2019年8月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動 (13カ月移動平均)。緑線・青線・赤線はそれぞれ1996年以降の太陽全体・北半球・南半球の黒点相対数、点線 (黒) は過去の周期における黒点相対数を極小を1996年に揃えてプロットしたものです。黒点相対数が小さいときの変化を見やすくするため、グラフ縦軸の目盛りは小さい数を拡大して見せるような不等間隔になっています。

 前の太陽活動サイクルから今サイクルにかけての極小は、極小になった時の黒点相対数の値が特に小さくその時期も遅れました。極小の時期が遅くなったことにより、前回の太陽活動第23周期は平均よりも長く12年以上継続したサイクルになりました。

 現在の太陽活動サイクルは第24周期にあたり、太陽全面で見ると2008年末から始まって2014年に極大を迎え、その後は現在まで減少を続けています。一方で南北別に見ると活動の非対称性が目立ち、北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して南半球は遅れて上昇し2014年に極大を迎えました。その後、両半球とも次の極小に向かって黒点相対数が減少していますが、単純な減少ではなく一時的に停滞した期間があります。太陽全体での黒点相対数は2019年付近で減少が止まっているように見えますが、今サイクルと次のサイクルの境界となる極小期はまだ確定していません。
→ 2019年の黒点相対数

8月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 8月は新黒点望遠鏡による黒点観測を24日間実施できましたが、このうちで黒点が見られたのはただ1日だけでした (白色光画像の8月のデータベースカレンダー)。黒点相対数の月平均値は0.46で、南北別に見ると北半球 0.46、南半球 0.00となりました。三鷹での観測では、3月以降は南半球の黒点相対数がゼロの状態が続いています。

 黒点観測の中央局であるSILSOが発表している欠測のないデータでも、8月は5日と7日の2日間で黒点がとらえられただけでした。太陽フレアは、米国NOAA (※1) のGOES (※2) 衛星がX線での観測を行っていますが、X線ピーク強度による評価で最小クラスのB1.0まで範囲を広げても発生数はゼロでした。

 このように黒点が少なくフレアも発生しない時期は太陽の平均11年周期活動の極小期に当たりますが、この時の太陽の極域では次の活動周期に向けた動きが見られます。図1は、太陽フレア望遠鏡が撮影した2019年8月25日の太陽の赤外線偏光画像で、太陽全面の磁場分布を見せています。極小期で黒点が見えなくても太陽には磁場があり、現在は北極域に正極 (N極)、南極域に負極 (S極) の斑点状磁場が集中しています。この時の太陽の磁場は、図2で説明されているように、棒磁石が描き出す磁力線に似た構造 (双極磁場) を見せます 。

 図3では、三鷹での黒点相対数と米国のWilcox Solar Observatoryで1976年以降観測が継続されている南北両極域磁場のデータを並べて見せています。太陽の極域磁場は、黒点が多い太陽活動の極大期 (黄色の網掛け部分) には弱くなって向きが反転し、極小期 (青色の網掛け部分) あたりで強くなって双極磁場を形成します。2019年現在の太陽の極域磁場は、ひとつ前の極小期 (2009年の初め頃) のそれとは極性が逆ですが 、磁場の強さ (磁束密度) は前回とほぼ同じかそれよりもわずかに大きくなっています。

 1976年以降の太陽活動周期4周期分の観測から、極小期における極域磁場の強さ (磁束密度) と次に来る極大期における太陽活動度 (黒点相対数) の相関関係を示唆する結果が得られています。現在では、極小期における極域磁場は次の太陽周期の活動度を示す鍵と考えられており、極域磁場の観測と太陽磁場生成の理論をもとに今後の太陽活動を予測する研究が進められています。
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※1 NOAA: National Oceanic and Atmospheric Administration (米国海洋大気局。この機関によって、活動領域に番号が振られる。)
※2 GOES: Geostationary Operational Enviromental Satellite (米国 NOAAの地球環境観測衛星。地球に降り注ぐ軟X線の総フラックスも常時モニターしている。)
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図1. 2019年8月25日の太陽全面の磁場分布。白と黒の斑点はそれぞれ正極 (N極) と負極 (S極) の磁場を表していて、赤色の実線で囲まれた領域は北極域、青色の破線で囲まれた領域は南極域です。太陽の中・低緯度では正極と負極の磁場がペアになっていますが、北極域では正極磁場が、南極域では負極磁場が多くなっています (太陽フレア望遠鏡の赤外線分光偏光撮像装置で観測)。

fig2_polarfield_201908.png
図2. 太陽活動極小期に見られる大規模な双極磁場の模式図。矢印が付いた白い実線は磁力線を表しています。北極域に正極 (N極) 磁場、南極域に負極 (S極) 磁場があるときの様子を描いたもので、2019年現在の太陽極域磁場はこの極性配置になっています。

fig3_polarfield_SSN_201908.png
図3. 1976年以降の (上) 三鷹での黒点相対数と (下) 米国 Wilcox Solar Observatoryでの南北両極域磁場の磁束密度の時間変化。下パネル中の赤色の実線は北極域磁場、青色の破線は南極域磁場の磁束密度を表していて、上下パネルにまたがる青色と黄色の網掛け部分はそれぞれ黒点が少ない時期と多い時期を示しています。