulletin、426-427号、4月15日、p851、1940
Yusuke HAGIHARA, Masaki KABURAKI, Mitumasu TODA, Tositugu OOWAKI
Solar Eclipse Observation at Mombetu on June 19, 1936. Preliminary Report of the Eclipse Party from the Astronomical Institute of the Imperial University of Tokyo
Japanese Journal of Astronomy and Geophysics(日本天文学及地球物理学輯報) 14 3 7 1937
Kiyofusa SOTOME, Gemma YOSHIDA
A Short Report on the Observation of Einstein-Effect in the Total Solar Eclipse of Hokkaido on June 19, 1936
Japanese Journal of Astronomy and Geophysics(日本天文学及地球物理学輯報)、第14巻、No3、p10、1937
Masa HASIMOTO, Toyozo OKUDA
Observation of the Total solar Eclipse of June 19, 1936 made at Nakatonbetu, Hokkaido
Japanese Journal of Astronomy and Geophysics(日本天文学及地球物理学輯報)、第14巻、No3、p10、1937
Okuro OIKAWA
Short Report on the Observation of the Total Solar Eclipse of 1936, made at Kunneppu, Hokkaido
Japanese Journal of Astronomy and Geophysics(日本天文学及地球物理学輯報)、第14巻、No3、p11、1937
Masao NOTUKI, Shigeo ISHII, Yosiro FUJITA
Observation of the Total solar Eclipse of June 19, 1936 made at Nissin Camp of Memanbetu Village near Abasiri, Kitami Pref., Hokkaido
Japanese Journal of Astronomy and Geophysics(日本天文学及地球物理学輯報)、第14巻、No3、p11、1937
Kazuo KUBOKAWA
Observation of the Total Solar Eclipse of June 19, 1936. made at Monbetu, Hokkaido
Japanese Journal of Astronomy and Geophysics(日本天文学及地球物理学輯報)、第14巻、No3、p11、1937
Tadahiko HATTORI
A Short Report on the Observation of the Total Solar Eclipse of June 19, 1936. made at Syari, Kitami Pref. Hokkaido
Japanese Journal of Astronomy and Geophysics(日本天文学及地球物理学輯報)、第14巻、No3、p12、1937
Rikiti SEKIGUTI
Monochromatic Images of Solar Corona taken with a Slitless Spectrograph at Nissin Camp near Memanbetu Village, in Hokkaido on June 19, 1936
Japanese Journal of Astronomy and Geophysics(日本天文学及地球物理学輯報)、第14巻、No3、p12、1937
Massi MIYADI
Spetial Wireless Time Signals for the Use of the Eclipse Observation, June 19, 1936
Japanese Journal of Astronomy and Geophysics(日本天文学及地球物理学輯報)、第14巻、No3、p13、1937
Rikiti SEKIGUTI
Spectrum of Corona observed during the Total Solar Eclipse of June 19, 1936 at Nissin of Memanbetu Village in Hokkaodo
Japanese Journal of Astronomy and Geophysics(日本天文学及地球物理学輯報)、第14巻、No3、p13、1937
Kunio YOSJNARI
Solar Corona observed during the Total Solar Eclipse of June 19, 1936, at Nissin of Memanbetu Village in Hokkaido
Japanese Journal of Astronomy and Geophysics(日本天文学及地球物理学輯報)、第14巻、No3、p14、1937
Shigeo ISHII
On the Precise Prediction for the Solar Eclipse of June 19, 1936
Japanese Journal of Astronomy and Geophysics(日本天文学及地球物理学輯報)、第15巻、No1、p1、1937
Y Hagihara
Über die Zerstreuung des Koronalichtes in der Erdatmosphären
Astronomische Nachrichten、266巻、No6378、p285、1938
Rikiti Sekiguti
Coronal emission lines observed at the total solar eclipse of June 19, 1936
Nature、140、p724、1937

参考資料

観測隊全般について

福見尚文
昭和11年6月19日の皆既日食
天文月報、第26巻、No 10、p187、1933
石井重雄
天文学談話会記事(第292回)6月19日の日食
天文月報、第28巻、No4、p68、1935
北海道の日食
天文月報、第28巻、No12、p208、1935
石井重雄
昭和11年6月19日の皆既日食に於ける太陽付近の星
天文月報、第28巻、No12、p209、1935
堀 鎮夫
日本各地の分食推算時刻と時刻帯図について
天文月報、第29巻、No6、p105、1936
日食観測の為北海道へ行く東京天文台の一行
天文月報、第29巻、No6、p107、1936
水野良平
皆既日食中の特別報時
天文月報、第29巻、No6、p107、1936
水野良平
日食当日の臨時ラジオ時報
天文月報、第29巻、No6、p107、1936
第56回定会記事 
天文月報、第29巻、No7、p123、1936
北海道に於ける皆既日食
天文月報、第29巻、No8、p144、1936
観測機材(チェコ隊)
天文月報、第29巻、No8、表紙、1936
編輯だより 
天文月報、第29巻、No8、目次、1936
瓢(服部忠彦)
北海道に於ける日食
天文月報、第29巻、No10、p172、1936
11米半コロナグラフ
天文月報、第29巻、No10、表紙、1936
荒木俊馬
呼瑪後日譚
天文月報、第29巻、No11、p190、1936
鈴木敬信
稚内中学生の行った日食観測(1)
天文月報、第30巻、No3、p46、1937
中学生のコロナスケッチ
天文月報、第30巻、No3、p表紙、1937
編輯だより
天文月報、第30巻、No3、目次、1937
鈴木敬信
稚内中学生の行った日食観測(2)
天文月報、第30巻、No4、p57、1937
鈴木敬信
稚内中学生の行った日食観測(3)
天文月報、第30巻、No5、p83、1937
窪川一雄
コロナの分布に就いて
天文月報、第30巻、No5、p87、1937
天文学談話会記事(第310回、311回)
天文月報、第30巻、No5、p88、1937
鈴木敬信
稚内中学生の行った日食観測(4)
天文月報、第30巻、No6、p97、1937
鈴木敬信
稚内中学生の行った日食観測(5)
天文月報、第30巻、No7、p112、1937
松隈健彦
日食行(1)
天文月報、第30巻、No7、p119、1937
松隈健彦
日食行(2)
天文月報、第30巻、No8、p132、1937
天文学談話会記事(第318回)
天文月報、第30巻、No8、p138、1937
関口鯉吉
北海道日食で観測したコロナ・スペクトル概報
天文月報、第31巻、No2、p21、1938
関口鯉吉
閃光スペクトルに於ける波長並に強度
天文月報、第31巻、No2、p37、1938
関口鯉吉
東京帝大物理教室の日食観測班の業績
天文月報、第31巻、No2、p38、1938
石井重雄
昭和11年6月19日の日食の接觸観測と其の結果
天文月報、第31巻、No4、p61、1938
服部忠彦
太陽の縁辺に於けるスペクトル線輪郭
天文月報、第31巻、No4、p76、1938
関口鯉吉
コロナ・スペクトルの星雲線に関する再検討
天文月報、第31巻、No9、p163、1938
藤田良雄
ソヴィエト観測隊による1936年6月19日の皆既日食報告Ⅱ
天文月報、第34巻、No6、p110、1941